祖父はハーフの特攻隊員【実話】
伊古野わらび
1:祖父は特攻隊員でハーフだった
祖父が特攻隊員だと知ったのは、祖父が亡くなった翌年のことだった。わたしがまだ小学生の頃だ。
祖父の供養のため、生前行きたがっていたある場所へ遺影だけでも連れて行ってあげたい。家族総出でその場所を訪れることになってから初めて聞かされた。
その場所は、特攻隊員の教育施設跡だった。隠しようがなくなったゆえに開示された形だった。
戦前生まれの祖父が軍人として戦争に参加していたことは、子供心ながら想像はついていた。しかし、まさか特攻隊員だったとは。予想もしなかった事実を聞かされ、当時は言葉を失った。しかも自ら志願してのことだったらしい。
結局「奇跡的なタイミング」により出撃することなく終戦を迎えたのだが、それでも衝撃はしばらく胸に残り続けた。
戦中当時のことを孫には一切語らないまま逝ってしまった祖父。だから、祖父がどんな心境で、どんな決意で特攻隊員の道を選んだのかは分からない。祖母もわたしの親も、もしかしたら知らないのではないか。自分のことをあまり話さなかったという祖父だから。
ただ大人になって改めて振り返ってみると、祖父の心境や決意が想像以上に複雑だったのではないかと今更ながら思うのだ。
祖父は特攻隊員だった。
そして、重大な事実がもう一つ。
祖父はハーフだった。日本人の父とアメリカ人の母の間に生まれたハーフだったのだ。
そのことを、わたしが知ったのはもっとずっと、ずっと後になってのことだ。
まず先に断っておく。これから書くことは、わたしがこれまでに祖母や自分の親から聞かされたことではあるが、記憶頼りのため誤った情報もあると思う。裏付けが取れていないこともある。その点はご理解いただきたい。
何しろ、祖父が特攻隊員だった話も、またそれ以上に祖父がハーフだった話は親戚内では今でも「禁句」に近い。わたしの親にも今更聞けない内容である。
ただこのまま埋もれさせてしまうのも、わたしの胸の内だけに留めて記録に残さないのも如何なるものか。そう思い、この戦後八十年という節目の年にまとめてみた次第だ。
以上の件をご理解の上、お付き合い願えれば幸いである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます