ひと夏にアバンチュリたい
川北 勤
ひと夏にアバンチュリたい
電車の窓枠に肘をかけ、外を眺める。
押し寄せる波とどこまでも広がる蒼穹。窓を開けると、吹き抜ける潮風が頬をなでる。
この夏は何かが始まりそうな気がする。そんなことを漠然と思った。
高校1年の夏休み、俺は父親の仕事の事情で父方の祖父母の家で一人で過ごすことになった。
高校生活のスタートダッシュを決め損ねた俺にとって、この展開は非常に都合がよかった。夏休みに友達と遊ばない理由が、友達がいないからではなく物理的な距離のせいになる。たとえ建前でも、その方が自分の中のちっちゃなプライドを守れるような気がしたのだ。
そして現在7月24日、俺は海辺のよく言えば風情のある町、悪く言えば廃れた町の風を全身に浴びていた。
「夏君ー!このスイカ、あっちの天童さん家に届けてくれないー!」
台所の奥から祖母の声が聞こえる。
「はーい!わかりました。」
昔ながらの扇風機の前で棒アイスを咥えながら涼んでいたの中断し、声が聞こえた方に向かう。
あっちの天童さん家というとあれか、丘の上にある家か。いやだなぁ。疲れるんだろうなぁ。
内心辟易としながらも、祖母にはそれを見せずにキッチンへと入る。
すると、和やかな笑顔を浮かべた祖母が待っていた。
抱えていたのは人の頭ほどの大きさのスイカ。
「はいこれね。あっちの自転車つかってもいいからお願いね。」
渡されるとなかなかにずっしりくる。
「場所はわかる?」
「分かります。」
「そう、ならよかったわ。」
「はい、じゃあ行ってきます。」
玄関から外に出ると、古びた自転車が見える。
自転車のかごにスイカを入れるとサイズがぎりぎりだった。
貸し出された自転車のペダルを踏むと自転車がきしむ音がする。
ギぃ、ギぃ、ギぃ。ミーンミンミンミー。ミーンミンミンミー。
果ての見えない坂道を昇っている。右手には無限に広がる青空に藍色の海。たぶん、きらきらときらめいていてきれいなんだろう。だが、
「はぁ、はぁ、はぁ。」
そんなのを見る余裕はなかった。
斜度が急すぎて、太もも引きちぎれそうだ。
まとわりついてくる蒸し暑さとポチポツとハンドルを持つ手に滴る汗が気持ち悪い。
ギぃ、ギぃ、ギぃ。ミーンミンミンミー。ミーンミンミンミー。
必死こいでいると声が聞こえる。女の人の声だ。
「あれー、どうしよ。困ったなー。」
視線を上にあげると、遠くの方に自転車とその側面でうずくまる女の子が見える。肩まで生えている茶髪気味の黒い髪をぴょこぴょこはねらせ、自転車をいじっている。
大方、チェーンが外れて自転車が動かなくなった、そんなところだろう。
注視してみると、垂れる髪の隙間から見える、彼女の必死そうな横顔が見える。せわしなく動くかわいらしい表情が魅力的だ。
気づいたら乳酸がたまった足で全力でペダルを踏んでいた。
柄にもなく、助けたいと思ってしまった。
たぶん、そう思ってしまったのは夏のせいだ。
ギぃ、ギぃ、ギぃ。ミーンミンミンミー。ミーンミンミンミー。
女の子から少し離れたところでペダルから足を離し、自転車を止める。
肩を揺らしながら、必死に自転車をいじっている。
「だい「あ、直った!!」
声をかけようとした瞬間、女の子の喜色の含んだ声が聞こえた。
はっ!?
