第1章 第1話
「えっ俺が部長?」
中学のサッカー部の部室で集まった部員たちの多数決で部長に選ばれた一誠が驚いて声を上げた。
「お前なら出来るよ!」
「適任だよ!一誠なら」
口々に部員から言われるが、まさか自分が部長に選ばれるなんて思っていなかったから驚きを隠せない。ただ、そう言ってくれる部員たちはいい奴らだなぁとつくづく思う。にこにこと一誠を見つめて同意の言葉を待っている部員たちの顔を見ると断るのも気が引けたけど、自分はそんな器ではないと思っていたので断ろうと口を開きかけた瞬間だった。
「それに一誠はサッカー推薦で高校行く気なんだろ? 部長やっておいて損はないぞ」
顧問の高橋先生の意見に、一誠は開けた口をそのまま閉じて断ろうとした言葉を飲み込んだ。
「なるほど……」
その考えはなかった。そうか、高校の推薦に有利なのか……。でもそれってずるくない? サッカーの実力関係あるのかな? と、悶々と考える一誠を見て隣に座っていた親友の河合がゆっくり立ち上がり、一誠の肩に手を乗せてにかっと笑う。
「決まりだな!」
そのひと言で部室はワッと盛り上がる。その様子に一誠がペコリと頭を下げたので更に部室は大盛り上がりし、同級生も後輩も口々にサッカー部を任せたと一誠に言う。一誠はもう断れないと観念してただ笑うしかないが、まぁいいか。と結論付けて部活を終えた。
*
「え? そうなの?」
一誠の後輩である佐々木は友達の太田の言葉を聞き返えす。二人きりの部室で太田と佐々木は色々と情報交換をしていた時に一誠の話に自然となっていっていた。
「東島先輩ってジェファのジュニアで活躍してたんだってよ」
二人はサッカーボールを磨きながら話をしていた。太田の当番だったので佐々木はそんな太田の作業を手伝っていた。
「今は?」
「なんか辞めちゃったらしいよ」
「へぇもったいないな」
「そのままサッカー続けてるんだったら辞めなければよかったのにね」
「ジェファってJリーグ始まった時からあるチームなんだしそのままいけばJリーガーだったのにな」
「そうだよなー」
佐々木には一誠がどうしてジェファを辞めてしまったのか分からなかったが、何故一誠がサッカーの実力があるのかが分かり、納得してボールを綺麗にしていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます