釜本邦茂（８１）死去

※全て敬称略

　まず最初に。

　事実確認も兼ねて、釜本邦茂の死去を伝える報道を、以下に２つほど引用します。

（ここから）

・釜本邦茂氏が逝去

www.jfa.jp/news/00035377/

ＪＦＡ　2025年08月10日

＞日本サッカー協会の元副会長の釜本邦茂氏はかねてから病気療養中でしたが、8月10日午前4時4分、大阪府内の病院で肺炎のため、逝去されました。釜本氏は、元日本代表 （1964～1977年）としてプレーされ、メキシコオリンピックでは7得点を挙げ、得点王に輝きました。2005年、日本サッカー殿堂に掲額。81歳でした。

・元日本代表の釜本邦茂氏が81歳で死去…メキシコ五輪では得点王で銅メダル獲得＆歴代最多得点者

www.goal.com/jp/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9/20250810-kamamoto-kunishige/bltba77d6783919d5aa

ＧＯＡＬ　2025年8月10日

＞Jリーグよれば、釜本氏はかねてから病気療養中であり、8月10日午前4時4分、大阪府内の病院で肺炎のため、逝去された。なお、通夜、告別式は近親の方々のみで執り行う意向であり、お別れの会の実施については後日案内することも併せて伝えている。

（以下略）

　また、日本サッカー界から多数コメントが寄せられています。その一部を、以下、いくつか紹介します。

・釜本邦茂氏訃報に接して

www.jfa.jp/national_team/mens_all_2025/news/00035379/

ＪＦＡ　2025年08月10日

「私がガンバ大阪ユース一期生としてプレーし始めた頃、その母体となった釜本FC出身の選手たちが持つ「ボールを止める・蹴る」技術の高さに驚かされました。釜本さんは指導の際にサッカーのベースとなる基本技術を大切にしていらしたと聞きました。その後プロになってからも釜本さんのキックの強さや正確性にまつわる逸話を耳にし、私も良い選手になろうと精力的にキック練習に励みました。」（宮本恒靖）

「今から半世紀以上も前に世界と伍して戦い、日本サッカーの存在を世界中に示してくれた名ストライカー、それが釜本さんでした。恵まれた体格とスピード、ゴールへの嗅覚…。日本人離れしたダイナミックなプレーは、今も多くの人々の目に焼き付いていると思います。」（田嶋幸三）

「東京オリンピックの前年、東大検見川で行われた古河電工と山城高校との練習試合で初めて釜本選手と一緒にプレーをして、日本人離れしたそのスケールの大きさに驚かされた記憶があります。既に釜本選手を見ていたクラマーコーチからは熊のような選手がいると聞いていましたので、のっそりしたでっかい選手だろうと思っていました。ところが、いざ対戦してみると、そのスピードと本能的なゴール感覚たるや！「えっ、これが高校生なの？」と度肝を抜かれました。」（川淵三郎）

・本田圭佑、逝去した釜本邦茂氏に「ものすごく影響を受けた1人」…日本代表歴代最多75ゴールにも「凄まじい記録」

www.goal.com/jp/%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9/20250810-keisuke-honda-kunishige-kamamoto-japan/bltc6342d604e23f582

ＧＯＡＬ　2025年8月10日

「僕にはなれなかった点取り屋としての記録保持者。その印象を国民の方に与えているというのは唯一無二だと思います。当然、あの代表での記録を抜かれる、抜く選手が出てくる姿が今のところは想像できないです。」（本田圭佑）

・釜本邦茂さんは「唯一無二」本田圭佑が思い出語る　サッカースクールで興奮「サッカーを始めたスタート時に影響を受けた１人」

www.youtube.com/watch?v=Gif0fG2XWXY

（ユーチューブ　約４分）

・釜本邦茂さん 歴代日本代表選手が偲ぶ　内田篤人さん「本当ですか？」柿谷曜一朗さん「言葉がない」松井大輔さんは飛行機で隣の席になった思い出

www.youtube.com/watch?v=GNr7SrAdAuA

（ユーチューブ　約２分）

「コンフェデの時にフランスに一緒に行かさせて頂いて、隣の席に座らさせて頂きました。その時に色々、日本の話をさせて頂いたのを覚えていますし、シュートとは何ぞや、みたいなのを頂いたのを覚えています」（松井大輔）

