漫才6「ターミネーター」

幌井 洲野

漫才「ターミネーター」

<これは漫才台本です>

セリフの掛け合いをお楽しみください。


【ターミネーター】


二人 「どうも~ アヤミとアズサでアヤアズです~ よろしくお願いします~」

アズサ「な、アヤミ、あんたアヤミやんな」

アヤミ「うん、ウチ、アヤミやで。ほんで、アズサ、あんたアズサやんな」

アズサ「うん、ウチ、アズサや。ほんで、アズサとアヤミでアズアヤです~ よろしくお願いします~」

アヤミ「さりげに、コンビ名変えとるやんか」

アズサ「バレたか」

アヤミ「次、進むな」

アズサ「はい」

アヤミ「アズサ、あんた、好きな映画とかある?」

アズサ「エイガ? あぶると美味しいやつ?」

アヤミ「それ、エイヒレな。ボケるのもうちょっと待と」

アズサ「かんにん」

アヤミ「ほんで、好きな映画は?」

アズサ「うーん、ターミネーター、かな」

アヤミ「また、ずいぶん渋いの出したな。あぶったんか?」

アズサ「アヤミ、ターミネーターあぶるて、だいじょぶか?」

アヤミ「ちょっと甘い顔見せすぎたな。元に戻ろ。ターミネーターいうたら、シリーズもんやから、たくさんあるな。どれが好き?」

アズサ「やっぱ1やな。シュワちゃんかっこええ」

アヤミ「それな。アイル・ビー・バックとかな」

アズサ「うん、『また来る』もええけど、シュワちゃんの名前が好きや」

アヤミ「なんや、俳優さんの名前で推しとんのか」

アズサ「うん、アーノルド・シュワ…」

アヤミ「シュワ?」

アズサ「うん、アーノルド・シュワ…」

アヤミ「フルネーム言えとらんやん」

アズサ「うん、ウチ、長い名前苦手やねん」

アヤミ「ま、アーノルド・シュワルツェネッガーて、長いけどな」

アズサ「わぁ、アヤミ、フルネーム言えるんか。さすがやな」

アヤミ「そやけど、アズサやて編集者やから、作家さんの名前なんか、長いの言えるやろ、武者小路?」

アズサ「武者小路、さね…」

アヤミ「さね? 実篤て出てきいひん?」

アズサ「無理。ウチ、自分のフルネームがカワズルアズサとか、アヤミのフルネームがカツベアヤミでホンマよかったわ」

アヤミ「なんや、アズサの限界は七文字か」

アズサ「うん、そんくらいやな。例えば、アヤミのフルネームが、勝部山背守従五位下源朝臣女あやみ、とかやったら、絶対覚えられへん」

アヤミ「なに? カツベヤマシロノカミ…?」

アズサ「うん、カツベ ヤマシロノカミ ジュゴイノゲ ミナモトノアソンノ ムスメ アヤミ」

アヤミ「もっぺんええかな」

アズサ「カツベ ヤマシロノカミ ジュゴイノゲ ミナモトノアソンノ ムスメ アヤミ」

アヤミ「なんで、シュワちゃんとか武者小路が言えへんのに、それは言えるん?」

アズサ「簡単や。ウチ、いっぺんには七文字が限界やから、五七五七七で覚えとるん」

アヤミ「それ、みそひともじの短歌いうこと?」

アズサ「うん、やから、カツベヤマ、シロノカミジュ、ゴイノゲミ、ナモトノアソン、ノムスメアヤミ」

アヤミ「うわぁ、うまいこと三十一文字に収まっとるやんか。て、そんな適当な名前作って覚えるヒマあったら、アーノルド・シュワルツェネッガーとか武者小路実篤とかの名前覚えとき。あんた編集者やろ?」

アズサ「編集と記憶はまた別もんなんよ」

アヤミ「いきなり、そこ来るか。確かにな、心理学でも、人間、いっぺんに覚えられるんは五個とか七個とか、そんぐらいて言われるからな。長いものは、心理学でチャンクいうて、それをつないで覚えてはるらしいし」

アズサ「そやろ? ウチ、それで覚えとるん。シュワちゃんとか実篤とか、それにならんのよ」

アヤミ「なんや、それ、単に、覚える気ぃがないだけちゃうの?」

アズサ「それな。人間、『好きこそものの上手なれ』いうて、好きなもんはいくらでも覚えられるねん」

アヤミ「あ、それも、スキコソモノノ ジョウズナレ、で七五調になっとるな」

アズサ「そやからね ウチはやっぱり アヤミ好き きらいなものは よう知らんのよ」

アヤミ「それまで五七五七七にせんでよろしい」

アズサ「てへと言う あいきょう使こて どこまでも 好かれてしまう ウチのかわいさ」

アヤミ「もう来んでええわ」 

二人 「どうも失礼しました~」

(了)

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漫才6「ターミネーター」 幌井 洲野 @horoi_suno

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