新世界
@hienosan
ℬ
プロローグ
この世界は3年前、私の手によって塗り替えられた。塗り替えられたあとの世界は、喰種や吸血鬼などの不可解な怪物が巣食うようになった。人類はその怪物共に適応できず、絶滅の未来を迎えるように見えたが、とある人物を皮切りに、人類は超常現象とも言える能力を使用するようになった。その超能力とも言える力を持った人々を集め、その
第一章
12月の下旬頃、3年前ならば人々はクリスマスの準備でいつもより慌ただしくなっているくらいのところだろうか?だが今は、怪物などの対処に追われ、忙しく人々が交差している。私は、スーツケースを持ちながら、まるで周りとは時間の流れが違うように、人々が逃げている方向とは反対に、怪物の方へと向かっていた。そう、私は超常現象を用い、怪物へと対抗する、神話対策局二課の課長だ。距離も目測10m程度になった頃、私は人並みを避けるためビル街の壁を駆け抜け、怪物の真上へと跳んだ。その時スーツケースのボタンが押され、そこからは全く想像できないような2m越えの大剣が出てきた。縦に振りかぶったその大剣で怪物は叩き切られた。その後、携帯電話を取り出し、業務終了の報告をし、その後専属のアシスタントに電話をかけ、迎えの車を頼んだ。
-5分後-
車が到着し、アシスタントは私が乗車したのを確認すると出発した。彼は仕事以外ではあまり話さない。正直私も話すのはあまり好きじゃないので助かっている。そうしてしばらく車に揺られ、神話対策局の本部へと到着した。そこは高層ビルが2つ並べられている形で造られている。私は本部の中へと入り、全ての課が集まって行う定例会議へと向かうため、エレベーターに乗り、最上階の74階のボタンを押すと、エレベーターは74階へと向かうため上昇を始めた。すると、38階を指すランプが光り、38階で停止した。そこには四課 課長の
「えのっちじゃーん!いつももうちょい早く着いてなかったっけ?めずらしーね!」
「今回は司令で遠くの方に行っていてな、移動時間でこんな時間になった。」
「へ〜それって敵に苦戦したとかじゃなくて?笑」
「…ああ全くな。」
そう彼女の一方的といえる会話を続け、エレベーターが74階へと到着した頃。通常の人間なら長い時間で会話が尽きると考えるのだが、彼女は未だ延々と話し続けていた。
「〜でね〜〜が〜」などと会話を続けている最中に、私は割り込むように「着いたぞ。」と言った。彼女は本当に気づいてなかったのかハッとしたようにエレベーターを降りた。そうして定例会議を行うための会議室へ入ると、「会議まで2分だぞ!!5分前には来いと何度言ったらわかる!!!」と怒号のような声が会議室に響いた。この声の発信源は七課 課長のカインだ。彼は責任感が強く、真面目だ。悪く言うとせっかちだ。
「え〜?時間内には間に合ってんだしいーじゃん」と千景が言う。その声に反比例するような大きな声量で「ダメだ!!!人の上に立つ者としての責任感を持て!!」とカインが言った。
「あんたあたしより弱いんだから静かにしてなって〜?」そう千景が挑発するような声色で言った。するとカインはその言葉が余程頭に来たのか、「なんだと…?俺がお前より弱い?そう言ったのか?」
「だからそう言ってんじゃん笑」
「そんな証拠がどこにあると言うんだ?」
「なんならここで証明してあげよっか〜?」
そう言うと、彼女の身体から電気が走った。それに反応するようにカインの周囲の金属が浮き始めた。
「…いいだろう。その挑発、受けてやる。」
そう言うとカインは指を彼女に向けた。そうすると周囲に浮いている金属が彼女に発射された。その刹那、彼女へと向かっていた金属が消滅し、
「そこまで」という落ち着いた声が聞こえた。
声の主は一課 課長の一之瀬。彼は神話対策局の中で最強と言っていい実力を有していて、他人の先に立つカリスマ性を持っているおおらかなリーダー的な人物だ。彼がそう声をかけるとカインと千景は関係は治るわけではないが、その一声で席へと着いた。一之瀬が全員席に着いたことを確認すると、「それじゃあ、全員揃ったね、会議を始めよう。今回の議題は、ドイツで確認された超高濃度魔力反応についてだ。ドイツ西部の片田舎に長距離を移動するための転移門のようなものが開かれようとしていることが分かっている。詳しい情報については魔術師エイボンに調べてもらうことになっている。さて、ここまでで質問がある人はいるかな?」
「はいは〜いしつも〜ん」
「千景くん、何かな?」
「結局あたしたちよんでなにしたいわけ?」
「なるほど、君の意見はよく分かるよ。それじゃあ、その話について詳しく話そうか。君たちには各々魔力反応の地に向かって対処をしてもらう。後にエイボンから貰った情報を元に班を分け対処に向かってもらう。班については追追連絡するよ。これ以上質問がなかったら、会議は解散とする---これ以上質問が無いようだから、会議は解散だ。お疲れ様。」
