JKちゃんとアラサー女子
豆柴大好きマン
第1話 春は別れの季節
夕暮れの街を、今日も一人歩きながら、今日は自分の決心を両親に伝えなくてはと、来年は高校生になるが、地元の高校ではなくて、県外の高校に行きたいと、家を出たいとしっかりと伝えなくては、このままずるずると話さずにいると、間に合わなくなってしまう。
季節は夏から秋へと変わり始めている。
普通なら、既に進学先の希望を提出しているのだが、私は決心が中々つかずに、担任にお願いをして伸ばしていたのだ。
沈みゆく太陽を眺めながら、
両親と二歳年上の姉の
二歳年下の妹の
私にも優しいが、どこかよそよそしい感じを受ける。
両親、特に父親は私とどう接していいのかわからないと言うのが、はっきりとわかる。
ここ数年は、殆ど会話をした記憶がない。母親とは、多少は会話するが、その内容は、殆どが学校に関係する事であり、それ以外は、もう何年もまともに会話した記憶が無い。
姉や妹の様に、自分の意見をはっきりと言える訳でもなく、勉強も運動も、中の上である、運動は中の下かもしれない。勉強も運動も、そして人付き合いもそつなくこなしてしまう姉や妹とは、本当に同じ両親から生まれたの? と言う位に違う。
外見もそうだ。決してブサイクとは言わないが、美人の姉に可愛い妹に比べれば、見劣りしてしまうのは、間違いのない事実である。
別に姉妹と違い過ぎる事が、家を出ようと思った大きな理由ではない。
こんな私にも優しくしてくれる姉。多少よそよそしいとは言え、変わらずに接してくれる妹。そんな二人の優しさにいつまでも甘えていてはいけない、迷惑を掛けてはいけないと思い始めたからだ。
中学三年になったばかりの時に、自分はこのままで本当にいいの? と思い始めてからずっと考えていた。
考えてから、自分なりに準備を進めてきた。県外の女子高を探した。理由は男子が嫌いな訳ではないが、苦手意識がある為。
高校生になったら、アルバイトも始めて両親の負担を減らしたいと、その時に募集している可能性は低いが、自分でも出来そうなアルバイトを一覧にもした。
希望している女子高から、あまり遠くない場所に部屋を借りられたらと、部屋の候補も絞り込んだ。あとは両親に話を通すだけなのだが、自分の気持ちを素直に伝えられないと言う性格が災いして、半年経った今でも言えずにいた。
このままではいけないと思いながら、ずっと言えなくて気付けば、半年経って季節は秋になろうとしていた。今日こそは言うぞ!と決意を固めて、家へと歩みを進めようとしたときに「奏ちゃん、今帰りなの? 一緒に帰ろう」と姉の朱里に声を掛けられた。
「うん」とか細く答える。
朱里は、奏が何か悩んでいる事には気付いていたが、奏から話してくれるまでは待とうと、優しく奏を見守っていたのだ。
家までの、短い時間。奏は何も言えずにいると、朱里から昔はもっと話したよねと言われて、そうだったかな? と奏はとぼけるが、奏本人が一番わかっていた。
小学生の時は、もっと姉と何でも話していた。好きなアニメの漫画の、学校の話も何でも話していた。
いつからだろう?
