02.今日もお世話、させてもらいますね♪:3度目のお部屋掃除

(あなたはリビングのドアを開ける)


//違和感を覚え、それを確かめるように

「あれ? なんだか前来たときより片付いてるし……なにか、違う?」


(部屋を見回し、鼻をすんすん鳴らす貝塚さん)


「お部屋の匂いに、新しい……えっと、そう、新品の家電の匂いがします」


(拍手するあなた)


「正解、ですか? あっ⁉」


(小走りする貝塚さん)


//確認するように

「これ、空気清浄機? このロゴ。けっこういいヤツですね~」


//テンション高めに

「夏のボーナスで奮発した? いいですね。お部屋で使うものはいいもので揃えるのが正解です♪ 除湿器はエアコンを併用すると、快適ですよ!」


「これなら、お掃除もはかどりますね!」


//ハッとしてから、ぼそりと小さく呟く

「あっ……はかどっちゃうかー」


//ややぎこちなく

「さーあ、お掃除の続き、しましょうか」


(持ってきたバッグのなかからエプロンを取り出す貝塚さん)


「よしっ、しょっと……!」


(エプロンの紐を結ぶ貝塚さん)


//気合いを入れるように

「じゃあ、今日は仕上げですね。細々したものの整理と埃や汚れを片付けちゃいましょう!」


(部屋掃除を始めるあなたと貝塚さん)

(小物や本を移動させる二人)

(ゴミ袋に何かが放られる)


//掃除しながら、世間話のように

「初めて来たときより、ずっとキレイになってますね」


「私が掃除したから? それもありますけど、脱ぎ散らかした服とか全然ないじゃないですか……あっ、靴下発見♪」


(靴下を拾い上げて、脱衣場へ向かう貝塚さん)


//遠くから

「えいっ♪」


(洗濯かごに靴下が放られる)


//近づきながら

「考えてみると、脱衣かごも用意してあったし、普段は部屋をあんまり散らかさないタイプなんじゃないですか? あっ、やっぱり?」


//からかうように

「それがどーして、あんなことにぃ?」


(困惑するあなたを見て吹き出す貝塚さん)


「同僚が辞めちゃって、大変だったって言ってましたよね。お疲れ様です」


//自嘲気味に

「……私もあなたのこと、笑えないか」


(あなたは引き続き本や小物を仕分けている)

(ホコリ取りを手に本棚を掃除する貝塚さん)


//おずおずと探るように

「ねぇ、初めて会った日……あの雨の日、覚えています?」


(二人は向き合う)


「どうして助けてくれたんですか? たまたま通りかかっただけでしょう?」


//困惑した様子で

「……どうしてって。私が聞いてるんですけど?」


//呆れ半分で

「本当に、お人好しさんなんですね」


「そうでもない? じゃあ……え? 殴られそうに見えた?」


//納得半分、呆れ半分な感じで

「あ~、そうでしたかぁ。あの人に手を上げられたことは、なかったんですけど……そろそろ限界だったのかな……?」


「それでさすがにライン越えだろってなった、と……正義感強いんですね?」


//不思議そうに

「多分違う? まあ確かに、物申すタイプには見えないですけど」


//オウム返しするように

「仕事に追われている自分と、カレシに責められていた私が重なって見えたのと、単にストレスで我慢が出来なくなってただけ?」


(しばし沈黙する二人)


//小さく吹き出してからペースを上げて

「ふふっ、なんだか納得いきました。確かにあのとき元カレはカリカリしてたけど、あなたがいきなり声かけてきたし、そういうことしないタイプに見えたから」


//落ち着きを取り戻して

「でも、そんな余裕のない状態なのに、助けてくれてありがとうございます」


//いたずらっぽく

「あとは、退職した同僚さんにも感謝、ですかね?」


「それはおかしいって? 確かにそうですね」


「実際おかしいですよ。お互い、ね」


//わざとらしく

「え~~⁉ 心外ですか? 私はおかしくなっちゃった自覚があるのに、あなただけマトモぶっちゃいます?」


(手にしたホコリ取りを振り回してから、あなたのそぼに来る貝塚さん)


「だって、助けたまでは勢いだったとしても……お礼に身の回りのお世話を申し出る私も、それを受け入れるあなたも変ですよ。お邪魔するの、今日で三回目ですよ? まあ、それくらい部屋が凄いことになっていたんですけど」


//間をあけて

「そ、れ、と、も……?」


(少し距離を取り、背を向ける貝塚さん)


//一息入れてから、いたずら半分な感じで

「じつはあなたはマトモで、私はいいように使われてるだけ……だったり?」

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