おっかけ
「最近推しVのさー、歌みたがさ、レベルアップしてんだよね……」
「うんうん」
「この前のあれなんかさー?」
「うんうん」
「マジで尊くて――」
「うんうん」
琴楽しそ〜、幸せ。
良かった。
琴に布教されたから観てみたけど、我ながらここまでハマるとは……
きっかけはコラボカフェ。
当日、琴を待つ間に事前に送られてきたURLのリンクをポンッとタップすると目の前に出てくるポップな文字。
相手の
でも、2Dの体が左右にふよふよと揺れていて目を奪われた。
『なんだこれ、かわいいな……』
歌い始めた途端の真剣な声に耳を奪われた。
あまりにも君の――
『お待たせ!結構待ったよね、ごめん!』
『俺も着いたとこ』
『なに観てるの?』
『送られてきたリンク』
『今ぁ!?!?』
俺もそれ思った、なんで今なんだろ。
『ごめんごめんww 観るの忘れてて』
『しゃーないか、今日はてってーてきに付き合ってもらいますので!』
『はいはーい』
家に帰って再びリンクを開くその頃には完全にハマっていた。
カフェで笑顔で楽しそうに推しのことを語っていた琴の姿が焼き付いている。
互いが好きなことを一緒に話せるのなら一石二鳥だ。
あわよくば、俺のことも……なんて思ってたが難しいかも。
「琴?聞いてる?あ、話つまらなかった……?」
「あ、ううん!!ちょっとぼーっとしちゃってただけ!」
ミーハーだと思われただろうか。
「……朝から疲れちゃったよな、ごめん」
「違うよ!!大丈夫だから!元気だからさっ!」
気まずい。とても気まずい。
「なら、もうそろそろお店出よっか」
この後、どうしよう。
「お会計してきたよ〜」
「ありがとう」
日が暮れた町を二人で歩く。
その手は、繋がっていない。
「あのさ、輝」
どうしたんだろ。
「ん?」
「なんでいきなりそんなにハマったの?」
「え?」
「無関心だったのにさ、いきなりその話ばっか」
もしかして琴……
「琴に紹介されたから」
「どゆこと?」
俺の話をしてほしい。
ただそれだけだったけど。
「琴が、『好き』って。『声が良いんだよ』って言ってたからさ。俺もハマれば、Vの話だけじゃなくて、俺の話ももっとしてくれるかなぁ、って……。あ、いや、ハマってない訳じゃ――」
「……」
やっぱり。
黙っちゃって可愛いなぁ。
「あれ、琴の顔、真っ赤」
「こ、これはっ、夕日に当たってるからで……」
俺は君のおっかけなんだよ。
「もしかして推しにやきもち妬いてた?」
「違うし」
「そっぽ向かないでくださーい」
そうやってすぐ顔赤くなっちゃうとことか、
「いや、別に」
強がっちゃうとことか、
全部が可愛くて愛おしい。
「さてはさっき俺の話聞いてなかったなぁー?カラオケ行きたいって言ったやつ」
「尊いから曲一緒に歌いたいって話……?」
「そのちょっと前!」
「……んー」
優しく甘やかしたいけどそれ以上に、
「あのVの声、似てるから。俺の好きな人に」
からかいたくなる。
「んぇ!?!?」
ほーら可愛い。
もう一回だけ……
「ほらね、ちゃんと聞いてなかったでしょ?」
「耳元でささやくなっ――」
「だからまた、俺と一緒にデートしてね」
「……はぃ」
素直なところも可愛いよ、
「よろしいっ」
声に恋す ゆ〜 @MainitiNichiyo-bi
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