グランドマスター

エスケー

プロローグ

 ある日、この世界に突如として現れた『ドア』その存在は、あらゆる形や大きさで現れるものの、ひとつだけ共通点を持っていた。『ドア』の向こうには、まったく異なる世界が広がっている。


 人類は、これらの『ドア』を通じて現れる異世界の存在たちを『魔物』を呼ぶようになった。『魔物』は地球を侵略しようと現れた。

『ドア』が放置されると次々とブレイクし、異世界から溢れ出す脅威となる。


 人類は『ドア』の対処法を知らず、初めのうちは無力だった。しかし、絶望の中にもわずかな希望が残されていた。それが『紋章者』と呼ばれる特異な力を持つ人々の存在だった。


 ♢♢♢


 誰もが憧れ、誰もが畏怖した存在がいた。

 いち早く混沌とした社会をまとめあげ、崩壊しかけた世界を救った者たち。


 ――『グランドマスター』。


 その称号を持つ者は、世界にたった四人しか存在しない。

 神話のように語られ、伝説のように畏れられる最上位の冒険者。

 そして、これは――

 ひとりの少年が『グランドマスター』を目指し、血と汗と絆を重ねながら、未だ見ぬ高みに挑んでゆく物語である。


 ♢♢♢


 俺の名前は夜桜 天城、現在9歳の男だ。俺には四人の彼女がいた。


 一人目隣にいる金髪ギャル、星野ほしの 瑞希みずき明るく元気な性格で、何事にも遠慮が無く、正義感が強い。その上、見た目も派手で目立つ存在だ。ちなみに何故か悪い男が大好きである。


 二人目は茶髪のツインテールを腰まで伸ばした少女『天羽 あもう いちご』彼女はどこからどう見ても完璧だった。ふわりと揺れる腰まで伸びたツインテール、ぱっちりとした瞳、それに加えて、どこか親しみやすい笑顔。胸がとにかく大きい――いや、それを超えて、目立つ。


 三人目姫乃ひめの かすみ。背中まで伸びる黒髪は艶やかに整えられ、清らかな立ち居振る舞いには凛とした品が漂う。超がつくほどのお嬢様だ。


 そして、最後に四人目氷室ひむろ すい美しい水色の髪に青い目、スラリとした体型。


 こんな美少女を常に引き連れている俺は、当然のように嫉妬の視線を向けられる。

 だが、そんなもの慣れっこだ。向かってくる連中は、すべて返り討ちにしてきた。ちなみにこの世界では『一夫多妻』も『一妻多夫』も認めらてるし同性婚も認められている。多様な社会だ。


 今日もまた、因縁をつけてきた男たちを倒したところだった。

 ──俺には紋章がある。ただし、今はまだ覚醒していない。存在しているのは確かだが、俺の覚醒は人よりも遅いらしい。


 だからこそ、俺は紋章の力を借りることなく、常に敵を打ち破ってきた。


「雑魚が!」


 啖呵を切りつつも、俺の身体は傷だらけだった。息も荒い。だが倒れるわけにはいかない。

 情けない姿を見せる訳には行かないからな。


「流石!私の恋人、強い!」


 苺が瞳を輝かせて言う。彼女は強い男が好きだった。


「……美味い」


 氷室 水は、俺が作ったクッキーを頬張っている。俺は意外にも料理が得意で、よく彼女に焼き菓子を渡す。水は食べることが好きで、ポケットにはいつも甘いものを忍ばせているのだ。


「正々堂々って言って……隠していた蛇を出す……はしたないですけど……素敵」


 かすみ恍惚な笑みを浮かべた。を 喧嘩は下品だと嫌う彼女だが、好意を寄せる相手にはとことん甘い。


「流石〜悪い男って好き!」


 瑞希はにやりと笑った。彼女は悪い男が好きだった。血に塗れた俺の姿を見ても眉一つ動かさず、むしろ愉快そうに拍手してみせる。


 俺は幸せだった。

 苺が笑って、水がクッキーを齧り、霞が小言を言いながらも寄り添ってくれて、瑞希が悪戯っぽく笑っている。そんな四人の彼女が、俺の隣にいてくれる。こんな時間が大好きだった。


 いつまでも続けばいいな、と俺はずっと思っていた──。



 ある日、俺は引っ越すことになった。

 行き先は遠い場所で、もう簡単には戻れない距離だった。

 見送りに来てくれたみんなは泣いていた。

 俺だって本当は泣きたかった。

 けれど、弱いところを見せるわけにはいかない




「寂しい……」


 水ちゃんが小さな体を俺にぎゅっと預ける。思わず、俺はその頭をそっと撫でた。


「大丈夫だ、すぐまた会える」

「馬鹿馬鹿!なんで引っ越すのよ!」


 瑞希が俺の肩を叩いた、その目は泣いている。


「ごめん……」

「私、恋人作るからね! いいんだよね! 引越すのやめるなら許すけど!」


 泣きながら叫ぶ瑞希に、思わず目頭が熱くなる。


「おやめなさない、瑞希さん。天城さん、絶対に悪い女には引っかからないでくださいね。貴方の価値が下がりますから」


 霞が少しあざとく笑うように口をはさむ。けれど分かる彼女も寂しがってることに。


「もちろんだよ。俺は見る目あるからな」


 俺は苺の方に目を向けた、ずっとスカートの丈を掴んでいた。


「苺……?」

「嘘つき……私の傍に居るって言ったのに!」

「居るよ!ずっと居るつもりだ。再開が出来たら絶対にお前の事を奪いに行くから」

「私に彼氏がいても?」

「あぁ……」

「私の夫がいても?」

「もちろん」

「最低……だけど、待ってる。あまちゃん!」


 苺は俺に抱きついてキスをした。


「あぁ、ずるい!」

「あらあら……はしたないけど……羨ましい」

「苺……ずる」

「早い者勝ちだもん!」


 と、俺の前で騒ぐ可愛い彼女達だった──だけど俺は知らないこの先のことを。


 ♢♢♢

 新しい小説を始めました。

 一章までは完結していますが、修正箇所の確認も兼ねて、一度にすべては投稿できません。


 12時に1話ずつ投稿していきます!

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