こちら付与魔術師でございます

第1話 こちら付与魔術師でございます

私はカーソン・デロクロワ。

付与魔術師をしています。

最近、やっと師匠から独り立ちを許され故郷の街に戻ってきました。


 冒険者?

そうですね、攻撃魔法も結構使えますんで多くの人に誘われましたよ。

でも、やりませんよ。

だって、怪我したら痛いじゃないですか(笑)


 さて、では故郷に戻って何の仕事をするのかって?

それは付与魔術師ですよ。魔術師版鍛冶屋さんですね。

要は自分が身に着けた付与魔術を剣や鎧、道具などに付与したりして魔法の武器にして売る商売をしようかと思っています。

 古代魔法のかかった強力な武具には敵わないから商売にならない?

そうですね。確かに古代の遺跡から出る魔法の武器や防具・道具は強力なものが多いのは事実です。でも別に強力な物である必要は無いではないですか。

高いし(笑)

騎士や冒険者、旅行者の皆さんが少しでも安全に、生存率が上がればそれでよいと思っているんですよ。

それに付与魔術師ってそれほど多くないんですよ。

需要はあると思いますがねぇ……。

 

 私は作られている武具や防具に魔法を付与するのがメインですが、精霊石や魔石、特殊な素材を合体させる融合魔法も使えるんです。

 ちなみに精霊石とは精霊の排泄物(汚いものではないですよ、きっと)で強力な力を有している物です。結構レアなものですよ。大体は貴族が買ってゆくものです。用途としては回復アイテムの触媒などの使われます。


 魔石は?

ん~、この世界の魔石というのは正直よく分かっていないのです。 

 そんな物よく使っているな?

そうですねぇ、それはいえると思います。しかし、魔石と呼ばれている物は数千年前にはすでにこの世界に存在し、使われていたみたいです。それは古代遺跡のマジックアイテムにも使用されていますし、現在でも使用しています。

 基本的には魔石は山や海で取れます。あ、もちろん海底ではないです。そんなところに長時間潜れる魔法なんて存在しませんから。

正確には海岸沿いの崖などの奥に鉱脈があることが多いです。

 山も同じで金や銀などと同じく、魔石の鉱脈があります。そこでは大小様々な魔石が取れます。ただ、大きいと言っても最大はこぶし程度が限界で、実際は眼球程度かそれ以下といったところです。

 質の良いのは特に火山帯で取れます。しかし、命がけになるので滅多に行く人はいません。

 魔石の質というのは簡単に言えば透明度です。基本的に魔石は黒なのですが透明な黒?の光りの通り具合で質が決まります。

ちなみに質が高いと魔力を吸収できる量が違います。正直、大きさではありません。あくまでも質です。

 それと今言ったことでおわかりかも知れませんが、魔石には最初から魔力が籠もっているわけではありません。

 取れた段階では空っぽのただの石です(それでも他の石とは区別が付きます)。

 魔術師や聖職者などが魔力を込めたときに初めて魔石として効果が現れます。込めるのは付与魔術師以外でも出来ますが、あくまで魔力をストックできるだけで魔法を込められるわけではありません。

魔法を込められるのは付与魔術師とエルフくらいです。ちなみに聖職者にも付与魔術を使える人はいます。

 これが魔石と言われている物です。


 特殊な素材とは魔物などから取れる角、爪、皮など様々な物があります。それぞれ冒険者や騎士、素材屋などが魔物を倒して冒険者ギルドや素材屋で売っています。

 ちなみに私は自分では狩には行きませんよ。買うのが安全ですからね。


 付与する武器や防具、道具はどうするのか?

まあ、定番は武器屋、防具屋、道具屋から仕入れるのが手っ取り早いのですが、中々納得できるものが無いんですよね。高いし。

よってゴーレムやスケルトンに作らせますよ(笑)

いや、冗談ではないですよ。

 彼らは普通の鍛冶屋などのように熟練の技術は無いです。でも均一の品質の物を作るのには向いているんです。

安く大量生産した物に自分で付与する。

まあ、ゴーレムやスケルトンを使役する魔力は結構なものですが、それでも儲けは充分出ますね。


 ちなみに私の故郷であるルイスの街は王国内でも結構大きなところです。ルイス公爵という王家の奔流ではない公爵家の収める領都で人口は30万。領全体で150万というところですか。

ルイスの街は三重の城壁に囲まれた巨大な都市です。ちなみに私の家は第二城壁の城壁寄りになります。

 この都市は王国内でも特殊で、人以外に獣人族、エルフ、ドワーフ、ハーフ巨人等、様々な種族が暮らしています。これは領主であるルイス公爵の平等主義の現れです。

王国自体は人族主義なのでそのほかの種族はかなり不遇の生活を送っています。


 さて、私はつい先日このルイスの街に着いたのですが、疲れていたのでずっと実家で寝ていました。実家と言っても両親は既に他界しているので今は一人です。親の財産が多少あったので私がここを離れている間、家の維持は大丈夫でした。

 少し身体が休まったので今日は街へと繰り出して住民登録と古物商申請、冒険者ギルド、魔術師ギルド、職人ギルド、商工会へ登録に行かねばなりません。

 

 仕事用の物件は?

そう、それも目星は立ててあります。まあ、露天ですがね。

実家を店にしないのか?

実家は少し広めとはいえ工房街寄りの一軒家なので商業街とは離れすぎていますね。

それに最初は商品も少なめですし、午前中のみの販売ですから。

 ちなみに商品の作成は実家でします。実家の庭は30坪ほどありますし、少し広めの小屋も建っています。

騒音対策も魔術で完璧。


では、手続きに出かけましょう。



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