ひすいとみき
@bghbd
第1話
浴槽にはロールキャベツのようにブルーシートに包まれた全長170前後の物体がぐったりと横たわっている。隙間からこぽこぽと血液が漏れ出しこの狭いバスルームを、むせかえるような金属の匂いで満たしている。そんな状況を尻目にガラスのような目で俯いている女の背中を流す少女の顔はまるで愛おしい我が子を見つめる母親のように暖かかった。
両親がいても家があっても食事があってもいつも心に空洞があって、抱きしめられても見つめられても心に残るものは愛情を正常に受け取ることができない罪悪感とこんな自分に絶えず永遠にも思えるような愛を注ぎ続ける両親への哀感ばかり。いつからそんなことを感じるようになったのか、13歳の頃から自傷行為と自殺未遂を繰り返し、14歳の時耐えきれないほどにいたたまれなくなり行く先も何も考えずに家を飛び出した。追ってきた母親を振り切り一心不乱に走り続けたその時、視界の端に黒の軽自動車が走ってくるのが見えた。目の前を横切ろうとしたその時みきは車道に飛び出し左半身に強烈な閃光が走り勢いよく突き飛ばされてアスファルトに身を投げた。その時に見た光景は今も夢に出てくる。
みきの父親はとても穏やかで真面目な人間だった、怒るところなんてたぶん一度も見たことがないと思う。みきのせいで愛する人を失っても変わらずみきに接してくれていたけど、ある日みきがバラエティ番組を見てまるで今までなにも起きていなかったみたいに大笑いした時、父親は堰を切ったように涙をぼろぼろ流し「何が駄目だったんだ。俺もゆうこもお前を心の底から愛していたじゃないか。お前の願いは何でも叶えてきたつもりだったしいつだってお前のことを考えていたのにどうして。」そう言って
翌日父親は寝室で首を吊っていた。
みきは今親戚の家で暮らしている。
ひすいとみき @bghbd
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。ひすいとみきの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます