彼女に浮気されてフラれた夜なのに、俺を慕う職場の後輩が傷心させてくれない

三月菫@リストラダンジョン2巻12/1発

第1話 金曜日の残業中

//SE カチャカチャ…カチャカチャ…一定のテンポでキーボードを叩く音

//SE エアコンの低い唸り音


「うーん、疲れたぁー!」


//SE 隣の席に座る後輩が椅子を引く音


「先輩、部長に頼まれてた資料、なんとか仕上がりましたー!」


「先輩の方はどうですか?」


「よかったです! これで今日のところは一段落ですね。おつかれさまでしたー!」


「え……いやいやいや、そんなかしこまってお礼を言わないでくださいよっ」


「こんなの一人でやったら夜までかかっちゃいますし。それに部長はいっつも定時間際に仕事を押し付けてくるし……後輩として、手伝うのは当然です」


「……え? 先輩なんで知ってるんですか? 今日、同期飲みがあったって……」


「あ、そうなんですね。でも、気にしないでください! 飲み会よりも、先輩のお手伝いのほうが優先ですっ!」


「それで先輩………このあとって……予定とか、あります? もしよかったら……一緒に、一週間の、ささやかな打ち上げでも……なーんて」//もじもじと


「……え? 彼女さんと、食事……?」


「……っ」


「…………それじゃ、余計に早く帰らないとですね。後片付けは私がしておきますから、先輩は早く行ってあげてください」//露骨に声を落としながら


「……ははっ、私も今から飲み会に合流しよっかな……」//独り言のように


//SE ガサガサとデスクに散らばった資料を片付ける音。


//SE スマホが震える音。


「先輩、スマホ鳴ってますよー、彼女さんからじゃないですかー?」//すねた感じ


//SE デスクから離れる足音。(足早に

//SE 電話に対応する音。

//SE 電話を終えて、デスクに戻る足音(足取り重く


「先輩……? どうしたんですか? なんか顔が……」//戸惑い


「……え? フラれた……?」


「いつも仕事で忙しくて……ずっと寂しかった、と……」


「……え、しかも……内緒で付き合ってる人がいたんですか……?」


「えっと……あー…………そのー……」


「せ、先輩!? な、泣かないでくださいよ!?」


「ハンカチ! どうぞ! とりあえず涙を拭いてください!」


「……大丈夫ですか? ちょっとは落ち着きました?」


「先輩……その……」//なんて声をかければいいか戸惑いつつ


「……私だったら、絶対に、先輩を泣かせることなんかしないのにな」//ボソッと呟く


「うん! 決めた!」//決心したように


「先輩! 飲みにいきましょ! 私、話聞きますから!」//一気に近づいて


「今夜は、私が先輩の彼女の代わりです! とことん付き合いますよ!」


「いきましょう!」


「ほらほら! ちゃんと歩いてくださいっ!」


//SE 遠ざかる二人の足音


◇◆◇◆◇◇◆◇◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





お読みいただきありがとうございます!


本作は第4回『G’sこえけん』音声化短編コンテスト参加作品になります。

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