第2話 良い音を聴くためにまずは耳掃除から


「入部してくれてありがとう。本当の本当に嬉しい!」//弾むような声で


「さっそく今日から良い音を探しに学園中を歩き回りたいと思うのだけど」


「でもその前に……」



//SE バッグの中をごそごそと探る音



「じゃ~ん。耳かき~!」


「良い音を聞くためにまずは耳の中を掃除しなくちゃ」


「と、いうわけで、はい、私の膝に頭を乗せて」



//SE パンパンと膝を叩く音



「どうして……って、キミの耳掃除をするからに決まっているでしょ」


「あー! さては私の耳かきの腕を疑っているな~? 耳掃除くらい楽勝なんだから! さっ、大人しく先輩の膝に頭を乗せなさい。部長命令です」



//SE 衣擦れの音(彼女の膝に頭を乗せる)



「……おぉぅ。男の子の頭が私の膝に乗っている……よく考えるとこれって中々……」//恥じらいながら小声で


「な、なんでもないよ! 耳かき始めるからね!」//焦り声


「覚悟しろ~」//挑発的な声



//SE 耳かき音



「くすぐったそうな顔しているね。気持ちいい?」


「ふぅん。気持ち良いんだ~。美人の先輩に膝枕してもらって羨ましいぞ~。この~」



//SE 鼻をすんすんと鳴らす



「……キミってさ。なんかいい香りするね」


「私と会うから香水でもつけてきてくれたのかな~?」


「……ぅえ!? ほ、本当にそうなの!?」


「そ、そうかそうか~。うんうん。女の子と会うために身だしなみに気を使ってくれたのはうれしいぞっ」


「……じゃ、これは大サービスね」



//SE 耳に息吹きかけ



「あはは。身体がブルって震えた。美人先輩に息吹きかけられて嬉しい? なーんて」


「って、こらぁ。こっち見るな。か、顔真っ赤で悪かったね! わ、私だってやっていて恥ずかしかったんだから!」



//SE 頬をペチペチと叩く



「ま、まったくもぉ……」


「えっ? もう一回やってほしい?」


「い、いいけど……」



//SE 頬をペチペチと叩く



「そうじゃないって? あっ! ふ~の方か! 頬を叩かれるのが好きなのかなって思っちゃった」


「ごめんって。ほら。ちゃんとやってあげるから。拗ねない、拗ねない——」



//SE チャイムの音(ちょっと早送り気味に)



「んきゃぁぁぁぁっ!! チャイムの音しゅきぃぃぃぃぃ!!」



//SE ガラガラと教室の戸が開く音



「ごめんってばぁぁ! 本当にごめんんん! するからぁ! ちゃんとお耳にふ~ってするからぁ! だからお願いだから出て行かないで~! 部活辞めないでぇぇ!」


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