これは…ワシの遺書です。今日、恐らくワシは死にます

テマキズシ

ワシの遺書


「あ〜あ〜。聞こえてるかな? こういう道具はあまり使いこなせなくてなあ…。特にこのパソコン…は、ダメダメなんじゃよ」


「よし、大丈夫そうじゃな。それじゃあ早速話していくとしよう」



「これはワシの遺書。おそらくだがワシの最後の言葉になる。……ああ。最後が近いと考えると、体が震え始めてきたな」


「ワシは…暗殺者に狙われている。今まで数え切れない程の人々を葬ってきた、文字通り最強の暗殺者に。きっと、年老いたワシには逃れられない」



「……まずは亡き妻に一言。お前の就寝中に落書きをしたのはワシだ。まさかその格好で買い物に行くとは思わなかった。……本当に済まない。今でも思いだして笑ってるよ。ごめんなさいね」


「後は……………………、いかん。いっぱいありすぎて何から言ったら良いのか分からんな。というよりそもそも全部いうとメモリが足りないのう」


「ああそうじゃ! お前が前に言った【萌え萌えキュン!】あの録音今でも大事に聴いてるよ。消せって言われたのにスマンな!」


「いやあ〜。歳を取ると声が分からなくなってきての。顔は分かる。だが、声だけが分からない。お前と会わなくなるうちに、ワシは声を忘れていった。それが嫌で、ついつい聞いてしまうのじゃ」




「さて、次に可愛い我が娘へ。実はお前のメイク衣装たまに使って女装して遊んでます。この前夏コミに行きました。……もちろん。作品を売る方でな! お前がワシの商品を買ってきた時は心臓止まるかと思ったよ……」


「で、で! どうだったワシの傑作は! 個人的には女騎士の【くっ殺せ】は絶対に入れたかったんじゃよ〜。あそこのビジュ滅茶苦茶こだわったんだよなあ〜」


「あ、そうそう! 次は触手ものを出す予定だったけどワシはもう書けそうに無いからな…。死後にタンスの中に隠してあるネタ帳を使ってお前が書くんじゃ!」


「ワシが考え抜いた未来の傑作。【キャア! 侵入者に捕らえられて触手攻めにされちゃってる! そ、そこらめー!】をお前が書き上げるのじゃ」




「次は義息子へ。今度一緒にキャバクラへ行く約束。守れなくてスマンな。いつか二人でキャバの子達とソーラン節を踊る約束は……天国で必ずやりたいのう! 一体何年後になることか……」


「後は…そうじゃな。娘を……よろしく頼む。テンションが高くなるとそこら中で踊っちゃうような子じゃが、根は良い子なんじゃ。お前さんになら、託せる。……これは結婚のときに言ったが、もう一度言わせてくれ」



「娘を……お前に託すぞ。息子よ」




「さて、最後に孫へだな。孫へ。お前はまだ小さい。これから大きくなるにつれて、大量の苦労をする。だから、これを残そう」


「ワシが教師として長い間考え、使い続けた教育ノートだ。ワシが伝説の教師と呼ばれている理由はこれにある。これで立派なおとなになるのだ。……これ娘か息子に渡せば良かったのでは…?」


「ゴホンゴホン! ま、まあ…他にもワシの遺産の三割をあげよう。将来役に立てなさい。詳しい遺産の割り振りは弁護士に持たせた遺言書を使ってくれ」


「お前ともっと、遊んであげたかったよ。だが、ワシはここまでのようじゃ」




「さて…、ワシはもうここまでのようじゃ。もうすぐ時間になる」


「最後に一言だけ言わせてくれ。…ワシはこの世界に生まれてこれて、本当に良かった。お前達に会えて、本当に良かった」


「……では、さらばだ」















「おじいちゃーん。お雑煮できたよー!」

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