第11話 寝不足は失敗のもと(4)

 ここはビルの谷間、細い抜け道となっている。人はまず通らないので待機するには絶好の場所だ。

 二人は完全に伸びており、当分起きそうにない。それでも目を離さないように、彼らが見える位置で連絡がくるのを待った。

 ――そして二十分ほど待ったころだろうか、黒かったスマホの画面に壁紙にしているラルの笑顔が浮かぶ。着信の文字は“化粧品店”、つまり本部だ。


「ニーイチ、偶然だが現場が情報部隊とバッティングした。うちのイチハチとパインの連携で売人の一人は確保。一人は逃走中だが情報部隊で追跡できているそうだ」


 イチハチは暗殺部隊の仲間で、パインは情報部隊のメンバーだ。

 バッティング……いや、楽ができたからいいか。

 布が擦れる音が小さく聞こえた。視界のぎりぎりのところで細い影が動く。

 気絶していたやせ型の男、やつがそっと這いずり出していた。


「わかった」


 私は返事とともに右に半歩移動すると、銃の柄で男の後頭部を軽く叩く。


 ゴン!


 意外といい音が鳴った。


「今の音は何だ?」

「ハエがいたんでな、叩き落としただけだ」

「……わかった。ニーイチ、縛り上げたら離脱していい。回収班を向かわせた。カメラとマイクはこちらで抜く」

「了解」


 私は念のため、眠っている巨体にも一発、ハエ叩きをぶち込んだ。ちょっと力を入れすぎたが死にはしないだろう。


「ふう、黒い服を着ていたのに、もう朝じゃないか」


 時間を見るともう四時を指していた。あと何時間寝られるのか。

 朝食は……ああ、もうこんな生活、絶対に肌に悪いぞ。ラルに嫌われたらどうする!

 そんな怒りで二人を思い切り締め上げてしまった。

 なんか「グエッ」とカエルのような声がしたが、それは気にしないことにする。

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