驚きが終わらないうちに、彼女はすぐさま俺が直すはずだった自転車に乗り、激坂を勢い良く下る。
一瞬、視界に映った女の子は、たなびく髪も気にも留めないで笑っていた。天真爛漫できれいで純粋な笑顔だった。僕はこの光景を一生忘れない、なぜか漠然とそう思った。
ほんの少し悲しみとともにどんどん遠くなる背中をひとしきり眺めた後、重い自転車とスイカを歩いて運ぶ。この激坂において勢いを失った自転車ではもうこぐことすらままならないからだ。
全身の筋肉を使い、自転車を押し上げる。見つめる先にはには陽炎が立ち昇り、暗に先は遠いことを示していた。
ギぃ、ギぃ、ギぃ。ミーンミンミンミー。ミーンミンミンミー。
自転車のきしむ音と蝉の声がやけに耳に残った。
7月25日。
冷凍庫のアイスとポテチが切れたので、補充しに行ったコンビニからの帰り道、俺は通り雨に降られた。
ぽつぽつとふる雨の中を自転車とともに駆ける。
視界が雨によって制限される中、前方に屋根のある建物を発見した。するとすぐさま、雨で滑るタイヤを滑らせてドリフトのような形で屋根の下に入った。
自転車をわきに止める。濡れた顔をびしょびしょな洋服で拭うと、顔に張り付きとても気持ちが悪い。髪からポタぽたと垂れる水滴がまつ毛に落ちて、視界がにじむ。
ザァーーー。
目の前には土砂降りとは言わないまでも、十分強い雨が吹き付ける。
そんな中、視界の端にかけてくる黒髪の女の人が映る。
「あぁ、もう。最悪。なんで降ってくるかなぁ。」
同じ屋根の下に入ってきたのは、長い黒髪を携え、目鼻立ちがしっかりしている美女だった。すこし、顔を下に向けると雨でぬれ浮き彫りになった、堂々たるスタイルが見える。
美女はぱっぱと手をふるうと、髪をぬぐい上げる。しずくが垂れる顔は妙に艶めいていて、濡れ羽色の髪は美しく流れている。水に滴るいい女とはこういうことで、色気とはこういうものであると突きつけられた気分だった。
美女は上品な手提げのかばんに手を突っ込む。出てきたのは丸められたタオル。顔、髪、腕の順で体をふくと、美女はなぜかこちらに首を向ける。
「貸してあげるよ。」
差し出された手にはさっき美女が体をふいていたタオル。雨音が響く中でもよく通るハスキーな声だ。
「いや、悪いですよそんな。」
「お姉さんのやさしさは素直に受け取った方が幸せだよ。夏休みに風邪ひいちゃったら楽しめないからな、少年。」
俺の手を強引に引っ張り、強制的にタオルを渡す。つかまれた手の柔らかさは今まで握ったどの手よりも柔らかかった。言い方がいちいちなまめかしい。
「じゃあ、ありがたく使わせていただきます。」
美女と同じように、顔、髪、腕の順で体をふく。タオルからは柔軟剤のいいにおいがした。きっとフレグランスのにおいに違いない。
「ありがとうございます。」
タオルを返すと、美女はアンニュイな表情を浮かべながら受け取る。僕の夏はこれから始まるそんな予感がした。
「どういたしまして。ところで少年は、」
ききぃ、言い切る前に車が止まる。この近辺には似つかわしくないぎらついた新車だった。
すると、車の窓がウィーンと下がる。出てきたのは金髪のチャラ男。
「まどか、わり。ちょっち、遅れた。」
窓から顔を出し軽めの謝罪をする男。
「ほんとだよ~たける~遅すぎ~♡」
まどかさんは、体をくねらせる。今までの、色気のあるおねぇさん像はどこへやら、デレデレ女の全力猫なで声。
「バイバイ、少年。」
再び響くハスキーな声。まどかさんは、手を俺に向かって振ると軽い足取りで車に乗りこむ。
再度、駆け出した車は水たまりをはね、俺を泥で汚す。
名前、まどかさんていうんだ。
気がついたら、自転車で雨の中を爆走していた。砕けた期待と悲しみをペダルに乗せてぐんぐん進む。
雨は帰ってきたときにはもうやんでいて、食べたポテチはやけにしょっぱかった。
7月26日。
家にいてアイスを食べているだけの日々をおばあさんにとがめられ、近所の海に出かけていた。
堤防の上で海を眺める。傷ついた俺の心を受け入れてくれる気がした。
ざぁー。ざぁー。
波の音が、鼓膜を震わせる。白い砂浜と青い夏が繰り広げられている下の世界の浮ついた声なんて俺には聞こえない。
「あなた、夏は嫌い?」
真隣からきこえる声は吹けば飛ぶような儚さがあった。それでいて、とても可憐な声だ。海を眺めたまま答える。
「嫌いだね。」
正直な感情を吐露する。俺を期待させる夏は嫌いだ。
「そう。」
どこか泣きそうな声だった。抱えきれない悲しさを必死に抑え込んでいるかのような声音だった。
この子にとって、夏とは何なのだろう。わからない。
ただ一つわかるのは俺がこの子を悲しませたその事実だけだ。
この子の悲しみをぬぐうことはたぶん俺にはできない。でも、ほんの少し言葉ならかけてあげられる。
体を声が響いた方に顔を向ける。白い髪と空色の法被を堂々とはためかせ、仁王立ちをしている女が見える。
「だめじゃ~~~~~。夏は楽しいもんぜよ。嫌いなのはあんたの努力が足らんからぜよ。」
海に向かって立っていたのはたくましいおばぁ。生きた年数を感じさせるしわと年齢を感じさせる膝が見える。でも、太陽に照らされた笑顔がきらめていた。生きるエネルギーに満ち満ちたすばらしい姿がそこにはあった。
「夏ジャー!」
華麗に堤防から飛び去り砂浜へ駆けてゆく。脱ぎ去った法被とジーパンの下にはフリフリのかわいらしい水着からのぞく年齢を感じさせる肌が見える。
