第56話 サキは寝た、店員は私だ(2)

 レジで小さな紙袋にキーホルダーを入れる私を、ずっと見つめている男性。

 いや、それはそれで正しい態度なのだが。


「えっ……二千円になります」


 こんなちっちゃいキーホルダーが二千円もすると思わなかったので、思わず変な声を上げてしまった。

 高すぎるだろ、これ。


「はい」


 お客は素直に千円札を二枚出すと、じっと私の顔を見ていた。


「ほんと、女優みたいだな」

「そうですか……はい、レシートです」


 私のレシートを持つ手をじっと見つめ、それを受け取る。何かされたわけでもないが、ちょっと変な人ぐらいには感じた。


「まあ、いいか」

「ありがとうございました」


 私のぼやきと店長の挨拶がお客に向かって重なる。そして、彼が見えなくなると、店長は私のほうへと振り向いた。


「おっ、キーホルダーを一個売ったな」

「えっ!? 勝手に買っていっただけですよ」

「いや、お前と話したくて買ってったんだよ」

「そんなことないと思いますよ」


 私はレジにお札をしまうと、後ろから視線を感じる。振り向くとサキが眠たそうな目をこすりながら立っていた。


「うーん、マルス。似合ってるわね」

「お前、起きたのか! 代わって……」


 そこまで言いかけたところで、サキは崩れるように眠り込む。

 コイツ、こんなに朝が弱いのか? 

 よくいつも朝礼に間に合ってるな、そう思う私だった。

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