第44話 やっちまった(1)

「ぷっ、何それ」

「だから、嫌だったんだ」


 朝から会いたくない奴に会ってしまった。最悪だ。

 サキはそう言って、私の顔を指差して笑い出す。血舞の弾丸ブラッディ・ブレットは物に自分の意思の一部を移す強力な能力だが、その副作用で顔の一部が腫れる。

 昨日は二回も使ったので、まぶたと唇がパンパンに腫れていた。


「もう、面白いわよ」

「もう、ラルに見せられないな……休む」


 ロッカーで私は力なく言うと、そのままバッグを持って更衣室を出る。

 すると廊下には若手のラックルと一緒にラルが歩いてた。


「おはようございます、マルスさん……それ、大丈夫ですか?」

「ああ、ここのところの残業が効いたらしい」


 私はとっさに嘘をつく。


「疲労ですかね。よく冷やしたほうがいいですよ」


 ラルはそう言うと心配そうに顔を覗き込んだ。コイツは基本いいやつだ。

 逆に後ろのラックルは笑いかけたが、我慢したから“ギリセーフ”としてやろう。


「うーん、いい塗り薬があるんですけど使いますか?」

「ああ、頼む」


 私はもうラルに見られてしまったのなら、どうでもいいや。そんな気持ちで半ば開き直っていた。


「わかりました」


 ラルはそう返事をすると、リュックの中から白い容器を取り出す。


「これ、腫れに効くんですよ。休憩室で塗ります?」

「ああ」


 私の何気ない返事。それを聞いたラルは、私と一緒に休憩室へと向かったのだった。

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