そして、おばぁはどこからか取り出した浮き輪とともに盛大に海へとダイブしている。とても楽しそうだ。下の子供たちと一緒にはしゃいでいる。
とても元気なおばぁさんだ。一瞬悲しんだのもきっと大好きな夏が嫌いとか言われたからだろうなぁ。
「じゃねぇぇぇぇぇぇぇだろ!!ざっけんじゃねぇぇぇぇぇぇ!!なんでこうもひと夏のアバンチュールが起きそうな展開が起きんだよ!!そんでなんで、全部台無しなんだよぉぉぉぉぉ!!!そうだよ、認めてやるよ。夏が始めりそうな予感がしたとかっこよさげなこと言ってたけど、田舎で夏休みの間だけ泊まるとかなんか特別な恋が始まりそうじゃねとか、期待したよ。アバンチュールが起きそうじゃねとか思ったよ。でもさ、普通じゃん。いいじゃん。花の高校生だぜそんなこと考えたっていいじゃん。それなのにこの仕打ち。腐ってんだろ。上げては落とし、上げては落とし。湯切りしてんじゃねーんだぞ。もっと思春期の俺の心を丁重に扱ってくれよう。」
海に響く嘆きの咆哮。誰も返すものいない獣の咆哮。
むなしさだけがそこにはあった。
「もうこうなったらやけだ、いいぜやってやんよ。意地でもアバンチュール起こしてやる。アバンチュってやる。見てろよ、くそどもがぁぁぁぁぁ!!」
天に向かってこぶしを突き上げる。心が燃える。天に浮かぶ太陽のようにめらめらと燃える。性欲に起因する真っ赤なハートが燃え上がる。
ライフセーバーの注意なんて聞こえない。
7月27日。
俺は図書館にて本を読んでいた。
狙いは内気な本好きのメガネっ子美少女と仲良くなることだ。
この夏はその子と好きな本について話して盛り上がり、本を読んでちゃ、経験できないようなことをしてやる。ふへへ。
1時間後
おぉ、これからどうなるんだ。
2時間後
へぇ、そうなるんだ。
3時間後
何、続編があるんだ、これ。
5時間後
面白れぇ。
7時間後
俺は夕日を眺めていた。昼食を食べるのも忘れ、図書館の閉館時間まで本を読んでいた。時間を忘れるほど夢中になっていた。
「いや、わかっちゃいたんだ。都合よく、話しかけてくれる美少女なんていないよな。前までが奇跡だったんだ、奇跡だったのか?まあ、奇跡だったんだったんだろうなぁ。」
暮れる夕日の前に苦悶する。あれだけ、決意を太陽に表明したにもかかわらずこの無様。打ちひしがれて、心がすさむ。
気づいたら、図書館の前で膝をつき、うなだれていた。
石畳のザラザラとした感触が膝から伝わる。
「おにぃちゃん、大丈夫?」
聞こえるのは、かん高いかわいい声。きたか!俺の夏!
見上げるとそこには、可愛いショタっ子。
心に隙間風が吹く。
「ああ、きっと大丈夫じゃないけど大丈夫だよ。」
精一杯の苦笑い。けれども、しょたっ子は笑った。曇りのない純粋な笑顔を浮かべた。僕は彼よりたぶん小さい。そう思った。
湿った風が俺たち二人を覆っていた。
俺は駆けずり回った。新たなる出会いを求めて。
7月27日
ひまわり畑の前にいる女の人に話しかけたら、後ろから来た女の人の娘に声をかけられた。
7月28日
プールに行き、遊んでいたらナンパされた。ボディペインティングのモデルとしてぴったりな人材らしい。
7月29日
崖の上で体育座りをしたていたら美女に励ませられた。そのバックには、イケてる兄やんと姉やんがいた。
・
・
・
成果なんて出なかった。
8月7日
「くそくらえだぁ!!!俺をもてあそぶ夏なんてくそくらえだぁ!!!」
祖父母家で簡易的に俺の部屋になっているところで叫ぶ。
あまたの青春イベントを破壊しつくされた俺の心はズタボロだった。
もう、家から出ない。そう誓った。
「夏君!ちょっと下まで降りてきてもらえる?」
下からそんな声が響く。一歩も動きたくなかった足が自然に動く。この家にいさせてもらっている立場なのだ、強く反発などできるわけがない。
下に降りてみると、祖母と見知らぬ顔が二つ。
一つは、ここでは珍しい色白な肌を持つ子供でもう一人はたぶんその子供の母親だろう。
「ああ、きたきた。夏君、この子を夏祭りに連れて行ってもらえるかな?これから私たち、ちょっとした用事があって出かけなきゃなんだけど、この子が夏祭り、どうしても行かなきゃならないっていうからさ。」
「いいですけど」
母親はペコペコしながら、こちらを見つめてくる。子供は、こちらなど見つめずぽっけに手を突っ込みながら口笛を吹いている。以降こいつのことは、クソガキと呼ぶことにした。
「ありがとうございます。ほら、和弘もお礼を言いなさい。夏君のおかげで行けるんだからね。」
親はクソガキの自分の頭も下げつつ、クソガキの頭も一緒に下げようとする。反抗しつつも頭を下げるクソガキ。ぷぷぷ、ざまぁ。
「さぁ、春香さん行きましょう。重信さんのライブに遅れちゃまずいわ。」
「はっはい、そうですね。和弘、礼儀正しくしなさいよ。絶対だからね。じゃあ、行ってくるからね。」
そういうと、二人して玄関から急いで出ていく。じいちゃん、ライブやってんのか。わけぇな。
残された、野郎二人。
「で、どうする?和弘君、いま13時だけど今から祭り行く?」
「いや、15時までこっちにいる。」
そういうと、クソガキは勝手知ったる我が家のようなスピードで居間へと進む。
一応、一人息子を預かった身なので後を追う。
クソガキはテレビをつけのんびりしていた。
テレビを見てみると、ぜんいんが顔がわからん。地方だからか?
