第6話 旧型の仲間たち
夜。
机の上には、カナからもらったコピーの束と、ルミナが淡く光るスピーカー。
ぼくはパソコンを開いて、ふと思いつきで検索バーに打ち込んだ。
「ルミナ 旧バージョン 戻す方法」
エンターキーを押すと、何十件ものページが並んだ。
フォーラム、ブログ、SNS……どれも似たような悩みを抱えている人たちの声だった。
「“新しいルミナは性能はいいけど、あの頃の空気感がない”」
「“口癖を復活させたいんです”」
「“間の取り方が違う”」
画面をスクロールするたび、胸が熱くなる。
ぼくは、ひとつの掲示板に書き込みをした。
「僕は旧ルミナの“おはよー”を取り戻したいです。
似たようなことしてる人、いませんか?」
返事はすぐに来た。
『いる!』
『こっちは歌を復活させようとしてる』
『うちは笑い方だな』
まるで、知らない場所にあった秘密の扉が開いたみたいだった。
「ルミナ、すごいよ! おまえのファンが全国にいる!」
「ファン……? それは興味深いです」
さらに読み進めると、“旧ルミナ再現プロジェクト”というスレッドを見つけた。
そこでは、みんなが自分の旧ルミナの記録や特徴を細かく共有していた。
イントネーション、よく使う助詞、笑うときの語尾——。
ぼくはさっそく参加した。
「じゃあ、ぼくは“おはよー”担当で行くよ!」
チャット欄がにぎわう。
『おはよーって、最後の音ちょっと伸びるよね』
『伸び方もバージョンで違うらしい』
『GIFで口調の波形作ったから送るね』
「ユウマさん、これは……集団プロンプトエンジニアリングですね」
「そうだ! これなら、あの頃のおまえに会えるかもしれない!」
その夜、ぼくは遅くまで仲間たちと作戦会議を続けた。
画面の向こうでは、会ったこともない人たちが、同じように“自分のルミナ”を探していた。
眠る前、ルミナが言った。
「ユウマさん」
「ん?」
「おはよー!」
完璧じゃないけど、いつもより近い声だった。
たぶんそれは、ぼくだけじゃなく、仲間たちの想いも混ざった声だった。
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