「サッカー界を引っ張ってと言うか、どこに行っても名前は聞きますんで、ちょっとショックが大きい……。そういった方が切り拓いてくれた、プレーもそうですけど、道っていうのを、僕たちがこうね、どんどん若い世代に、僕も道を歩ませて貰いましたけど、下の世代に繋いでいくのも使命だと思います」（内田篤人）

「日本サッカー界にとって特別な人だったと思いますし、僕たちがその思いをしっかり背負って、日本サッカーを発展させていかないといけないなと思います」（柿谷曜一朗）

（ここまで）

「日本サッカー史上、最高のストライカーは誰か？」と聞かれれば、釜本を知らない人を省き、９割方の人が「釜本邦茂」と答えます。これが「日本サッカー史上、最高の選手は誰か？」という質問になると、やや意見は割れるでしょうが、それでも釜本を知る人であれば、半数近くはこの名を挙げるのではないでしょうか。残る半数は更に割れて、中田英寿か長谷部誠か本田圭佑か三浦知良、あるいは内田篤人や長友佑都、最近の選手で三笘薫の名前を挙げる人もいるかも知れません。

　釜本邦茂は生粋のストライカー、点取り屋です。ＦＷは点を取るのが仕事、エリア内でボールを持ったらシュートしか考えちゃいかん、ＦＷが点を取って勝てば良いと、常々そのような話をされていました。その言葉通り、日本代表でもクラブチームでも得点を量産し、チームを勝利へと導きました。

　日本代表では通算７６試合で７５得点。得点率は驚異の９８．６パーセント、ほぼ１試合に１点取る選手でした。得点数も得点率も、日本の歴代選手の中で（試合数が一桁台の選手を省き）１位です。代表得点数２位の三浦知良で８９試合５５得点、得点率が６１．７パーセント。３位の岡崎慎司で１１９試合５０得点、得点率が４２パーセントですから、釜本がどれだけ秀でた選手であるかがよく分かると思います。

　この成績は、海外の有名選手と比較してもトップクラスの数値です。例えば現在の世界最高ストライカー、ハーランドと比較してみましょう。２０２５年８月現在、ハーランドはノルウェー代表として４３試合に出場、４２得点という結果を残しています。得点率は９７．６パーセント、釜本とほぼ同等です。もう一人の世界最高ストライカー、エムバペはどうでしょうか。フランス代表として９０試合に出場、得点数は５０、得点率５５．５パーセントです。エムバペ・ハーランド時代の少し前、世界を席巻した２人のストライカーがいました。言わずと知れたクリロナ・メッシ時代です。クリスティアーノ・ロナウドの方は、ポルトガル代表として２２１試合に出場し、１３８得点、得点率６２．４パーセント。メッシの方は、アルゼンチン代表として１９３試合に出場し、１１２得点、得点率５８パーセントとなっています。世界最高峰の点取り屋と言えば、ゲルト・ミュラーやプスカシュの名前が挙げられるでしょう。ミュラーは西ドイツ代表として６２試合６８得点、得点率は１０９．６パーセント。プスカシュはハンガリー代表として８５試合８４得点、得点率は９８．８パーセントです。これらレジェンドと比しても全く遜色ないのが釜本です。それどころか、当時アジアの中でも弱小国だった日本代表で、世界屈指の強豪国のストライカーと同等の数字を残したのですから、もしもっと強い国に生まれていたら、どれほどの結果を残せたでしょうか。

　クラブチームでの成績も見てみましょう。ＪＳＬ、現在のＪリーグの前身では、通算２５１試合２０２得点、得点率８０．４パーセントという結果を残しました。所属していたヤンマーは、現在のセレッソ大阪の前身で、年間１勝か２勝しか出来ない弱小チームでしたが、釜本の入団以降に勝ち点を伸ばし、７１年の初優勝、７４～７５年の２連覇など、黄金期を築きました。その間、得点王を７回、アシスト王を３回受賞。優勝した３年間全てで得点王のタイトルを獲得し、７５年にはアシスト王とのダブル受賞をしました。ＪＳＬで得点王・アシスト王の二冠達成した選手は、釜本邦茂とラモス瑠偉の２人しかいません。

