姉の聖女召喚に巻き込まれた無能で不要な弟ですが、ほんものの聖女はどうやら僕らしいです。気付いた時には二人の皇子に完全包囲されていました
彩矢
第1話
今年初めての雪の花が舞う日だった。僕が彼と初めて出会ったのは。
空を見上げ誰かと話しをしていた。雪のように儚げで今にも消えてしまいそうで。僕が彼を守ってあげないと、寂しそうなそのうしろ姿を見たとき自然とそう思ったんだ。
「飢饉と度重なる地震からこのクレイグ王国を守るために異界から聖女さまを召喚しましたが」
「無能で不要なおまけがついてきたか」
「左様です」
「のちのち騒ぎを起こされてはまずい。地下牢にでも閉じ込めておけ」
「父上。男だから、聖女ではないから、無能で不要だから幽閉するのはあまりにも酷いです」
「子どもの癖に政に口を出すな。あやつは100年前に我が国を滅亡寸前まで追い詰めたヘルマプロディトス《両性具有》の生まれ変わりだぞ」
「子どもではありません。春になれば十五歳になります。もう大人です」
彼は異界の服を着ていた。不敬罪の濡れ衣を着せられ、手枷と足枷を嵌められ、裸足で市中を引き回されて見世物になっていた。
まったく知らない世界に突然飛連れてこられて、いらないからと突然捕まり罪人に仕立てられた。絶望、怒り、哀しみ、不安。生きる術を奪われ生きた屍のように連れ回されていると思ったけれど彼は悲観することなくただまっすぐに前を向いていた。
吸い込まれるように澄んだ漆黒の瞳。さらさらの栗色の髪。凛とした佇まい。思わず見惚れてしまうくらいきれいな人だった。
八歳も年上の人。私が彼を守ってあげないと。
一目惚れだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます