かっこよくて美人イケボな王子様はショタボが大好き

黒薔薇サユリ

第1話 王子様はショタボが大好き

王子、創作作品では男らしくイケメン、金持ちなどの超ハイスペック的存在であり、ヒロインやライバルヒロイン達の憧れの存在。ヒロインならぬヒーロー。


ただし、僕の学校では少し違う天川紫月あまかわしずきさん。彼女は、僕の高校で王子と呼ばれている。彼女は、作品の王子さながら運動神経抜群、美人系イケメン、しっかり優しい。そのおかげか、ファンクラブも存在している。


それに比べ僕は、身長成績運動神経普通、正しく路傍の石というやつだ。別に紫月さんにに対して、こういった嫉妬がある訳でもないけど、ああいうのを見せられると、僕の男性力の低さに辟易する。


「きゃ」


段差につまづいたクラスメイトの女子が、転びかける。そんな女子のお腹に、優しく手が添えられ転ぶの守る人が現れた。


「大丈夫かい?」


転びかけたところを救った紫月さんは、圧倒的イケメン顔とイケボのダブルパンチでほほ笑みかける。


「あ、紫月様」


助けられた女子は、紫月さんの顔を見るなり頬を赤らめる。


「はい。怪我はないです」

「そうか、良かった。気をつけるんだよ」

「は、はい」


紫月さんが助けたクラスメイトは、紫月さんの横を通ってから「キャー」と黄色い歓声を上げながら、消えていった。


「く、王子様め」


そんな、イケメン王子な関係で、何名からの男子からちょっとしたやっかみの目で見られている。


「にしてもあれ、素なのかな?」

「素に決まってるだろ、逆にあれを演技的にやるのは恥ずいだろ」

「確かに」


逆にあれが素ってなると、生まれついての王子とかいうエグい肩書きが着くことになるけど。


「ま、それはいいから移動しようぜ、あの先生早く行かないとなんか怒るしよ」

「そうしようか」


紫月さんの話は切りあげて、僕らはとりあえず準備をしてから次の授業がある教室へ移動した。


「あいつ、ほんとどこ行ったんだろ」


授業が終わって教室へ戻ろうとしたら、汰斗たいとが何故か消えていたせいで、1人で教室に戻ることになった。別に1人が嫌な訳でもないけど、急に消えられると心配するというものだ。


「あ、筆箱忘れた。もど――あだ」


教室に筆箱を忘れたのに気づいて、後ろを振り返ったら誰かにぶつかった。尻もちを着いて、上をむくとそこには紫月さんがいる。


「君、大丈夫か」


屈んで僕を覗いた紫月さんは、僕へ手を伸ばしす。それを掴んで、立ち上がる。


「君軽いな。ちゃんと食べてるのか?」

「ははは、すみません。だ、大丈夫ですか?」


立ち上がった位置そのまま、耳元で軽く謝ると紫月さんは、僕の声を聞いた耳を抑えながら腰が抜けたようにへたりこんでしまった。


「あ、ああ。君、名前は?」

「一応、クラスメイトなんですけど


まあ、路傍の石の僕の名前を覚えてる方が珍しいか。


乙川志郎おとがわしろうです」

「乙川くんか、ありがとう」

「てか、大丈夫ですか?急に座り込んじゃって、もしかしてさっきのぶつかった衝撃で」

「い、いや気にする事はないよ。すまないね、それじゃあ」


普通に立ち上がった紫月さんは、顔を赤く染めながら教室の方へ戻って行った。そんな紫月さんを不思議に思いながら、僕は筆箱を取りに移動教室の方へ戻った。



そんなことがあった次の日、朝に下駄箱を開けらたら「放課後教室で」とだけ書かれた紙が下駄箱に入っていた。


それを見て、きょうで待ってるわけだけど、誰も来ない。いたずらだったのかな。教室に残ってるのは、紫月さんだけだし帰るか。


「そろそろ、いいか。君、いや乙川くん」


ボソッと言葉を口にした紫月さんは立ち上がって、僕のことを呼び止めた。


「は、はい」


もしかして僕を呼んだのって、紫月さん!?