「ねぇ、夏。」
「ん、何だい?和弘」
しれっと年上を名前よび。クソガキ判定2アウトといったところ。ちなみに、3アウトは殿堂いり。スカートめくり常習犯クラスだ。
麦茶を口に含む。
「堤防で叫んでたのってあんた?」
ぶっーーーー!
お茶を吐き出した。
「けほっ、けほっ。き、貴様。どこでそれを。」
「へー、やっぱそうなんだ。」
「か、鎌をかけたのか。」
「その、カマってのが何なのかよくわからんけどたぶんそうだよ。きもいね。」
「ぐふぅ」
夏の心に10のダメージ。まずい、今までの蓄積ダメージで瀕死だ。
「何で知ってんのか。っていう質問が出るだろうからあらかじめ答えておくけど、海で遊んでたらいきなり叫び声が聞こえて、上見たらあんたいただけだから。まあ、あんとき日の光が強くて顔とかよく確認できなかったから、確証は得てなかったんだけどね。」
「あっそっすか。」
せんべいを貪り食いながら興味なさげに語るその瞳にはせわしなく動き回るおれの動きを映していた。無様に打ちのめされている俺はまるで哀れなピエロのようだ。
「あ、そういえば。アバンチュールだなんだ言ってたよね、あんた。ふっ、哀れだよねー。なんでこうも陰キャってのは、自分に魅力がないくせに外的要因に期待をはせて、自分から行動しようとしないんだろう。」
「がっふぁ!」
クリティカル!30ダメージ。
だがまだ生きている。俺はまだ死んでなんかいない。
甘いな小僧、俺は自分から行動した。声はかけた。まぁ、聞かれちゃいなかったけど、声をかけようとした。つまりそこらの陰キャとはわけが違うのだよ。わけが。
「あ、そうそう。話しかけるのに満足して、こっちから話を展開したり、こっちから何か行動させたりしなきゃ関係を持続できないかんじになって最終的になんか気まずくなる人いるよねぇ。これはまぁ恋愛限んないんだけど。そうゆうやつに限ってプライド高かったりするから、あくまでこっちのせいみたいに感じにしてくんの何なのきもすぎ。」
俺は死んだ。
はっ、ここは。
『天界です。あなたは死にました。」
白い世界が目の前に広がる。
「死んだのですか私は?」
『はい、死にました。【ズボ死】です。』
「【ズボ死】ですか?」
『はいそうです。死んだといううことで、走馬灯を見てもらいまーす。場面はそうだなー、高校での生活の場面でいいかな?」
「いいですかじゃない、はやい。はやい。まだ、【ズボ死】を受け入れられてないいって。そんでやめて、黒歴史放映すんのやめて。死にたくなるから。」
『いやもうしんどるやないかーい!ということで、見まーす。楽しみ!!わくわく!!』
「適当な突っ込みやめて!!てか、やめて!せめて、俺に見せないで。」
俺は目を閉じ、耳をふさごうとする。俺の体は宙に浮き縛られ、目はなぜか閉じれない。や、やめぇろーーー!!
