ピストン岡田

序章:銀座の夜

1990年代。

東京・銀座。


スナック「らん」。


「アハハハハ⋯!」店の中から笑い声が聞こえる。


カウンターで一人の男が飲んでいる。男の名は、タナカ。


リエ「⋯タナカさんって本当に面白いわね~♪」

ミユキ「いろんな事知ってて、大人のジョークって感じ〜♪知的で紳士的で、好感度高いですよね~♪」

タナカ「⋯おや?もうこんな時間か。そろそろ帰らなきゃ。家で妻が待っているんだ」

女の子達「え~?もう帰っちゃうの~?夜はこれからなのに~?⋯でも、タナカさんって、愛妻家なんですね♪奥さんが羨ましいです~♪」

タナカ「今日は楽しい時間をありがとう。また来るよ」


タナカは帰っていった。


リエ「タナカさんって大人の余裕があって素敵よね♪」

ミユキ「はい♪私の憧れのタイプです♪」


近くのボックス席で飲んでいた、タナカの同僚二人が言う。


タカ「⋯アイツ、結婚してたっけ?」

ユウジ「⋯⋯⋯さぁ?」


タカとユウジのボックス席には、まだ女の子が付いていなかった。


タカ「まぁいいか♪アイツの事なんて俺等には関係ねえ。アイツが帰ったから、女の子一人か二人は空くからな♪」

ユウジ「そうだな♪誰が来るかな?」


しばらくして。


ミユキ「ユウジ君、タカ君、こんばんわ♪私が付きます♪」

ユウジ「お!ミユキちゃん♪いらっしゃい!」

ミユキ「お邪魔します!」

タカ「相変わらず元気そうだな!」

ミユキ「それだけが取り柄ですから(笑)♪」

タカ「顔も可愛いし、おっぱいもデッカイじゃん!それで元気なら言う事はねえ!」

ユウジ「その通り!」

ミユキ「私のおっぱい、見た事もないのに?」

タカ「だいたい想像はつくよ♪」

ミユキ「やだ~、想像しないでよ~♪」

ユウジ「ハハハ!でもこの店、おっぱい大きい子が多いよね♪それだけでも来る価値がある(笑)♪」

ミユキ「そうね、なぜかそういう子が多い。偶然かな⋯?それともママのセンスかな?」

タカ「ママのセンスじゃね?そうすれば客は集まるんだから」

ミユキ「そうね♪男はみんなスケベだからね♪」

ユウジ「おいおい、俺等も一緒にするなよ(笑)!」

一同「ハハハハハ!」



後日。


マミ「いらっしゃい♪ユウジ君♪タカ君♪あれ?今日は二人なの?タナカさんはどうしたの?」

タカ「おいおい、やめてくれよ!マミちゃん、まさかアイツに惚れちまったんじゃねえだろうな!?」

マミ「やめてください!私は店の女です!」

タカ「ハハハ!そりゃ違いねえわ!誰もマミちゃんは落とせねえ!」

ユウジ「ハハハ!ごもっとも!」

マミ「フフフ♪」



翌日。


マミ「あら、タナカさん、いらっしゃいませ♪今日は一人なの?」

タナカ「一人で飲みたい夜もある」

マミ「何かあったの?」

タナカ「⋯まぁな」

マミ「私は一緒にいてもいいの?」

タナカ「あぁ、隣に座っていてくれればいい」

マミ「わかりました。では失礼します」


マミ、タナカの隣に座る。


しばらくして、タナカがつぶやく。


タナカ「⋯人間てさぁ、どうして嘘をつくんだろう?」

マミ「保身の為じゃない?」

タナカ「さすが、マミちゃんは鋭いね」

マミ「どうしたの?何か嘘ついたの?」

タナカ「あぁ、俺は嘘つきだよ⋯」

マミ「⋯聞かせて」

タナカ「⋯それはダメだよ。⋯ところで、マミちゃんにプレゼントがあるんだ♪」

マミ「⋯何ですか?」

タナカ「香水だよ♪マミちゃんを想って、俺が選んだんだ♪気に入るかな?」

マミ「ありがとう♪タナカさん♪」

タナカ「気に入ったら、今度会う時につけてきてよ♪」

マミ「はい♪わかりました♪」

タナカ「今日は、コレが渡したかったんだ♪じゃあ、そろそろ帰るね」

マミ「え?もう帰っちゃうの?」

タナカ「あぁ、また来るよ」



後日。


マミ「タカ君、ユウジ君、いらっしゃい♪あれ?またタナカさんはいないの?ねえ?」

タカ「なんだよ~!またタナカかよ~!俺達はってわけ?」

マミ「そんな事言ってないでしょ(笑)!」

ユウジ「あれ?マミちゃん、匂いが変わった⋯」

マミ「⋯エヘ♪わかる?」

ユウジ「わかるよ~♪いい匂いだ♪」

タカ「どれどれ?…あ!本当だ!さすがマミちゃん、いいセンスしてるな!」

マミ「ありがと♪⋯実は、タナカさんからもらったの♪だから、今日、タナカさん来るかな~?って♪」

タカ「やっぱりマミちゃんは、タナカにハマってる!」

ユウジ「まったくだ」

マミ「ウフフ♪」


カラン♪

ドアが開く。

タナカが入ってくる。


マミ「あ!タナカさ~ん!いらっしゃいませ〜!会いたかった~♪」

タナカ「お、マミちゃん、香水、気に入ってくれたみたいだね♪」

マミ「はい!タナカさん、ありがとう♪お気に入りです♪」

タナカ「よかった♪よかった♪苦労して探した甲斐があったよ」

マミ「タナカさん、一緒に飲もう♪」

タナカ「そうしよう♪(こりゃ脈アリだな♪)」

マミ「何飲む?」

タナカ「ウイスキー、ロックで♪」

マミ「は~い♪」


ボックス席で飲んでいたタカとユウジ。


タカ「ダメだこりゃ」

ユウジ「だな」

ミユキ「何しょんぼりしてんの!二人共!」

タカ「今日はミユキちゃんで我慢するしかないか~」

ユウジ「しょうがない」

ミユキ「何よ!?それ~!?私はってわけ!?」

タカ・ユウジ「ハハハハハ!」



蘭、閉店。

タカ、ユウジ、帰り掛け。


ユウジ「でも、タナカに、あんな香水のセンスがあるとはな!」

タカ「どうせ女性誌でも読み漁って決めたんだろうぜ?」

ユウジ「そうだな(笑)!」



マミ帰宅後。


マミ「⋯でも⋯ちょっと違うんだよな、この香水の匂い。しばらく付けたら、やめちゃおっと♪」

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