　尚、ＪＳＬの通算得点記録２位は碓井博行の２００試合８５得点 （４２．５％）、３位は松永章の１７６試合８２得点 （４６．５％）となっており、以下、カルバリオ１５２試合７７得点 （５０．６％）、ラモス瑠偉２１０試合６９得点 （３２．８％）、宮本輝紀１３８試合６８得点 （４９．２％）、松浦敏夫１９３試合６８得点 （３５．２％）です。釜本の才能がいかに傑出していたか、ここからも読み取れます。

　釜本邦茂といえば、メキシコオリンピックで銅メダル獲得に貢献した事でも知られています。この大会、釜本は７得点で得点王に輝き、世界を驚かせました。グループリーグも含め日本代表は合計９得点を挙げましたが、そのうち７点が釜本の得点で、残りの２点は釜本のアシストによるものです。全得点に絡む大活躍で、まさに「釜本が日本を勝たせた」と言って間違いないでしょう。この時の銅メダルを最後に、今現在に至るまで日本男子サッカーは五輪でメダルを獲得出来ていません。

　大会後、釜本には世界各国から数多のオファーが舞い込みます。しかしワールドカップアジア予選を間近に控えていたため、釜本はオファーを一旦保留。その直後に釜本は緊急入院し、海外移籍の話も立ち消えになりました。また、釜本を欠く日本代表も、アジア相手に４試合で２分け２敗と全く勝てなくなり、ワールドカップ初出場の夢も潰えてしまいました。以降、１９９８年フランス大会で日本が初めてワールドカップに出場するまで、実に３０年近くの時間が必要でした。

　日本代表が世界と肩を並べる遥か昔に存在した、日本代表史上最高のストライカー・釜本邦茂が、２０２５年８月１０日にこの世を去りました。２０２０年にマラドーナが、２０２２年にペレが、そして今年釜本が。後を追うように、サッカー界を代表するレジェンドがこの世を去っていきます。とても寂しい事です。どうか安らかにお眠り下さい。

　最後に、釜本邦茂の実際の映像を含む情報を列挙して終わります。釜本の名前は知っているけどプレーは見た事がないよ、という方も、これを機に一度ご覧になってみて下さい。

・写真で振り返る釜本邦茂さん　81歳で死去　サッカー元日本代表、メキシコ五輪得点王

mainichi.jp/graphs/20250810/mpj/00m/050/031000f/20250810mpj00m050014000p

毎日新聞　2025/8/10

（以下、動画は全てユーチューブ）

・釜本邦茂 世界を驚かせた日本史上最高のストライカー！ スーパープレー&ゴール●メキシコ五輪【ペレを認めた全盛期の凄さ】サッカー日本代表

www.youtube.com/watch?v=DDQQXpikufM

（約１１分　プレー映像あり）

・【前園真聖×釜本邦茂】日本史上最高のストライカーが考えるサッカー論とは？そして、釜本さんが本音を吐露「海外に行きたかった・・・」

www.youtube.com/watch?v=ebzxkQ3qMcY

（約２４分　前園真聖との対談映像）

・「釜本邦茂は日本サッカー史上最高のFWである」 都並敏史と後藤健生が熱く語る釜本伝説！

www.youtube.com/watch?v=_q7zaOzIzBM

（約３２分）

・【釜本邦茂】ｺﾞｰﾙ集＋α【Kunishige Kamamoto】詳細は概要欄参照

www.youtube.com/watch?v=LFt21zPsyAc

（約１４分　プレー映像）

・【釜本邦茂 引退試合】1984 ﾔﾝﾏｰ vs 日本ﾘｰｸﾞ選抜【Kunishige Kamamoto Testimonial】

www.youtube.com/watch?v=z6iiUsv7um8

（約１時間３７分　プレー映像）