じじっ、じー。
映し出されるのは教室。窓の外は、見事な桜並木が生えている。
そして、画面の中央には一人の少年が、教室にて無理に笑っている姿が映る。
その少年は顔は真っ赤にしながらの一生懸命クラスメートに話しかけている。けれども、聞かされる相手は少々、戸惑っているようにも見えた。
場面転換
暗転した画面に再び映しだされるのは、同じ教室。けれども桜は散り、緑が生い茂っている。
画面の中央には一人の少年。本を開き、眺めている。けれども、ページは手繰っていない。しかもよくみると、なぜだろうそわそわしている。少年の近くにすこし視線をずらすとその原因が見える、3人から5人程度の男子グループが談笑している。彼はおそらく、そちらの話に耳を傾けている。けれども、待てども待てども話しかけられない。少年はあきらめて教室を出ていく。帰っていく背中は縮こまりやけに小さく見える。
場面転換
少年が消しゴムを落とした女子の同級生にその落とした消しゴムを渡している。どもってしまって恥ずかしそうだ。
場面転換
少年はその子の前でウロチョロしそわそわしていた。その女子は引いていた
場面転換
少年は副学級委員に立候補している。妙に自信満々である。
場面転換
少年は、クラスの会議中ただ、黙々と議事録を書いている。
「DAAAAAーーーーーーー!!!!!もうやめてくれ、頼むからやめてくれ。死にたくなるよう走馬灯をありがとう。だからやめてくれーーーーーーーー!!!!」
悲痛に叫ぶ声がこだまする。しかし止まらない、現状を変えようとするも周囲に甘え、あくまで受動的に変わろうとする自分の浅ましい姿を見せつけられる。
プライドが高くて、周囲の目を気にして、そのくせ変に勇気はあって、痛ましくも恥ずかしい姿が永遠に流される。まさに、黒歴史の坩堝。終わらない地獄。
悶絶。そんな感情が胸の内を暴れ回る。
「やめてぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
「はっ!」
「おっ!やっと起きた。夏、大丈夫?いきなり気絶してたけど。」
揺さぶられて、目が覚めると知らない天井が見える。というわけでもなく、ここ最近で見慣れた天井と見慣れないクソガキが見える。
覗いてくるクソガキは少し心配そうな顔でこちらを見つめてくる。
「ごめん。ごめん。【ズボ死】してた。」
「はぁ?」
怪訝そうな顔だ。頭でもやられたのではないかとでも言いたそうな顔。
すると、得心を得たかのように、にこやかな顔に変わる。そういえば、海岸で叫ぶような男だった、もとから頭はやられているのだと納得していそうだ。
だが、怒る気すら起きない。そのくらい、夢で心が傷ついていた。
「時間もうギリギリなんだけど。」
その声を聴き、時計がある方角へと首を傾ける。
俺が、横になっている関係で見えにくいが時計の針はもう15時を超えた位置にあった。大体、15時15分くらいだろうか。
「急いだほうがいい感じ?」
「いや、ゆっくりいこう。待ち合わせに遅れたって大した問題じゃない。」
こいつはクソガキであり、くずである。そう思った瞬間だった。
カァー、カァー。げこげこ。ぴー。ぴー。
外に出ると日本特有の水分がまとわりつくような暑さを感じる。
青々としたあぜ道を進む。踏みしめた土は、わきに広がる田園からしみだしているせいもあってか湿っていて、足が沈み少し気味が悪い。サンダルできたことを少し後悔した。
空を見上げると、白く細長い雲がオレンジ色の空をたなびいていた。その空をカラスの大群が横断する。妙に規則ばった飛行でそこだけ切り取ればまるで芸術だ。
音が響く。カラスの鳴く声。カエルの声、何の虫かわからない鳴き声が聞こえる。
ここはまるで、むせかえる夏のたまり場だった。
「夏、黄昏てないで話そうよ。」
草むらの、じめっとした質感が、
「叫んでたことおばあちゃんに、「いやぁー、何かな和弘君。」
何だこいつは、油断したらフラッシュバックする黒歴史を思い出さないように脳内モノローグを増やしていたのに。
「あんたってさ、友達いないの?」
「なんで、分かった!」
おかぁさんにだって言ったことないのに!!
