E=(アリス)2~葬体生離露夢~
猫姫花
第1話 ふたつの序章
「アリス・・・アリス・・・」
誰がわたしを呼んでいるの?
アリスはそう思った。
「ダイナ?」
「・・・なんだ、にゃー」
◇◆◇◆
そこは急と思いたければそんな気がするゆるやかな丘の斜面のあたりにある小屋。
その木製の小屋のドアは、丸い金属のノブで、引いて開ける。
ベルはついていない。
その小屋には暖炉があって、その側に揺れる椅子がある。
姉のロリーナはそこに座って編み物をするのが好きだった。
アリスは編み物は好きではないけれど、編み物をしている時のロリーナの話は好きだ。
バジルの葉が好きなうさぎが横目に跳ねて。
床に寝転びながら読書をして、足をぶらぶらと遊ばせたりする。
「またその本を読んでいるの?」
「そう。『CDやDVDを取り出す時の焦りかのような』、の所よ」
「あきないわねぇ」
「いったい何なのかしら?」
「さぁ?」
その小屋にいる時には、まったく「忙しい」とは縁遠い。
「ん?」
金髪に水色の目をした少女アリスは、誰かに呼ばれたような気がしてドアの方を見た。
ロリーナの方を見る。
「今、誰かわたしを呼ばなかった?」
「わたしではないわ」
「そうよ。だったら、「ロリーナ、今わたしの名前を呼んだ?」って聞くじゃない」
「では誰があなたを呼んだのかしら?」
「んん~・・・」
アリスはボブヘアーの頭をかいた。
「ん?」
アリスはやはり呼ばれた気がして、ドアの方を見た。
「ねぇ、ロリーナ。やっぱり誰か外にいるような気がする」
「だったら羊じゃないかしら」
「んん~・・・執事のネリーなわけないわ」
「ネリーじゃなくて、メリーの話をしたのよ」
「ちょっと見てくる」
アリスはお気に入りの本を暖炉の上に置いて、ドアに向かった。
半端な位置に置かれたその本が、床に落ちる。
それに気づかず、アリスはドアを開ける。
そこには、青空と緑の高原。
短い階段を下りて小さな畑の方を見て、少し走って小屋から離れて辺りを見てみる。
そして唇に人差し指を当てる。
小首をかしげそうになった時、背後で轟音がした。
熱風で身体が傾く。
そして驚いてそちらを見る。
さきほどまでいた小屋とそのあたりは、隕石の落下のせいで消滅していた。
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