光夜と月映
優祈乃 しずく
序『星月の輝く夜に』
夜の闇のなか、星々と月のあかりが草原に佇むふたりの子供を照らしていた。ひとりは黒い髪に金色の瞳で鋭い眼差しをしており、ひとりは金色の髪に黒い瞳で穏やかな笑みを浮かべている。
「やっぱり星空が好きだな」
夜空をみあげる
「そろそろ戻ろう。灯りの確認はできたんだろ?」
「うん。ありがとう。これなら本を読めるし、星図や文字も書ける。助かるよ」
「十二歳になれば、こんなことしなくても習えるのに」
帰るための荷物を纏めながら呟く月映に視線を遣ると、光夜は軽く溜息をついた。
「待てないよ。月映だって、
「……待てない」
互いに顔を見合わせ、肩を揺らして笑いあったそのとき、ふたりはひんやりとした風の流れを肌に感じた。
「……あ、
みるみるうちに、白い霧のようなものが立ちこめていく。濃いのは足元だけなのだが、子供の背丈だと顔のあたりまで薄く靄がかかってくるので、少し煩わしい。
「これって星月の光を浴びた朝露を集めるときのやつだよね。こんなふうになるんだ」
「迷いはしないけど、足元が真っ白になるから気をつけろよ」
悠長にあたりを見まわしている光夜に、月映が注意を促す。もしどちらかが怪我でもしようものなら、夜中に抜け出したことが大人たちに知られてしまう。
ふたりは駆けるように家路を急いだ。
「……はぁ。疲れた。やっぱり十二歳まで待てばいいのに」
「月映ってば、そんなに体力なくて踊れるの?」
光夜の軽やかな笑い声が響く。
「…ちょ。静かに! 起きてこっそり出かけたのがバレたらどうするんだよ」
「ごめん、ごめん。そろそろ分かれ道だね」
ふたりの住む場所は少し離れている。
月映が分かれ道を進もうとすると、背後から光夜の声がかかった。
「ね。明日は
「そうかもな」
月映が言葉を返すと、光夜は小さく手を振りながら期待の眼差しで彼をみつめた。
「もしそうなったら、一緒に集めようね」
言われずともいつものことなので月映が頷きながら手を振り返すと、光夜は満足そうに微笑んで、おやすみなさいと小さな声でささやいた。
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