「さっきうわごとで言ってた。」
「そっか。そうだよ、俺は友達がいない。所謂、高校デビュー失敗ってやつさ。」
自嘲気味に過去を語る。何だか、とてもみじめだ。
「ふーん。そっか、そんな気はしてたけどね。普通に友達いる人間からはあの叫びは出てこないよ」
「はは、それな。」
力なく答える。
「ってことはさ、もしかして俺の言ったこと全部あってた?」
「あってたよ。もしかして君って俺のクラスメイトなのかなとか思う程度には。」
「へー、だから気絶したのか。」
「そうだね。たぶん、自分が変わってないことにショックを受けたんだ。」
流れるように出た、答えがすうーっと心に染み込んでいく。そうか、この夏で彼女がいない日々を変えようとしてとして行動したことは何もかも以前の自分と変わっていないのだ。
ほんの少し行動したぐらいで、相手から自分と関係を築いてくれるという甘い幻想を信じている自分が変わっていない。
だから、もし、7月24日に困っていた彼女の自転車を俺が直せていたとしてもアバンチュールなど起きなかっただろう。期待だけして鼻息を荒くしながらそわそわする自分がいるだけだ。たとえ何度も、偶然たまたまあったとしても恋には発展しない。甘えた自分にそんなことが起きるなんて世界が許さない。
カァー、カァー。
鳴き声が空々しく響く。もう、日は暮れて、空はもう暗闇に変わっている。
遠くには、明るく道を照らす提灯が見える。かすかに、祭囃子も聞こえる。
長い沈黙が、俺たちの間に漂っていた。
「ごめんね。ちょっと言いすぎちゃった。まさか、気絶しちゃうなんて思わなくてね。」
「いや、別にいい。実際きもいしな俺。」
本当に気持ち悪い。こんな俺に誰が恋をするというのだ。
「まさか、適当に言ったことが当たりすぎて人を傷つけるとは僕は天才なのかもしれない。」
「本当にな。」
エジソンでもなかなかできない芸当だろう。
「でも、そっか。友達いないのかあんた。」
「うっせ。」
あぜ道を抜け、コンクリートの道に入る。目的地まであと少しだ。
「そして、友達もいないくせにひと夏にアバンチュって恋しようとしたんだ。しかもアバンチュールってことは特別な恋を。」
「ぐふぅ」
心に浅めのジャブが入る。こいつの口撃はたぶん世界を狙える。
「面白いね。やっぱり、きもいって言ったのは間違いじゃないかもしれない。」
「もしかして、今度は気絶じゃなくて命に狙いに来てる?そろそろ死んじゃうよ、俺。」
「ハハハ、まぁでも、きもくても行動できたってのはいいことじゃない?」
「いや、俺は、最初の一歩を踏み出しただけだ。しかも、一歩踏み出すことすらまれだよ。」
俺の言葉を聞くと、クソガキは速足で歩き。俺の進行方向をふさぐ。提灯に照らされた顔は少し大人びて見えた。
「一歩踏み出せたなら十分だよ。あとは、持つべきなのは自信だね。」
にこやかに笑った顔はやっぱりこの子は子供なんだなと感じた。
クソガキ、いやもう和弘だな。
和弘は、斜度の高い階段を駆けている。その少し上には神社の鳥居。あと少しだ。あと少しで祭りの会場だ。
一歩一歩石畳の階段を踏みしめる。疲れるかと思ったが不思議と疲労感がない。この夏にいろいろなところを出会いを求めて駆けずり回っていたからだろうか。そうかんがえると、あの日々は無駄じゃなかったのかもしれない。
階段を登りきると町の人がが祭りで楽し気にしているが光景が広がっていた。
最初に目につくのは、やぐらだ。遠目だから詳しいことがわからないがおそらくおばぁちゃんが激しく太鼓をたたいている。
たぶん、あの海にいたおばぁだ。さすがだおばぁ。
少し目線をずらすと、楽しげに食べ歩きやら何やらを楽しんでいる人々。
「まどか、あ~ん♡」
「あ~ん、う~んちょーおいひい♡」
近くのカップルの声が聴こえる。
無視だ!!俺の精神衛生上よくない。
駆け足でその場から去る。すると、俺に駆け寄ってくる小さな影が見える。
中央には和弘。祭りに行かなきゃならなかった理由はこれか。おそらく、前から約束してたのだろう。
子供を多く引きつれ、和弘は俺の目の前までやってきた。
「紹介しよう。きもい、きつい、いたいでおなじみの不審者青空 夏だ。」
「おい、なんだその言い方は、「え、じゃあこの人が堤防の上で絶叫してるだけでいたいのに、しかもその内容が女の子とぐふふなことがしたいとかいう願望を言ってたあの人?」
「え、じゃあ町内を駆けまわりありとあらゆるタイプの女性にナンパしようとしてそのことごとくを失敗してるあの人?」
「え、じゃあ近所の回覧板で回ってきた不審者ってこの人?」
「がはぁ!」
子供たちの純真な言葉のナイフが俺の臓腑をえぐる。足ががくがく震えて、立つことすらままならない。少し膝をつき、顔を上げる。
にこやかな和弘の顔が、見えた。
「まぁ、なんだ。どんまい!」
肩をポンとたたかれる。
「じゃあ、僕はこの子たちと回るから。集合時間は今から3時間後、場所はここでいいよね。」
小さくうなずく。
「バイバイ、また後でね。」
軽やかな足取りでその場から去って、さっきの子供たちの方へ向かっていく和弘。
そして、少し離れたところで俺の方向へ振り返ってきた。
なんだ、お金か?
