人間が嫌いで大好きな私の話
蒼のカリスト
シャーロック・ホームズ
私には好きなことがある。人間観察である。
人間の動きは同じように見えて、皆一緒じゃない。同じようなことはあっても、完全に一致することは無い。
どれも同じ形のように見える雲と同じで、関心があるかないかで、世界の見え方と言うのは、代わって来るものである。
残念なことに私はシャーロック・ホームズでは無いので、その人が何をして、何を思い、何の仕事を知ることが出来る訳でなく、ただ眺めているだけの小市民であることは留意して欲しい。
それだけに、最近はそれが嫌になることがある。
それはスマートフォンの普及だ。それが人間観察の邪魔になっている時がある。
皆が皆、右向け右と言わんばかりに、その画面に夢中になり、そればかりを見ているのだ。
その姿が私の大好きだった人間観察の邪魔をして来るのは何とも許せない。
しかし、そんな私もスマートフォンを眺めて、無駄な時間を消費しているので、お互い様ではある。
何より、その人にとっては、それが消費ではなく、自分の生きがいに代わるのだから、それこそ、余計なお世話だし、個人の自由だ。
仕事かもしれない、暇つぶしのゲーム、パブサだったりと何が正解なんか分からないのに、勝手に決めつけることは本当に良くないことだと思う。
ただ、私はスマーとフォンの中身が見える訳でも、思考が読めるわけでもないので、その人の中にある本質を見抜くことが出来ず、全てが完結するスマートフォンなるツールをどうしても愛することが出来ない。
そんなことが出来たら、犯罪だし、知らない方が幸せだと思うので、この辺で留めておこう。
そんな人間観察が好きな私はスマートフォンと戯れる人達ではなく、何気ない行動や会話を行う人間が大好きだ。
色んな人達を沢山見て来た。まだまだ人生経験が浅い私ではあるが、その度に人間と言う存在に驚かされる。
電車内でタブレットで作業する人が居た。それだけなら、何と言うことは無いが、その人は立ったまま、作業していたのだ。凄まじい集中力の為せる技だと思った。
きっと、締め切りに追われてたのかな?正直、羨ましい。
バスの乗り方が分からなくて、とまどいを隠せない小学生たち。
まだ時間はあるからと楽観視するもの、時間が無いからと焦るもの、スマートフォンで調べようとするも、全然思い通りの内容が調べられないもの。
最終的に近くの御婦人に伺って、事なきを得たけれど、バス一つでこんなにも人間性がよく分かるのは実に面白い。
その昔、喫茶店でひとり、食事を摂っていた際の出来事。
男女が2人で会話しており、その話を無作法ではあったが、盗み聞きしてしまった。
記憶の詳細は忘却の彼方になってしまったが、このフレーズだけが頭からこびりついて、離れない。
「僕の話していること自体が哲学なんで」
調べたところによると哲学とは、哲学とは、物事の根本原理や、存在、知識、理性、心、言語などに関する普遍的・根本的な問題を、論理的に探求する学問です。
単に知識を蓄えるだけでなく、自ら問いを立て、深く考え、考察を深めていく過程を重視することを指すらしい。
こんな話をして、一体その相手の女性がどう思ったかを考えはした。
平均的に考えて、何を会話しているのだろうと怪訝そうな表情になったと思うのが、妥当だろう。
私自身、こんな話をされたら、何を言っているんだ?と思うことだろう。
会話の前後はいまいち記憶してはいないが、哲学に絡めた話ばかりを行っていた記憶があるので、一般論で言うなれば、この人は自身の頭の良さを主張したいだけの自己顕示欲の強い人か本当に頭のいい人間の二択なんだろう。
どちらにせよ、私はその相手の女性では無いので、その際の心情や心の機微、どう考えていたかを簡潔に述べよと問われても、正解を出すことは出来ない。
もしかしたら、大喜びだったかもしれない、どうでもいいと聞き流していたかもしれない。しかし、その正解を導き出すことは本人では無いので、私に出来るのは、ここまでである。
人間観察は何処まで行っても、自己満足なのです。
だからこそ、面白い。だからこそ、楽しいのです。
人間観察をすることで、人間の真理を探究する人の少しばかりを理解出来るような、そんなに人間は単純ではなく、ただ見るだけでは何も分からないという答えに行き着くかもしれない。
正解を知りたいなら、その人に聞くしかない。しかし、聴いたところでそれが本質ではないので、聴かない方がきっと幸せなのかもしれない。
明確な正解が無い、決定的な答えがない、聴いたところで何の意味も持たないもの。それが私の思う人間観察の好きなところだ。
見どころの無い人間も、自分には何の長所も無い人間も、自己否定の強い人ですらも、この世界には存在せず、その人達の一端を知ることが出来る最高の時間だと私は思う。
それで言うなら、スマホと戯れる人にだって、何かしらの個性が見えて来るはずなのに。
簡単に一括りにして、スマホと戯れるだけの人間を、同じように見える雲のように関心を持たない私がシャーロック・ホームズになれる日はまだまだ先のお話しである。
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