田舎での生活とその中での主人公の心情の変化、そして自己との葛藤を描いた、とても深い部分も掘り下げた作品だと私は思いました。
梶井基次郎オマージュとの事ですが、太宰治風の雰囲気も私には感じられました。
最初は田舎に馴染めず、都会に戻りたいという気持ちが強い主人公が、
次第にその場所や人々、生活の一部に触れながら自分と向き合っていく様子が描かれています。
特にその「不足感」や「隷従感」の表現が印象的で、彼が感じる虚無感や疲れは読んでいて胸が苦しくなるほどでした。
また、盗みを働いた後の心情描写がかなりリアルで、罪悪感や後悔、そしてそれに続く苦しみが強く伝わってきます。
やりきれない思いと共に、彼がどのようにそれを処理していくのかが描かれているのが特徴的です。
墓場や田んぼ、家の中の枝豆など、さまざまな象徴が散りばめられていて、どれも主人公の心の状態を映し出すような感じがします。
特に枝豆を手にとって眺めたり、食べたりするシーンでは、「触れることで初めてわかることがある」という感覚が、物語の中で重要なテーマの一つになっているように思います。
全体的に、静かでありながらも内面的には強烈な葛藤を抱えた主人公の成長過程を追っているようで、
読むたびに何かしらの感情が湧いてくる作品だと感じました。