大好きな姉妹とすら、まともに話せなくなったのは、自分の気持ちを素直に伝えられなくなったのは、考えても答えは出ない。もう何度も何度も自問自答した。
それでも答えは出なかった。
お互いに大人になったから、そんな年齢でもない。ましてや妹は、まだ中学一年生だ。まだまだ子供と言う年齢である。姉だって、高校二年生でまだまだ大人と言う年齢ではない。
姉は美人だから、恋人位いるのかもしれないし、自分が経験してない大人な世界を、既に経験しているのかもしれないが、それでも、まだお互いに学生であって、大人には程遠い。
少し困った様な顔で、それでも答えを見つけようと、姉の自分にすら、気を遣おうとする妹を見ていると、朱里は胸が苦しくなってしまう。
お互いに言葉が見つからずに俯いていると、家に着いてしまった。
二人でリビングに行くと、奏は夕食の時に話したい事があるからと伝えると、自分の部屋に戻って行った。
そんな奏の姿に、奏は何か重大な話をすると見抜いていたのは、姉の朱里だけで、その場にいた母親も花梨も進学する高校をやっと決めたのかな程度にしか考えていなかった。
自室で着替えながら、話す内容を自分なりに纏める。家族全員の前で、自分の意見を言うなんていつぶりなのか、もう自分の記憶の中からは抜け落ちてしまっている。そこまでの昔ではないはずなのに、鏡を見ながら、大丈夫と何度も自分を鼓舞する。
鼓舞していないと、気持ちが折れてしまって、またずるずると月日だけが過ぎて、結局は地元の高校に通う事になってしまう。成績優秀な姉と同じ高校は、天地がひっくり返っても無理だ。県内一の進学校に通ってる姉とは、雲泥の差である事は自分が一番わかっているが、地元の女子高は、姉が通う進学校しかないので、実家に留まれば、嫌でも共学の高校に通う羽目になってしまう。 それだけは嫌だった。
弱い自分を変えたいと、自分で決意したのに夕食の時間が近づくと、心臓がバクバクと煩い位に高鳴ってしまう。
軽く過呼吸を起こしていたのでは? と言う位に酸素が足りてない感じがして、軽くふらついてしまうが、こんな事で負けてたまるかと、一度大きく深呼吸して気合を入れ直してから、自室を出るとリビングに向かった。
リビングに入って来た奏を見て、勘の良い朱里だけが、もしかしたらと思いながら、奏を見つめていた。
母親も父親も、そして花梨も奏の決意には気付かずに、普通に夕食を食べていた。
椅子に座ると、母親がご飯をよそってくれたが、奏は箸を持つこともせずに、一度深呼吸をすると話し始めた。
「私、県外の高校に入学して、この家を出て行こうと思っています」
その言葉に、姉の朱里だけがやっぱりと目を伏せる。朱里以外の家族は、突然の告白に驚きの表情をしたまま固まっている。
しばしの沈黙の後に、朱里が口を開いた。
「奏ちゃん、本気なの? どうして県内の高校じゃなくて県外なの? 寮に入るの?」
朱里の言葉に奏は、朱里から視線を移さずに自分の考えを気持ちをゆっくりと話した。
このまま優しい姉や妹に甘えていてはいけないと、自分を変える為には、家族の元を離れるのが一番であると決意した事、高校とアパートの目星をつけていること、高校に入学したら、アルバイトをして、なるべく経済的な負担を掛けない様にする事、そして高校はしっかりと卒業する事を、ゆっくりと、しかしあの大人しくて、自分の意見を殆ど言った事が無い奏なのかと、家族全員が思う程にはっきりと言い切った。
「お姉ちゃん、本気なの? 私達が嫌いになったの?」
妹の花梨が、涙目で奏に聞いた。
そんな妹を見ていると、心が痛むが決心したのだ。誰の為でもなくて、自分の為に県外の高校を受験する事を、親元を離れて一人でやって行く事を、だからここで流されてはいけないと奏は違うよと首を振りながら、自分の為だと、このままでは、自分の意見もまともに言えない、自分に自信を全く持てない女性になってしまう。そんな将来は嫌だ! だから考えて、必死に考えて答えを出したのだ。