「頑張ってね、夏君。夏はまだこれからだよ!」
そういうと、和弘は子供たちと一緒に人垣に溶け込んでいく。
かけられた言葉は、なぜか俺にとてもしみた。そして、とってもむかついた。
くそがきがぁ。
子供たちを見送った後、祭りの通路のわきに配置してあるベンチに腰を掛けていた。
流れてくる幸せそうな人々をねめつけながら、ぼーっとする。
きこえてくる祭囃子が俺にはやけに遠かった。
「ぐー。」
俺の腹から、かわいい声が聞こえる。どうやら腹ペコらしい。
俺は、腹ごしらえをするためここで何かを買おうとベンチから立った。
傷ついた心に鞭を打ち屋台がある通りを歩く。
周りを見渡すと、強気な値段設定の値札が色とりどりだ。あまり、お金を払いたくない。
なぜなら、母親曰く祭りで食べ物が割高なのは、通常の値段に加え祭りの思い出というスパイスがかかっているかららしい。
つまり、俺は貴重なお金を余剰に払うことになっている。
「はぁ。」
思わずため息が漏れる。
肩を落としながら、周りを見渡すとすごく目がひきつけられるところがあった。
5人の男女が焼きそば屋のわきで談笑しているところだ。
そして、特に目を引くのは茶色気味の髪をぴょこぴょこはねらせながらあの時とはおんなじで魅力的な笑顔を浮かばせた女の子だった。
自転車の時の子だ。そう思うと、声をかけて助けようとしたら失敗した、今となってはただの黒歴史となり下がった俺にとっての夏の始まりの日の思い出がよぎる。
あの時の下心がよみがえる。
「あ、」
無意識のうちに出た声を抑える。
なぜだ。なぜ声が出る。また期待してんのか?ここで勇気を出して、何かが起きるのではないかとかでも考えてんのか?馬鹿か俺は。何も変わってない。ああ、本当に何も変わってない。気色悪くて吐きそうだ。
止めた足が動き出す。気色の悪い自分から逃げ出すように。
『まだ、夏は始まったばかりだよ』
動き出すと、脳からそんな声が聞こえる。
うるさい。夏は嫌いだ。俺を期待させる。何も変わってない自分を自覚させる。大嫌いだ。
恥ずかしいんだ。失敗したくないんだ。
負の思考が頭から離れない。逃げ出そうと、より足を速く進める。
もう祭囃子なんて聞こえなかった。でも、新たに聞こえる音がある。
ミーンミンミンミー。ミーンミンミンミー。
この夏、うざったくなるくらい聞いていたセミの鳴き声だ。
そして、だからこそ思い出した。このひと夏の思い出を。
いつだって気持ち悪かった暑さ。自転車がきしむ音。すたびれた町。キラキラと輝いていた海。ゆらゆらと揺らめいていた陽炎。
あの無限のエネルギーが湧き出てくるような期待感。あの真っ赤に燃えるようだった下心。
期待が打ち砕かれたときの寂しさ。やけ食いした、ポテチのしょっぱい味。
俺は、それをどう感じていたのだろう。
すべてが否定されるべきものだったか?
そんなことはない、あの蒸し暑さも虫の声も寂しさも期待感も全部俺の夏だ。
楽しかっただけじゃない、ほろ苦かった夏。
きっかけは受動的で、行動も中途半端で、それでいてかっこ悪かった俺の夏。
『まだ夏は始まったばかり。』
あの言葉を再起する。
そうだ、俺の夏はまだ終わってない。かっこ悪くて、きもくて、痛くて、変わるかもしれないという期待感だけで何も変わっていなかった俺の夏は終わってない。
これからは、全力だ。中途半端に期待しない。本気で期待する。本気で動く。あの時の薄っぺらな何も伴ってない覚悟なんかしない。
絶対にアバンチュってやる。
それが何にも変わらない俺の夏だ。
そう思い、振り返る。
友人とともに、祭りの通りを歩くあの美少女が見える。
「お嬢さん!!」
俺が出せるありったけで叫ぶ。すると、ビックっととした後こっちに振り替える。
俺がまっすぐ見つめると、彼女は戸惑った表情をしていた。
「そうですあなたです!!どうか僕とデートしてくれませんか!!」
腰を直角に曲げ懇願。永遠にも感じた数秒がたったのちに彼女は答える。
「えっと、ごめんなさい。ちょっと、恥ずかしいかな。」
心に恥ずかしさと情けなさが沸き立ち、おもわず首筋に汗が垂れる。覚悟は決めたけど、やっぱり悲しかった。
「あっ、でも友達と一緒ならいいかもこの辺で同年代は珍しいし、それなら恥ずかしくない。」
顔を上げた時の彼女の顔はとてもかわいかった。
それからの夏は本当に楽しかった。
彼女、瑞希をナンパした後、日向、景虎、日葵、瑞人に絡まれ祭りを一緒に回ることになった。
どうやら、あの覚悟決まったナンパ姿に魅力を感じたらしい。
ちなみに、俺がナンパした女性の名前は瑞希というらしかった。
