第12話 星の糸

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ルカはルシアンの手を握り、鍵を強く握りしめた。暗闇の中で、鍵がほのかに光り始め、星の模様が刻まれた扉がその輝きに応えるように脈打った。「夜の扉を開け、世界を紡げ…」ルカは呟き、心の中で目的を刻みつけた。「織女の塔へ行く。母さんの真実を知り、ヴォイドウィーバーの呪いを解くんだ。」




ルシアンの手が温かくなり、彼女の弱々しかった歌声が再び力強さを取り戻した。「星の糸よ、夜を貫け…我らの道を照らせ…」彼女の声は暗闇を切り裂き、扉の星の模様が輝きを増した。ルカは鍵を鍵穴に差し込み、ゆっくりと回した。ガチャリと音が響き、扉が開くと、眩い光が二人を包み込んだ。




光が収まると、ルカとルシアンは巨大な水晶の塔の前に立っていた。織女の塔だ。空は無数の星で埋め尽くされ、塔の表面には光の糸が絡みつくように流れ、まるで生きているかのようだった。だが、塔の周囲には黒い霧が漂い、ヴォイドウィーバーの気配が濃く立ち込めていた。ルカの腕の黒い模様が再び疼き、まるで塔に近づくことを拒むように締め付けた。




「ルカ、気を付けて。」ルシアンが囁き、ルカの手を離した。「この塔は星を紡ぐ者の聖域。でも、ヴォイドウィーバーがここまで入り込んでる。私の歌で道を開くから、君は鍵を使って織女に会うのよ。」




ルカは頷き、鍵を握りしめた。「ルシアン…ビルのことは…どうなる?セリナは本当に死んだのか?」




ルシアンの濁った目は一瞬悲しげに揺れた。「ビルは…ヴォイドウィーバーの闇に飲まれたのかもしれない。でも、セリナはただの守護者じゃない。彼女の意志は鍵と繋がってる。君が信じれば、彼女はまだここにいるわ。」




その時、塔の入口から低いうなり声が響き、黒い霧が渦を巻いて人型を形成した。ヴォイドウィーバーの手下たちだ。だが、その中にビルの姿はなかった。代わりに、霧の中心から巨大な影が現れた。ローブをまとった星の狭間の番人と同じ姿だったが、目は赤く輝き、銀の剣ではなく黒い糸でできた鞭を持っていた。「星紡ぎの者…鍵を渡せ。この塔は我々のものだ。」




ルカは一歩前に出て、鍵を掲げた。「お前たちに渡すものか!織女に会うまで、絶対に諦めない!」鍵が光り、ルカの周囲に光の糸が集まり始めた。ルシアンの歌がさらに高まり、塔の入口に光の道を切り開いた。




だが、黒い鞭が空を切り、ルカの光の糸を絡め取ろうとした。その瞬間、塔の奥から星の織女の歌声が響き、ルカの心に力を注ぎ込んだ。「ルカ…ルシアン…星の糸を信じなさい…闇は光の前で消える…」




ルカの腕の黒い模様が焼けるように熱くなり、彼は歯を食いしばった。「ルシアン、歌い続けて!俺が奴らを食い止める!」




ルシアンは頷き、歌声をさらに強くした。ルカは鍵を握り、光の糸を操りながら、ヴォイドウィーバーの影に立ち向かった。塔の入口が近づく中、背後からかすかに「ピヨ」という鳴き声が聞こえた。セリナの声だった。




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「汚れ仕事は私が引き受ける!」


赤い影がルカとルシアンの横をかすめ、ヴァイトウィーバーと対峙した。


「セリナ!良かった……。無事だったんだ…ね…」


ルカは言い終わってから、彼女が血だらけなことに気づいた。どこか様子もおかしい。腕は羽の一部と混同し、右目は鳥の目のようになっている。


それでもセリナは不敵な笑みを浮かべ、ヴァイトウィーバーと激しい戦闘を繰り出した。


「行こう。彼女が止めてくれてる間に!」


ルシアンは立ち止まるルカの手を取り、塔へ走った。


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