何も言えない両親に代わって朱里が奏に、本当に一人でやっていけるのかと、自分も経験はないが一人暮らしは、奏が思っている以上に大変であると、学校に通って、バイトをするならバイトが終わった後に、帰ってご飯を作って、休みには掃除に洗濯もある。
「買い物も自分でするのよ。お米とか持てるの?」
正直余裕ですとは言えない。情けないが、腕力に自信はない。ないが、ここで引き下がる訳にはいかない。
「自転車あるし、慣れるまでは辛くても自分で決めたから、私は引き下がらない」
「そう、正直反対だけど、後はお母さんとお父さんが判断するし」
朱里は両親に、後は任せるよと目配せすると、嫌だと泣いている花梨の頭を撫でながら、お姉ちゃんが決めた事だからねと慰めている。朱里も本当は反対だが、妹が必死に考えて辿り着いた答えなら、無碍に扱う訳にはいかないと泣きたいのを我慢して、末の妹の頭を撫でながら、奏と両親の会話を静かに聞いていた。
奏と両親の話は、平行線のまま一時間近く経っていたので、朱里が一度ご飯食べてからにしようと、話を遮る形で提案して、冷めてしまったご飯を温め直してくれたので、奏は朱里にお礼を言うとご飯を食べ始めたので、全員がご飯を食べ始めて、小休止となった。
食後に、話し合いは再開された。
両親としては、せめて高校を卒業するまではと、しかし奏はそれでは遅いのだと。社会に出てからの三年間と学生時代の三年間の重みの違いについて、上手く説明出来ないが、あと三年も今のまま変わらずに過ごしたら、きっと自分は変われないと、一生優しい姉と妹に甘えて生きて行く、そんな未来しか見えなかった。だから、必死に考えて答えを出したのだ。
両親や姉が言う事も十二分に理解出来る。一人暮らしが簡単でも楽じゃない事も、そして誰も知り合いが居ない街で暮らす事の大変さも奏なりに理解していた。
知り合いが居ないと言う点に関しては問題なかった。今も友達は一人も居ないし、スマホのアドレス帳に入ってるのは、家族しかいないのだから、家事も何とかなるだろう。料理も一応出来るし、掃除も洗濯も問題なかった。
だから必死にお願いした。
認められないなら、高校には進学せずに就職してでも県外に出ると、奏は伝えた、
ああ~奏ちゃんは本気なんだと、朱里は奏の気持ちを尊重してあげようと、口を開いた。
「もう認めてあげようよ。私だって寂しいけど、奏ちゃんは本気だし、初めてじゃない、こんなに自分の気持ちをはっきり口に出したの」
その言葉に両親も花梨も諦めたのか、もう何も言わなかった。奏は朱里に感謝しながら、朱里に頭を下げた。そんな妹を朱里は優しく抱きしめた。
朱里の口添えのお陰で、高校は県外の高校に進学する事と、アパートでの一人暮らしを認めてもらった奏は、用意していた資料を部屋から取ってくると、テーブルに広げて、全員に説明を始めた。
県外と言っても、隣の県で電車で一時間ちょいの距離である。さすがに、電車で何時間も掛かる場所は選べなかった。
高校は、現在の学力で合格出来そうな女子高をいくつか選んでいた。その中で、将来を見据えて自分が通いたいと思う学部があるかを確認したうえで、最終的に決めようと考えていたのだが正直、将来何になりたいのか、奏自身わかっていなかった。
今の現状を変えたい、それしか頭になかったのだ。花梨にお姉ちゃんの将来の夢って? と聞かれて答えられずに、わからないと答えてしまった。
お姉ちゃんらしいねと、花梨が笑う。そんな姿を見ながら、こんな風景も、あと数か月なんだよねと、自分で決めた事とは言えやっぱり寂しい気持ちが溢れるが、そこはグッと飲み込んで、将来の事もしっかり考えないといけないなと思いながら、何処の高校を本命にするか、朱里のアドバイスを聞きながら、絞っていく。もう悠長に考えてる時間は無かった。
最終的に総合学科のある高校に絞った。この高校は、一年時は総合学科でも、二年から進学科や芸術系の学科に移る事も可能である事が、最終的に決めた理由だった。
アパートは、今決めても埋まる可能性があると、入学が決まってから決める事にした。
