12.おやすみって、こうやって誰かに言えるのは幸せなこと、なんだね:添い寝

(明かりの消えた寝室)

(あなたは貝塚さんと並んでベッドで寝ている)

(二人の呼吸音だけが響く)


//ひそひそと

「……寝てる? それとも、寝たふり? どっちでも、いいか」


(貝塚さんが身じろぎして、あなたに寄り添う)


//声は潜めたまま、明るく真面目に

「優しい優しいあなたに耳寄りな情報ですよ~」


//息を吐いてから

「いまなら引き返せます。一晩、添い寝しただけですから」


//自嘲気味に

「私が重い女だって、充分わかったでしょ?」


「友達は元カレもその前のカレシもクズだっただけって、庇ってくれるけど」


//自責の念を込めて

「絶対それだけじゃない。少なからず、私がダメにしたって……自覚してるの」


(深いため息を漏らす貝塚さん)


「だから、このまま朝を迎えて……私が帰ったら、はいさよならもアリです」


(嗚咽を嚙み殺すようなうめき声)


「おこっ、たり……! しないから、絶対。だから、ねっ?」


(押し殺した貝塚さんの声が寝室の空気を搔き乱す)

(布団をバサリと剥ぎ取る音が寝室に響いた)


「え? えっ⁉」


(あなたは貝塚さんを強く抱きしめる)


//フリーズした感じで

「あっ……」


//驚きと嬉しさを綯交ないまぜにして

「ああ……! いいの? いいんですか?」


(頷くあなたを貝塚さんは力いっぱい抱き返す)

(彼女の全身から柔らかな温もりが伝わる)


//しっとりと、けれど力強く

「……もう離してあげませんよ?」


(あなたは彼女の頭を優しく撫でる)

(衣擦れと髪を梳く音が静かに響く)


//疲れ切ったような声で

「あ~、なんだか……急に気が抜けちゃって、凄く眠い……」


//眠たそうに、安心しきった声で

「はい……おやすみなさい」


//ゆったりと、けれど確信を持って

「そっか。おやすみって、こうやって誰かに言えるのは幸せなこと、なんだね」


(寝入りの長めの呼吸音)


//愛情と幸せに満たされて

「……ありがとう。私、いま、凄く幸せ」


(穏やかな貝塚さんの寝息)

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