第35話 そうだ、車だ(4)

「や、やめろ」


 サキの撮影を止めるべく、私は手をスマホに向ける。


「ふふ、私の愛車のボンネットにでかでかとプリントしちゃおうかしら」

「そんな痛車みたいな……車、そうか車か!?」

「えっ、車がどうしたの?」


 私はちょっと戸惑った……そんなことがあるのか?

 少し不安になり、目をこすった。


「パイン(サキ)、念のためやつらが乗ってきた車を確認してくれ」

「了解」


 その指示を出すと同時に、何やらビルの前に立っている見張りの二人が話し出した。


「同時に聞き取れるか?」

「大丈夫よ。任せといて」


 サキュバスの耳は集中すれば百メートル先の人の声さえ聞き取れる。たぶん、情報部隊にサキが抜擢されたのも、その能力があるからだ。


「アップル、駐車場は?」

「メロンが担当だ。今、代わる」


 アップルもこっちの状況に合わせて動いてくれる。

 ビルの見張りたちの口の動きを見るに、何やら楽しそうに話しているようだ。


「なんか、晩ご飯をスマホで頼むみたいね」

「飯か……やっぱりな」

「えっ!?」


 サキの驚きの声と同時に通信が入ってきた。


「こちらメロン、あの車は赤い服の男が一人で乗って行ったぞ。買い出しじゃないか」

「わかったわ。ありがとう」


 その報告でほぼ確信した私は、もう一つサキに確認する。


「最近、高速道路の工事をやっているよな」

「そうね。確か地下化事業でここの下も工事地域のはずよ」

「それだ。いくぞ、やつは地下に降りたんだ」


 武器は背中とスカートベルトの間に挟んだ銃と、太ももに仕込んだナイフ二本。

 それらを念のため、手で確認した。

 ――大丈夫だ。

 私はサキの腕を取るとすぐに立ち上がった。


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