アルバイトに関しては、無理しない程度ならいいと許可をもらって、話し合いは終わった。
自室に戻ってからは、緊張と疲れからか、ベッドに倒れこむと、そのまま眠りについた。そんな奏の姿を、誰よりも奏を心配して見守ってきた朱里が、寂しそうに見つめていた。
「奏ちゃんが決めた事だもんね」
そう呟くと、これからも出来る事はしようと、変わらずに見守っていこうと決めて、朱里は自室へと戻って行った。
両親の了承を得てからの日々は、正直忙しかった。先ずは体力作りをしないとねと、花梨に言われて毎朝ジョギングとストレッチに、軽い筋トレを始めた。
学校が終わると、朱里と一緒にスーパーに買い物だ。現在の物価を知る事は、一人暮らしをする上では欠かせないと言われて、二人で、日々色々なスーパーに通って、野菜からお肉から飲み物の値段まで調べた。
週末には、父親に車を出してもらって引越す予定の近隣のスーパーにまで足を延ばしたり、駅周辺にどんなお店があるのか、女の子一人で歩くには、危険な道はないかまで、朱里と花梨の協力を得て(二人が言い出したのだが)調べた。
一番大変だったのは、受験勉強だった。入学希望の高校に今の学力では、正直ぎりぎりですねと三者面談で、あっさりと担任の中年禿親父(母親が言っていた)から言われてしまったのだ。出来るなら第一志望の高校に入学したいと、朱里に頼んで勉強を教えてもらった。
朱里だって、大学進学を希望しており、いくら学年一番の成績を誇っていても、大学受験に向けての勉強を始めているのに申し訳ないと思いながらも、頭を下げると朱里は嬉しそうに良いよと快諾してくれた。
どうしてこんなに優しいのかと思いながらも、その優しさに感謝して、必死に勉強を頑張った。花梨も自分の勉強をしながら、お茶を運んでくれたりと、本当に協力してくれた。
こんなにも、優しくて自分に協力してくれる姉や妹と、どうしてもっと話さなかったのかと、どうしてもっとお出掛けをしなかったのかと、今更ながらに思ってしまう。
気付いたら涙が零れていた。
「奏ちゃん、どうしたの?」
「お姉ちゃん、お腹痛いの?」
二人が心配してくれるが、涙は止まらなかった。涙でぐしゃぐしゃの顔で、でもきっと笑顔で答えていたと思う。
「大丈夫。もっと二人と話したり、お出掛けすれば良かったなって」
今更、二人が自分をどれだけ想ってくれていたのかに気付いたのだ。朱里はいつも優しくて、遠くから自分を見守りながらも、奏が困っていると、いつも優しく救いの手を差し伸べてくれた。今回も、朱里が認めてあげようよと言ってくれなければ、きっと両親は認めてくれなかった。
花梨だって、どう話せばいいのかわからないと言った感じではあったが、いつも自分の事を気にしてくれていた。誕生日には、いつも満面の笑みで祝ってくれて、私のお古の洋服をお姉ちゃんもうサイズ合わないよねと言っては、持っていって嬉しそうに着ていた。
そんな二人の優しさに気付いていたのに、自分はこんな人間だからと、お姉ちゃんや花梨とは出来が違うからと、見た目も中身も二人とは比べ物にならない程に劣っているからと、勝手に決めつけて距離を置いていた。
確かに見た目も中身も学力も運動神経も、二人には遠く及ばない。女子高なのにファンクラブがある姉にも、男女共に可愛いと言って、校内一の可愛らしさと言われている花梨。そんな二人に、せいぜい平均レベルと言われるのがやっとの自分が敵うはずがない事は重々わかっていた。
学力だって、常に学年一番の姉。学年上位の妹。私は、頑張っても学年の真ん中で、運動も普通かそれ以下だった。
勉強も運動も外見も敵わない。いつの間にか、勝手に姉と妹は自分とは住む世界が違うのだと、そう思い込んでいた。思い込まないと耐えられなかったのかもしれない。
そう思い込む内に、元々の性格もあってか、姉や妹とも距離を置くようになって、自分の気持ちを考えを言えなくなってしまった。
