風の中の街【カクヨム短歌賞1首部門応募作】
天野せいら
風の中の街
駅前の道を抜けると、見覚えのある交差点に出た。けれど、そこにあったはずの文房具屋も、小さな駄菓子屋も、もうなかった。代わりに並んでいるのは、無機質なマンションとコンビニ。
信号が青に変わっても、足が動かない。
目を閉じれば、あの日の夏の匂いが蘇る。自転車のブレーキ音、遠くで響くセミの声、夕暮れのオレンジ色に染まる坂道。
あの頃の自分は、こんな変化が来るなんて想像もしなかった。
風が頬をなでる。その風の中に、かすかにあの時の笑い声を探すけれど、もう届かない。
町は進み、時間は流れる。それなのに、心の一部だけが、あの夏に置き去りのままだった。
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過ぎし日の 声も足跡も 風に消え
変わる町並み 我のみ止まり
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風の中の街【カクヨム短歌賞1首部門応募作】 天野せいら @Sky_of_Stars
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