第46話 やっちまった(3)

 そしてこの状況である。


「ふあ、ああああああ」


 唇にラルの指が触れ、ゆっくりと形をなぞっていく。なんて罰ゲーム……いや、ご褒美か。

 しかも塗れるようにまぶたを閉じた状態、プラス膝枕だ。二重のパラダイスではないか。

 恥ずかしいやら、恥ずかしいやら。もう耳まで真っ赤どころの話じゃない。


「ふあっ、ああああ」

「終わりました。でもこれだと、前がほとんど見えないんじゃないんですか?」

「そ、そうだな……仕事は無理そうだな」


 出勤時よりも腫れたまぶたは視界を急激に狭めている。

 これは……歩くも危険そうだ。足元もあまり見えない。


「タクシーでも呼びましょうか?」


 それしかないな。私はそう思い、ラルの声がするほうへと向きをかえる。

 だが顔が視界に入ると、さっきまでのことを思い出して私は身もだえた。

 くううううう。顔が見れん。

 私は思わず視線を逸らした。


「ねえ、私が車で送っていくわよ」


 その時、休憩室の扉が開く音が聞こえる。

 サキだ。彼女は右手に何か持っていた。


「マイカーなのか?」


 私は音でなんとなく、車の鍵と判断する。


「ええ、引っ越しが終わるまでは車で来ていいって言われたわ。よく分かったわね」

「ああ、何となくな」


 私たちのやり取りを聞くと、ラルはサキに向かって言った。


「じゃ、僕は二人のことを会社に話しておきますね。うーんと、マルスさんは体調不良で休暇、サキさんが家まで送るってことでいいですか?」

「ええ、一回着いたら連絡いれるわね」

「わかりました。それで伝えときます」


 ラルはそう返事をすると、薬の容器をリュックに詰める。そして廊下へと出ていったのだった。

 また恥ずかしさが戻ってきた……くうううう。

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