廃遊園地のピエロ
もちうさ
第1話 錆びついた観覧車
夕焼けがゆっくりと空を染めていく。
いつもなら、ここには子どもたちの笑い声や楽しそうな叫び声があふれていたはずだ。
でも今は、錆びついた観覧車が静かに風に揺れているだけ。
「今日も来ちゃったな……」
颯斗(はやと)は、いつものように廃遊園地の門をくぐった。
誰もいない遊園地は、昼間の光も届かず、少しだけ肌寒く感じた。
「彩(あや)は、ここにいるかな」
そうつぶやくと、胸の奥がキュッと痛んだ。
10年前のあの日。
観覧車の頂上で笑っていた彩。
でも、あの事故で彩はもう帰ってこない。
でも、忘れられなかった。
彩の声も、笑顔も、匂いも、全部。
颯斗はゆっくりと歩きながら、さびれたベンチに腰を下ろした。
古ぼけたぬいぐるみが風に揺れている。
「彩……」
涙がこぼれそうになった。
けど、ふいに風の中に小さな声が混じった。
「ねぇ、遊ぼう?」
振り向くと、そこには白いワンピースを着た少女が立っていた。
透き通るような肌。黒く長い髪。
「君は……?」
「彩じゃないよ」
でも、その目は、あの日の彩に似ていた。
「一緒に、遊園地で遊ぼうよ」
颯斗は戸惑いながらも、どこか胸が温かくなるのを感じた。
その日から、颯斗の孤独な日々が少しだけ変わり始めた。
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