第7話 サダノブ 選択の自由

「ところでアーチャン。」

「なぁ~に?ノブ君。」

 路上の往来が見えるカフェテラスで、サンドイッチを頬張る僕とアカリ。


「なんで、デート相手が僕なわけ?」

「話し易い異性だからだけど?」

 パラソルの下、こぢんまりとしたテーブルに向かい合って座り、恋バナは続く。


「そんな、安直な…」

「え~!とっても大事な事って、友達が言ってたよ。」

 どういう尺度で話が展開しているんだ、お友達。


「でも、アーチャンは気立ても良くって、話し上手だから、引く手も数多ありそうだけどなぁ。」

「フィーリングよ、フィーリング。

 ノブ君と私って、何故か波長が合うのよね。」

 抽象的アバウトな話が広がって来たよぉ。


「にしても、その美貌は……って、痛いよ!」

 美貌のところで、思いっきりグーパンチがアカリから僕へ飛んでくる。

「もぉ~!『美貌』とか言わないで!恥ずかしいんだから!」

 両手を頬に当て、本気で困ったような顔をするアカリ。


 道中聴いたところによれば、今回のデート作戦の手引は母親による仕業らしい。

 衣装から髪のセット、お化粧に至るまで、徹底的なコーディネートが行われた…との事だった。

 お母様が奮発されたのは、彼女の様子を見れば一目瞭然!

 それを差し引いても、彼女の美人度合いは半端じゃない…贔屓目に見るも何も、その何気ない仕草にさえ、ドキッ!としてしまうんだ、

 これを『美貌』以外の言葉で表現できる語彙力が僕には無いね。


「今日のアーチャンは、綺麗で可愛くて、僕には勿体ないくらいの美人さんだよ。

 それが事実であり全てさ。」

 自分が発している言葉とはいえ、まぁ〜、クッサイ台詞の出ること出ること。


「じゃ、じゃあ、にだったらノブ君は惚れてくれる?」

 さぁ、とんでもない直球ストレートが飛んで来たぞぉ!

も何も、アーチャンはいつでも僕の大親友だよ!」

 よし、たぶん大丈夫なはず…


 しかし、アカリさんは上目遣いで懇願するように畳みかける。


「あのね、親友より…もう一歩踏み出したいの。」

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