第4話 実戦
「次が最後の試験。実戦でち」
「し、実戦ですか!?」
実戦とはつまり、実際に廃墟へ行って廃魚を殺すということだ。あの時追いかけられたシュモクザメの様なヤツと戦うのだろうか。
「安心するでち。実戦とはいえ試験。そんな危険度の高い廃魚とは戦わせないでち」
「危険度?」
「あぁ、そこは俺が説明するよ」
さっきまでずっと黙っていた雄大さんが口を開いた。
「廃魚には合計で五つのレベルがある。危険度の低いものからエピペラジックレベル、メソペラジックレベル、バチペラジックレベル、アビスオペラジックレベル、そして最も危険なのがハダルレベル。あのイワシは一番危険度の低いエピペラジックレベルだ。お前を追いかけていたシュモクザメはメソペラジックレベルだな」
そうか、廃魚にもレベルがあるのか。だが……
「基準ってなんですか」
「能力と、フィジカルだ。例えばあのイワシは能力は害悪だが、フィジカル面はとても弱い。それに、能力自体に危険はないしな。シュモクザメはスピードとかのフィジカルが強かった。だが、能力は頭のハンマー部分を硬化させるだけだ。当たらなければ意味がない」
つまり、能力とフィジカルのどちらもが危険であることが危険度の基準なのか。
「あと一つだけ、個体の知能だ。高ければ高いほどレベルは上がる。その三つが信じられないくらい強いのがハダルレベルだ。まぁ、隊長は一人で倒しちまったがな!」
「エッ」
肉体的な強さに知能が重なったヤツを一人で!?こんなちんまい人が?
「雑談は終わりでち。きさまに倒してもらうのはエピペラジックレベルのオニオコゼでち。能力は毒の棘。そこそこ獰猛だから気を抜くなでち」
「は、はい……」
「廃魚の討伐はいつも二人がかりでやっているでち。だから今回は紗代香と一緒に行ってもらうでち」
二人がかり?確かに経験者の人が一緒なのは心強いが、何か理由があるのだろうか。
「理由が気になるって顔してるでちね。簡単でち。二人の方が効率がいいからでち。あとは討伐した廃魚を持ち帰る必要があるからでち」
持ち帰る。そうか、先程千衣子さんは銃を廃魚で作ったと言っていた。新しい武器を作るために、廃魚の死骸が必要なのだろう。
「あとは、片方が死んでももう片方がその死体を持ち帰れるからでちね」
「え?それってどういう……」
「ほら、早く出発の準備をするでち」
詳しく聞こうと思ったが、千衣子さんを急かされ、聴くことができなかった。
「まさか、私になるとはね」
広間に戻り、紗代香さんに先程のことを報告すると、意外だと言う反応をした。
「ふふっ、私も割と最近入ったからもっとベテランの人が付くかと思った」
「どうする?もう行くか」
「そうだね。でも、その前にあれ渡さないと」
「ああ、そうだった」
紗代香さんに促された雄大さんは一つの石のストラップを渡して来た。行きでお二人が僕を連れて来た時に使っていたものだ。
「こいつは
「ワープ石?」
「そうだ。こいつは俊敏さが極めて高い廃魚を凝縮して作った石で、廃魚同士が反応する特徴を利用しているから、廃魚が生息している廃墟ならどこでも一瞬でワープできる。使い方は思いっきり握るだけだ。一緒にワープしたかったらワープしたいヤツに触れるだけ。簡単だろ」
そんな高性能な装置を取り入れていたのか。これなら毎回長時間の移動をする必要もない。だが、そうなると一つ疑問が生じる。
「えっと、だとしたらここはどこなんですか」
「東京だぞ」
「東京!?」
僕は、愛知にいたはず……。本当にどこでも行けるのだな。
「よし、準備も整ったし行こうか」
「はい」
紗代香さんの掛け声と共に石を強く握り締める。その瞬間眩い光が辺りを包み、気がつけば僕はとある発電所にいた。
「よし、無事に着いたみたいだね」
「あ、あの」
「なに?」
「この建物、結構広いですけどどうやって廃魚を見つけるんですか」
僕がそう質問すると、そんなことかと言わんばかりにクロスボウを取り出した。
「武器が廃魚に反応してナビゲートしてくれるから大丈夫だよ。ほんとすごいよね。私、初めてそのこと聞いた時すごくびっくりしたの」
「僕もそう思います」
「そう?私たち気が合いそうね」
そう紗代香さんはふふっ、と笑った。
「それじゃあ行こう。私、貴方は試験に合格できる気がするの」
「はい!」
ゾブッ
「………エッ?」
少し前に歩いた。歩いただけだった。気づけば、紗代香さんは、串刺しになっていた。
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