ひとしきり遊んで和弘と約束した時間になったので集合場所にみんなを連れて戻ると和弘がいた。
俺とその周囲にいる人たちを眺めた後、にやつきながら「よかったね、夏君。」と言われた。ぶん殴ってやろうかと思った。
そして、そのあと衝撃の真実を知る。和弘は瑞希ちゃんの弟らしい。
瑞樹ちゃんに絡まれている姿は年相応でにやついた。
俺のその顔を見た時の悔しがってる姿は愉悦それ以外の何物でもなかった。
それからの、そのグループに入れさせてもらい夏休みは楽しく過ごした。
最初は、あんまり自分を出せなかったけどみんないいやつですぐなじんだ。けど、景虎は俺にはまっていない。さてはおめぇ、瑞希ことが好きだな。
それからいろんなことが起きた。
俺にとって何のゆかりもない、夜の学校にしのびこんだ。ばれたとき、俺だけなぜかがちで警察を呼ばれかけて焦った。
川遊びをした。瑞希の隠れ巨乳がばれて恥ずかしがった様子がかわいかった。
初めて友達の家でお泊りをした。猥談といううものを人生で初めてした。尻派は邪道だね。
日々があっという間に過ぎていくのを感じた。人生でこれほど楽しかった夏はないと断言できる。
けどすこし、物足りなかった。やっぱり、俺はひと夏にアバンチュリたい。
8月31日。
夏休み最終日、俺は実家がある、東京へと帰るためぷらっとホームにいた。
湿気をはらんだ潮風を全身に浴びる。やっぱり心地のいいものではかったが妙な郷愁を思い浮かばせた。
「寂しくなるねー。」
右隣にいるのはこの夏アバンチュってゲットした彼女の瑞希ちゃん。そう書ければよかったんだが実際にはそうではない。白いワンピースをはためかせ麦わら帽子を被った、ただの友達の瑞希ちゃん。健康的な小麦色の肌がやっぱりかわいかった。
そして、左隣にいるのは、
「そんなことないでしょ、元に戻るだけだよ。まぁ、夏は寂しいだろうけどね、なにせあっちじゃ友達がいない。」
クソガキだ。
「うるせー、跳ね飛ばすぞ。」
左に足を延ばす、しかし躱された。
「ちっ!」
「もうやめなさい。最後くらい仲良くしなさいよもう。」
「「はーい」」
すねたような返事をする。はもってしまった。
「ふふっ。」
軽やかに瑞希が笑う。
「何がそんなに面白いんだよ。」
和弘が口をとがらせながら聞く。
「たった、3週間しかないのに私たちとこんなに仲良くなれたのってすごいなーって思ってさ。」
「確かにすごいよなー。」
雲一つない空はどこまでも澄んでいた。ここに来た時と同じようような感想を思い浮かべる。
電車が近づく、多少のわびしさを感じる。
ぷしゅー、電車が停車する。キャリバックを抱え、乗り込む。
「じゃあ、またね。」
そして、体を翻すとともに手を振る。
「うん、またね。」
「二度とくんなー。」
憎たらしいすねた顔と爽やかな微笑んだ表情が見える。
そんな光景を見たとき背景にひまわり畑を幻視する。
まるで、物語の一ページを切り抜いたようだ。
隣のいらないのは無視だ。
「あのさ、一つ、伝えたいことがあった。」
瑞希が少しだけ頬を染めながら声をかけてくる。
「あのね、今までタイミングがなくて言えなかったんだけど。」
手を胸の前でもてあそびながら股を滑らせてもじもじしている。
帰り際、駅のプラットホーム、今までの展開、思い当たる節はたくさんある。もしかして、あるか?いけちゃうのか?
むくむくと期待感が膨らんでくるのを感じる。
俺の夏はまだ終わっていなかったのかもしれない!
「みんな、夏休みの宿題終わってないからみんなこれなかったんだ!ごめんねー!」
ぷしゅー。扉が閉まる。
動き出す電車とともに流れる二人の姿。俺は呆ける。そして、少しの間をあけて叫ぶ。
「あぁぁぁぁーーーーーーー!!くっそーーー!期待しちまったじゃねぇーカー!」
期待感は空振り、俺の誓いは果たせなかった。
けど不思議と悔いはなかった。
電車の涼しい風が俺を包む、外には美しい波ときれいな砂浜。
「来年こそは、絶対にひと夏にアバンチュってやる。」
心には真っ赤な太陽がめらめらと燃えていた。
駅のプラットホーム、残された二人。
「よかったのねぇちゃん。伝えなくて、せっかく俺が背中押したのに。」
「大丈夫よ。私だって本気でアバンチュールを起こしたいんだから。」
持つのは、東京行きの切符。空には燦然と飛行機雲がたなびいていた。
ひと夏にアバンチュリたい 川北 勤 @kawakita_tutomu
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