第7話 弔い

 車椅子を押され、しばらくしてついた場所は広い体育館。中には隊員の人が集まっていた。


「悪いな、急にこんな場所連れてきて。これから紗代香の葬式をするんだ。こいつには家族がいないから、アタシ達が弔ってやらないと」


 そう言って愛鈴さんは悲しそうな顔をした。周りを見ると、隊員の人は全員揃っている様で紗代香さんのいる棺を取り囲んでいた。

 棺の中には献花が敷き詰められていて、中にいる紗代香さんは安らかな表情で眠っている。しばらくすると、雄大さんが紗代香さんの側まで歩み寄ってきた。


「何でだよ紗代香。まだまだこれからだって時に」


 雄大さんは苦しそうな顔をしている。初めて会った時からとても仲が良さそうだったから、とても辛いだろう。僕を助けてくれた時も二人でいたのだから。


「紗代香、まだ早すぎるよ。今度、一緒に出かけようって言ったじゃないかっ」


 愛鈴さんは棺に突っ伏して泣いている。きっと良い友人だったのだろう。紗代香さんが死んだことで約束が叶わなくなってしまった。


「戦闘中に油断するからだヨ。いつも隊長に言われてたことアル」


 翔宇くんはそう冷たくて言い放つ。だが、表情からはとても動揺している様子が伺える。当たり前だ。笑顔で出て行った人が、変わり果てた姿で戻ってきたのだから。


「紗代香は昔、唯一の家族である弟を廃魚に殺されているんでち。紗代香は自分の様な不幸な人を減らしたいと、この部隊に入ったんでち。きさまのことを死んだ弟に似ていると言っていたんでちよ」


 千衣子さんは目を伏せ、そう語る。あぁ、僕はそんな紗代香さんの夢を潰してしまった。そう考えていると千衣子さんが徐に口を開いた。


「別に紗代香がが死んだのはきさまのせいではないでち。相手は突然変異体、そして紗代香が油断していたのも事実でち。だから、気に病む必要はないでち」


 言葉はキツイが僕を気遣って言ってくれた言葉だということはよくわかった。

 仲間が亡くなって辛い中、その死の瞬間に立ち会った僕を気にして言葉をかけてくれたのだろう。


「千衣子さん、僕頑張ります。紗代香さんの分まで。いつか、この世界から廃魚が消え去るまで」

「…ウチのことは隊長と呼ぶでち」


 隊長は先程よりも少しだけ明るい表情になった。それを見て僕も少しだけ安心することができた。


 葬儀は順調に行われ、もう別れの時になった。一緒にいた時間は一日にも満たない。だが、僕の脳裏には紗代香さんの笑顔が浮かぶ。僕が来たことで奪ってしまったその笑顔。きっと、僕はこのことを一生背負って生きていく。


 でも、それでいい。それが、僕が紗代香さんのためにできる唯一のことなのだから。

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