第7話「札幌奪還」

ーーー東京より北900km

 数十機に及ぶヘリコプターが隊列をなし、夕陽に照らされながら飛んでいく。アジア周辺の序列上位に、優秀な冒険者たちが集まっている。


「まもなく我々は札幌に到着する。奪還任務は日没18:00からだ。作戦A班は札幌市役所、作戦B班は北海道神宮、作戦C班が札幌丘珠空港を制圧、作戦が成功し次第、琴似川より、技術者を投入しロックダウンを解除、セキュリティシステムを警戒レベルに引き下げ復興を開始していく。」


 作戦開始まで約30分。風太郎とスグルは作戦B班のため北海道神宮にいるブレイダー幹部を討伐し、制圧する任務だ。風太郎が指を指す。


「見えてきたな…」


 スグルは北海道神宮を確認し息を整える。


「コジロウさんの教えを思い出せば…どんな敵でも勝てそう!」


 風太郎はにっこりと笑ってそうだなと言う。


ーーー北海道神宮

 開けた本殿に1人、紫電を纏う女がヘリコプターを見つめる。


 「来たわね…少し楽しめるといいのだけれど」


 ヘリコプターから冒険者たちが降下する。その音を聞き女は振り向く。最初に動いたのは冒険者たちだった。水の刃を纏う男が斬りかかる。女はそれを見てため息を吐くと紫電を自分の周りに展開し、男を感電させた。


 「少しは情報収集してから来るべきだったわね…私はブレイダー幹部第3位、紫電のニア…少しは楽しませてね?そよ風ちゃん?」


 風太郎を挑発する。

 

「お姉さん!俺もいるんだけど!」


 スグルは即座にニアの前に移動して首を斬ろうとするが、紫電の刃に妨げられる。


「私…あなたにはそこまで興味ないの!」


 するとニアはスグルにペットボトルの水を吹きかけて電流でスグルを吹っ飛ばす。


「スグルッ!」


 風太郎がスグルを気にするとニアは容赦なく攻撃する。


「よそ見なんて…だいぶ余裕あるじゃない?」


 風太郎は軽々と避け風の刃を手裏剣のように飛ばして距離を取る。


「私ね、カマイタチと戦ったことがあるの」


 ニアは風太郎の後ろをとり、語りかけるが、風太郎はそれをすぐに払う。しかし、また後ろにつかれてしまう。


「でもカマイタチあなたみたいな戦い方はしなかった」


 風太郎はぎくっとした、


「あなた、カマイタチを見たことないのね?」


 ニアは止めと言わんばかりに混乱している風太郎に突っ込む。しかし、風太郎はニヤリと笑う。


「久しぶりだよ、そこまで勘のいい奴は!」


 風太郎は次の瞬間風を体中に纏い超高速で移動してニアの背中を踏みつける。


「あなた、私を油断させるために!?」


 風太郎はその通りと冷たく言い放ち風の刃を首に振り下ろした。次の瞬間。


「大放電!!!」


 ニアが紫電を大量に放ち風太郎を感電させる。


「油断するからよ」


 ニアは手の先に雷を集め遠距離から攻撃する。


「さよなら、カマイタチ…電げk…」


 止めをさされる刹那、ニアの手の先に蒼雷が走る。


「モデルワイバーン!ブレス!!」


 スグルがブレスを放ったのだ。そのブレスはニアの電撃を相殺した。スグルの登場にニアは戸惑う。


「さっきの電流、水を使って全体に感電させたの、どんな生物でも生きていられるはずがないわ!」


 スグルの腕の包帯が剥がれる。


「俺の腕は水とか乾かしちまうんだ。それじゃぁ、次は俺と勝負と行こうぜ?モデルイエティ、アイスエッジ」


 スグルは氷の刀を作る。ニアは即座に電撃を放つ。


「重心は下げ、刀は刃を上に…斬るのではなく、いなす…壱の太刀…唐傘…」


 コジロウの教えを思い出す。


『いいか?刀ってのは横からの衝撃に弱いが縦にはめっぽう強い、その縦を最も発揮するのは敵を斬るときだ、つまり攻撃を捌くときは斬るな、刃を滑らせるようにいなすんだ!』


 ニアの電撃は刀に触れた瞬間ぐにゃりと軌道を曲げて逸れる。ニアはさらに多く素早く放つが全てずらされる。


『次に攻撃をいなしたらこっちが攻撃しなきゃ意味がない…まずはいきなり重心を落とす、すると敵はお前を一瞬見失う』


 ニアはいきなり視界から消えたスグルを探す。


「ど、どこに?!」


『そして低い重心のまま恐れず目の前に飛び出せ、一瞬で距離を詰められるぞ』


「弍の太刀…瞬斬!」


「は、はやっ!迅雷!」


 スグルの一太刀はニアの首を斬りつけたが、ギリギリのところでニアが退避、致命傷は負わせられなかった。


「ねぇ、おばさん、知ってる?」


 ニアはおばさんという言葉に眉をぴくりと動かす。


「おば、お…おば?さん?!私に?!あなた殺すわ」


 ニアは両手を合わせて紫電を溜める。


「風太郎!俺があいつに突きを入れる!その瞬間に追い風を吹かしてくれ!」


 風太郎は意識を取り戻して構える。


「わ、わかった、でも、そんなんで大丈夫なのか?!」


「これで勝てなかったら俺はでんじろう先生を恨むよ!」


 スグルはニカッと笑い突きの構えを取る。


「おばさん!氷ってのはねぇ!」


 ニアが電撃を放つ瞬間にスグルがその電撃に氷の刃を突き立てる。


「電気を通さないんだ!でもね…冷気は!電気をよく通すんだよ?!」


 追い風により冷気がニアの方向に向かい、ニアは感電して焦げる。


「そ、そんな…だ、ダイカン…さ、ま…」


 なんとかスグルたちは北海道神宮を制圧した。


「あ、あとは…他の班の成功を祈るだけだな…風太郎?」


 風太郎はダイカンという名前を聞いて焦る。


「風太郎どうした?!」


 風太郎はハッと我に帰り落ち着く。


「ダイカン…そんなまさかな…」

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