山姥
風馬
第1話
「裏山には、絶対に行くなよ。山姥が居るからな。」
少年は幾度となく、父親から山姥の話を聞いた。
でも、いつしかその事は、恐怖から疑念と興味に変わった。
裏山には何かある。
きっと、お宝があるに違いないと。
少年は、夏の暑い日、竹の水筒に水を満たし、裏山に足を踏み入れた。
獣道を進み、背丈ほどのある草を掻き分け、奥へ奥へと進んでいく。
空が赤みを差し始めた頃、小さな岩に腰かけて、喉の渇きを癒している時、背後から声がした。
「帰れ!喰っちまうぞぉ!」
振り向いた視線のその先には、長い白髪の山姥が居た。
少年は、水筒を投げ捨て、一目散に家へ家へと駆け抜けた。
どこをどう走って帰り着いたかは解らなかった。
家の扉を開けて、開口一番、「山姥が…。」
その夜、村では少年の話から、山姥についての会議があった。
これまで、被害は出ていないから、そのままにしておこうとか、今後のことも考えて今のうちに退治しておくほうが得策だとか。
結局、後の憂いを断ってしまおうと退治する案が採用された。
翌日。
少年と父親、村の衆とで、裏山に入っていった。
少年を先頭に、獣道を進み、あの岩の辺りまで来てみたが、竹の水筒があるだけで、山姥は見つからなかった。
その夜、父親は家族が寝たのを確認して、静かに家を出た。
月夜に照らされて、景色はぼんやりとは見えるが、裏山に入って村から見えなくなるのを確認すると、そっと、火打石で提灯に明かりを点した。
例の岩の辺りに着き、辺りを覗いながら、声をかける。
「お母さん…?お母さん。」
山姥 風馬 @pervect0731
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