家を出て一人でやって行きたいと話した日に、お姉ちゃんと帰って来た時に、昔はもっと色々話したよねとそう言ったお姉ちゃんの顔はいつものお姉ちゃんだったけど、きっとそうなってしまった事が寂しくて、でも自分に心配を掛けない様に何でもないよと、そんな顔をしてくれたのかと思うと、本当に申し訳なくて涙が止まらない。
花梨とも、もっと仲良くすれば良かった。二歳年下の妹は、明るくて元気いっぱいで、誰からも好かれる愛される性格の女の子。自分の考えもしっかりと言える子で、姉と一緒で勉強も出来て運動も出来た。姉は美人だが、花梨は可愛らしい女の子と言うのが、適した表現だと思う。
小さい時は、いつも私や姉の後ろをついて来る女の子だったが、小学校に上がると友達と遊ぶことが増えて、私が中学校に上がる頃には、私は花梨とどう付き合えばいいのかわからなくなって、花梨とも距離を置き始めてしまった。
そんな私を見て、花梨も以前程、私と話さなくなってしまった。話さないのではなくて、きっと何を話せばお姉ちゃんが、微笑んでくれるのかな? 花梨の事だからきっとそんな事を考えていたのかもしれない。私はそんな妹の優しさにすら気付かずに何年も過ごして、妹に寂しい思いをさせてしまった。そのことが申し訳なくて、そんな自分が情けなくて涙が止まらなかった。
私が泣き止むタイミングを見計らって、朱里が三人分の飲み物を持ってくると、どうしたの? と優しく聞いてくれる。花梨は急に泣き出した私の事を心配そうに、こちらを見つめている。
私は、自分の思っている事を、二人への謝罪を述べると、花梨は笑顔でやっと気づいたのと、本当に鈍いんだからと、ケラケラと笑って、朱里は優しい表情を崩さずに、やっとまたこうやって奏ちゃんと普通に話せて嬉しいよと、目を細めながら喜んでくれた。そんな二人を見ながら、姉妹がいてくれて本当に良かったと奏は二人に感謝した。
高校受験の合格発表の日。
朝から奏は落ち着かない気持ちを無理矢理に落ち着かせようとしていた。
あれだけ頑張ったのだから、お姉ちゃんにもあれだけ協力してもらって、大丈夫だよと太鼓判をもらったのだから、合格していると信じている。信じてはいるが、合格通知が届くまでは安心出来ない。
この気持ちは、受験を経験した事がある人なら、皆わかってくれるよねと、奏は誰に話しているのと言いたくなる位の精神状態で、まだかまだかと窓にへばりついて、郵便屋さんが合格通知を配達してくるのを待っていた。
そんな娘の姿を見ながら、こんな時に大丈夫よと声を掛けられない事が、もどかしくて情けなくて、母親は溜息を吐くが、そんな母親の溜息にも気付かない程に、奏は真剣に外を郵便受けを見つめていた。
郵便屋さんが、手紙を入れたのを確認すると、奏はダッシュで郵便ポストに向かって、宛名を確認すると、逸る気持ちを抑えて自室に戻ると慎重に、封を切る。
ドキドキしながら、手紙を開くと合格の二文字が、その場にへたり込みながら、軽くガッツポーズをすると、朱里と花梨に合格しましたとメールしてから、母親にも合格を伝えた。
ささやかな合格祝いを終えると、候補からアパートを決めて引っ越しの準備と、瞬く間に月日は流れていった。
引っ越し前日に、パーティーを開いてくれたが、奏の瞳に涙はなかった。これからが、本番であり大変なのを奏も理解していたから、もう泣かないと強くなって、立派な女性になって、少しでも姉や妹に近づきたいと、そう心に決めたから、将来の自分がどんな職業に就いているのか、どんな高校生活を送っているのか、全くと言って想像出来ないけど、日々努力して、姉と妹に心配を掛けない人間になりたい。
出発当日。
朱里は笑顔で、花梨は目に涙を浮かべて、両親は戸惑った顔をしながら見送ってくれた。
電車に揺られながら、これからの生活を一人での生活を考えると不安を覚えるが、不安以上に自分を変えたい、変わるんだと言う気持ちの方が強かった。
離れて行く街並みを、十五年過ごした街並み見つめながら、さようなら弱い私と、奏は呟いた。
その瞳には、不安ではなくて希望が輝いていた。
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