そういうと各々立ち上がり会議室を去っていった。私も去ろうと席を立ち上がって出口へと向かっていると、「あ、江野くん、ちょっといいかな?エイボンとの面会に君も同行して欲しくて…」と一之瀬に話しかけられた。私はこれといった用事もなかったため、「了解です」と二つ返事で承諾し、一之瀬とエイボンのいる地下室へと向かった。
-地下室-
明かりと言える明かりは赤色灯しかなく、薄暗い一直線の路地だった。路地の左右には鉄の扉が一定の間隔で配置してあり、その造りはまるで刑務所の独房のようだった。その回廊をコツコツと足音を響かせながら五分ほど歩いていると、先程とは様変わりした明らかに違和感のある強力な合金の壁と魔術的な技術が絡まりあった壁があった。一之瀬はそこに手をかざし何かを呟くと、その壁をすり抜けて行った。私も着いていくと、そこにはロッカーが並べられてあった。
「貴重品や角のあるものはここに置いておくように。」彼の指示に従い、貴重品などを置き、奥へと進んでいくと、そこは異様と言えるほど角が一切ない図書室だった。そこにある本や机なども角が削られていた。拘りと言える範疇ではないほどに。
「ああ、来たか。」
そこには華奢な少し触れるだけでも壊れてしまいそうな玩具のような少女が机に座っていた。
「エイボン、今回は高濃度魔力発生の件についてだ。」
「分かっているよ。それじゃあ話を進めるとしよう。ドイツでは旧神 シアエガが出てくるだろう。アレを一言で表すのは難しいが、無理矢理表すなら、多くの触肢を持つ眼だ。アレは突きなどに対して非常に強力な耐性を持っているが、それ以外への耐性はあまり強力ではないと言えるだろう。そうだな…江野くん、君に任せよう。」
「了解です」
配属が決まった後、私はエイボンの部屋を出て、飛行機でドイツへと向かった。
-ドイツ-
時間も無いので私は足早に魔力発生源へと向かうため、事前に用意されていた車に乗り込んだ。車から見える景色は中世時代の面影を感じさせるアーチ状の橋や教会、石造りの建物がいくつもあったりと、うつくしい街である。清潔でごみが全く落ちていないし、どこも統一感がある街並みを眺めていると、人間の何倍もある門を通過した。その先は民家がいくつかありつつも、RPGのような雰囲気を感じさせる草原があった。ドイツならではの風景を眺めていると、あっという間に魔力発生源の地が見えるほどになった。それは巨大な先程見た壁よりも壮大なポータルのようなものだった。それはやっと目視できる程度になった程でもこれ以上進みたくないという嫌悪感を持たせるほどの魔力だった。それほどの魔力を受け、私はあの門の中から何が出てくるのか、一人昂っていた。
車が到着し、門のすぐ側まで近づくと、待っていたかのように、門からその怪物は現れた。怪物と形容するのも恐ろしいソレは、私をじっと見下ろしている一つ目だった。目の周りで空が二つに分かれた。深い裂け目が生じ、その間から闇がしみ出しは始めていた。夜よりも暗い闇で、それがネバネバした触肢の塊となって、這い降りてきた。次第にソレは形をとりはじめ、段々はっきりしたモノになっていった…何かが立っていた。黒い空を背にして立っているのは、何か闇の触肢を持ち、緑色に輝く目を持ったモノだった。
ウボ=サスラの落とし子が一柱 シアエガがこの世に現れた。
ソレが私を認識すると同時に、ソレは私を捉えようと幾何本もの触肢で私を押し潰そうと振り回す。私はスーツケースから大剣を取り出し、正確に触肢を一本一本薙ぎ払い、ソレへと駆け抜けた。それが面白くなかったのか、触肢一つ一つに私を追い詰めるための布石としての意味を持たせ、着実に誘導していた。正直私としてはそちらの方が有難かった。無意味な行動より、確実に私を仕留めるための有意な行動の方が私には読みやすいからだ。一回でも被弾すると命を落とすこの状況が、私を高揚させた。この気持ちの昂りを抑えつつ、敢えてヤツのペースに乗るように見せることで、相手の油断を誘い、ヤツの眼を斬り抜けた。余りの強撃に怯んだヤツは地下へ穴を掘り、逃走を始めた。私はそんなヤツを見て、ガッカリした。未だ見たことの無い怪物、それと対峙し、戦うことで私は満足できると思っていたからだ。ヤツは私と戦い、逃げ始めたのだ。「残念だ。」そう言い、私はヤツを斬り伏せ消滅させた。その後、携帯電話を取り出し、業務終了の報告をし、その後専属のアシスタントに電話をかけ、迎えの車を頼んだ。そう、この繰り返しだ。結局は前の世界と何も変わっていない。退屈な日々の繰り返しだった。
新世界 @hienosan
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