語らせてください!長岡先生

橙こあら

1.『帰ってください!阿久津さん』を読んだ動機

 私は、長岡太一先生作『帰ってください!阿久津さん』(以下『阿久津さん』)を連載第1話から読み続けている。私が『阿久津さん』を読もうとした動機は、怖いもの見たさも混じっていた。

 第1話を読む前に、まずは作品の内容を確かめた私。確認後、私は「この大山くんって男子、大丈夫なのか……?」と心配になった。高校生の身で、一人暮らしをしているというだけで大変だというのに、まさかのヤンキー女子に家を溜まり場とされてしまうのだ。第1話の時点で大山くんは、この阿久津リコという金髪の不良に、どんなことをされているのか。大山くんの安否を確認するために、私は『阿久津さん』を読み始めた。

 その結果、杞憂であった。確かに阿久津さんはヤンキーだが「これは………どっちもどっちだな。お互い様の関係となるだろう」と思えたのである。なぜかというと、第1話ラストで大山くんが実はスケベだということが判明したからだ。

 何だか安心した私は、続けて第2話も拝読した。阿久津さんに早速パシリとして扱われている大山くんだが、この後すぐに阿久津さんの意外な表情を見ることができた。大山くんが持っている複数のAVを取り出し、彼をイジり始めた阿久津さんだったが、いざ映像を見ると赤面してしまったのである。この予想外な展開によって私は、より阿久津さんに興味を持った。まさかのピュアな反応を見た私は、もっと阿久津さんのことを知りたくなったのだった。

 第1話と第2話は、実は2019年7月29日に『ヤングエースUP』で同時公開されている。この手法と話の内容について「長岡先生お上手だな……」と私は感心してしまった。大山くんの下心と阿久津さんの純粋な面を確認したことで、ヤンキーに抵抗のある人や、いじめの描写が苦手な人も作品の読者になったと思われるからだ。大人しい男子がヤンキーの女子から、一方的に意地悪をされるストーリーではないので、たくさんの読者が獲得できたのだろう。第3話以降も続けて読んだが、不愉快に感じる話は全くなかった。

 そして今、私は単行本全巻を購読するほどの『阿久津さん』ファンとなっている。また『阿久津さん』が始まってから月曜日が好きになった(最新話が『ヤングエースUP』で更新されるのは月曜日)。『阿久津さん』のおかげで憂鬱な月曜日が、楽しみな月曜日へと変わった読者は多いと思われる。これからも楽しみな作品だ。

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