「少し話を聞いてくれ」


近づいてきた紫月さんの顔を見る。紫月さんがこっちに来るにつれ、僕の心臓はどんどん早くなっていく。


「ど、どうかしましたか?」

「ああ、話がある」


紫月さんが僕の肩に両手を乗せる。そんな紫月さんの手は、少し震えていて緊張が僕にも伝わってくる。もしや、昨日の反応ももしかして……


「僕の耳元で、お姉ちゃん大好き、て言ってくれないか」

「え?」

「だから、僕の耳元で――」

「それは聞きました」


唐突な突拍子もないことに、さっきまでの考えが全て消え、思考が停止した。なんだ、お姉ちゃん大好きって。


「すみません、これはなんですか」

「あ、ああすまない。急なことだと、驚いてしまうか。実は僕は君のような声、ショタボが好きなんだ」

「しょ、ショタ」


恥ずかしそうに僕に話す紫月さんは、王子様とかではなく普通に顔面の強いヒロインだ。


「君の声を聞いた昨日、僕は驚きすぎて腰を抜かした。君の声、好みどストライクなんだ」


あの王子が、ここまで熱狂するとは。確かに僕の声は、良くほんとに声変わりしてる?と聞かれるぐらいには幼い声ではある。そんな声がここで需要がうまれるとは、考えもしなかったけど。


「さあ、乙川くん。お姉ちゃん大好きって」


こ、怖い。王子、好きなものだとこんな押しが強いのか。


「わ、わかりました」


僕がしぶしぶながらにそういうと、紫月さんは僕の口元に耳を持ってきた。


「お姉ちゃん大好き」

「あ❤すごく、イイ❤」


何を見せられてるんだ僕は。てか、誰だこの変態。


「あの、紫月さん」

「耳元で喋るなぁ!」

「えぇ……」


紫月さんが興奮してる中、紫月さんに話しかけたら強い顔面でめちゃキレられた。


「すまない。耳元で聞くと、恐らく許容量を超えてしまうからな。控えてもらいたい」

「それはすみません。で、紫月さん僕帰っていいですか?」


一刻も早くこの変態飲もから離れ、家でゲームしたいし。


「まってくれ乙川くん」

「まだなにか?」

「言い方キツいな君」


早く帰りたすぎて、つい言い方がキツくなってしまったの。


「まあいい。その、追加で悪いんだが」

「また何か言うんですか?」

「いや今日はいい、ただそんな感じのお願いだ。どうか、1日いや1週間に何度か僕に言葉をかけてくれ」

「いや、ちょちょちょ」


僕に変なお願いをした紫月さんは、その場に土下座をして頼み込んできた。


「顔上げて」

「タダでとは言わない。報酬は渡そう、僕にできることならなんでもしよう」


紫月さん自分に出来る何でもが、どれだけ価値があって危険なことかかわかってないのか。そんな、汚れたお願いしないけど。


「ダメかい?それなら、なにかもっといい条件を」

「わかりました。わかったので、顔をあげてください」


ここまでされると、この次何して何が増えるのか怖いし、受けざるをえない。多分紫月さんは、僕が了承するまで無限にお願いしてくると思うし。


「ほんとか。それじゃあ、なにか僕に命令してくれ、できることなら何でもしよう」


その何でもが絶妙に僕の下心を撫でてくるんだよな。落ち着け、とりあえずなにか別のお願いを……


「あ、紫月さんって前回のテストどうだった?」

「前回は全て、学年で1位か2位だったな」


さすが王子様、勉学も達者なようで。それなら、僕のお願いは決まった。


「それじゃあ、勉学を教えてください」


ちょうど母さんから、もっと勉強して内心上げろと言われてたところだ、今のおねがいとなればこれだろう。


「それくらい構わない。それじゃあ早速」

「今日はいいです。とりあえず、ルールを決めませんか?」


頭の中整理したいし、とりあえず早く帰りたい。


「そうか、ルールかわかった決めよう」


そんなことで、僕と紫月さんで軽くルールを話し合って、簡易的ではあるけれどルールを定めた。

1.基本この会は秘密

2.取り行うのは、月、水。僕のお願いで、急遽取り行うのは予定が合えば可。

3.相手に手を出すのは禁止

大まかこんな感じで、まだ増える可能性はある。そこはすり合わせだ。ちなみに3は紫月さんに不思議がられたけれど、言葉に起こしとけばなにかあった時も多少抑制されるだろう、と思って僕が提案して入れてもらったルールだ。


「それじゃあ乙川くん、また明日。これから、よろしく頼むよ」

「は、はい。それじゃあ」


まさか王子様こと、紫月さんの連絡先を手に入れるとは。手に入れ方が特殊で、僕らの関係性も異質極めてるけど。これから先、全く見えない未来への不安しかない。

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