第42話 売人を捕まえろ(1)

「やるしかないか」


 魔力がない吸血鬼の私に残された二つの特殊能力。その一つを使うしかないらしい。

 私はナイフで指先を傷つけると、一滴、血を銃口から入れた。


血舞の弾丸ブラッディ・ブレット


 その言葉とともに、私はかろうじて見える車のヘッドライトに向かって拳銃を構える。そして、引き金を引いた。

 重力に逆らうように真っ直ぐに飛ぶ弾丸。その弾は意思を持ち、車のタイヤへと命中する。

 車が壁にぶつかった音が響くと、ヘッドライトが消え辺りは真っ暗に、そして静かになった。


「売人を確保するぞ」

「わ、わかったわ」


 私たち二人は車に向かって駆け出す。


「もう、真っ暗で何も見えないじゃない」

「ああ、そうだな」


 サキの言葉に私はスマホを取り出し、背面のライトを点けた。

 照らせる範囲は狭いが、これで見えるだろう。


「余裕あるのね」

「ああ、鍛え方が違うからな」


 私たちは壁にぶつかり変形した車を見つけると、その中を確認した。運転席の赤い服の男はエアバッグに挟まれ、何か唸っている。売人のほうは頭から血を流して意識がないようだ。

 二人ともすぐに動ける状態じゃない。


「パイン(サキ)、黒服がいないな」

「えっ!?」


 その時だった。前から銃声が聞こえると、私のすぐ横をかすめていく弾の音が聞こえた。

 反射的に身を伏せると、サキにも「伏せろ」と指示を出す。

 それと同時にスマホを消した。

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