進化最強! プランクトンから、進化を重ねて気が付いたら、全裸黒髪姫カットの美少女で触手が生えてた?!
ハングシテルノ
第一章 「黒」
第1話 ニンゲンになった?
――波の音が聞こえる。
冷たい海水が足首を撫で、潮の匂いが鼻をくすぐった。
視界はぼやけ、陽光が白くにじんでいる。
次第に意識がはっきりしてくる。
(……ここは、どこだ?)
ふと下を見た瞬間、息が詰まった。
胸が――膨らんでる?! しかもデカい!
それに……服がない。
全裸だ。
腰まである長い黒髪が、風に揺れて頬にかかる。
引き波が砂をさらい、足元の水面に顔が映った。見知らぬ女の顔。
(俺……だよな? いや、私……?)
喉の奥がひゅっと鳴る。
胸の重み、くびれた腰、肌に貼りつく黒髪の感触――全部が現実だ。
断片的な記憶が蘇る。
――転生直後は、プランクトンだった。
水中で漂うだけの粒だった日々。
小魚を食らい、サメから逃げ、触手を得て海獣になり――そして、たった今!
人間になった!
(……なんで女なんだ、私)
混乱で頭が熱いのに、身体は妙に落ち着いていた。
生き残るための最短手を選ぶ進化の癖だけが、骨の奥で静かに回っている。
視線を上げると、港町らしき建物が見えた。人の声も近い。
「……あれは誰だ?」
「黒い髪……不吉だ……」
数人の漁師がこちらを見てざわめく。
この沿岸では、黒い髪は“海の祟り”の印――
そんな言い伝えが、誰かの記憶の欠片みたいに脳裏をかすめた。
けれど彼らの目は、恐れだけじゃない。
陽光を受けた黒髪は天使の輪を描き、整った姫カットが濡れて輝く。
見てはいけないと分かっていても、視線は吸い寄せられていた。
――そのとき、背中の奥で何かが開く。
漆黒の触手がスッと伸び、海風に細く揺れた。
ざわめきが悲鳴に変わる。
「やっぱり怪物だ!」
人々は後ずさり、砂を蹴って距離を取った。恐怖と魅了が入り混じった視線が刺さる。
そのとき沖が、不自然に盛り上がり、姿を現したのは!
ヘビのように長い体に、ドラゴンの頭を持つ魔物――海のギャング『ウツボドラゴン』。
ヤツは、これまで何度も私を殺そうとしてきた。だが、進化してもなお、ヤツは強い!
水と噛み合う顎がカチリと鳴り、白い飛沫を裂いて一直線に突っ込んでくる。
(来る!)
触手に海水を纏わせ、足が砂浜に食い込む。牙が喉元に届く、その半歩手前――
触手が弾丸のように走り、首に絡みついた。ギリギリギリ――骨がきしむ鈍い音。
暴れる巨体が波を立て、塩の飛沫が頬を打つ。もう片方の触手が海面を切り裂く。
「海の心!【リバース!】――流れろ!」
離岸流が一息で生まれ、巨体を沖へ――叩き返す。
空気が弾けるような音。
ウツボドラゴンは泡の尾を引き、暗い水筋の向こうへ消えた。
静寂。
助けたはずなのに、砂浜には緊張だけが残る。
「やっぱり怪物だ……」
誰かの声が、潮騒にほどけた。
「助けたのに、なんで……」
自分でも驚くくらい小さな声でつぶやいて、振り向く。
銀の鎧をまとった青年が立っていた。
抜き身の武器を構えたまま、目だけが冷静に私を測っている。
「お前は何者だ? 名前は? どこから来た? ……どうして全裸なんだ?」
青年の視線が一瞬だけ、私の胸をかすめた。頬が熱くなる。
私は胸を腕で隠し、名前を必死に考える。
海風が吹き、波音だけが二人の間を満たしていた――。
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