暗殺者で吸血鬼で工場勤務で美少女な私は、同僚のあいつが気になってしかたがない
こねこねこはる
第1話 銀髪は地毛
私は吸血鬼だ。わけあって人間社会で缶詰会社の工場職員、マルス=クリファーとして働いている。
灰色の制服がちとダサいが、まあそれは致し方ない。
「マルスさんってお綺麗ですよね」
「ふぁぁ、まあ……な」
「その銀髪は地毛ですか?」
「じっ、地毛に決まっているだろ」
なんだ今日はやけに絡むな。この男、やっと私の魅力に気がついたか。
お前の好みに合わせて、俳優のなんとかって女と同じショートボブにしたんだぞ。もう少し褒めてもいいだろ――そんなことを思う。
だが、コイツは何事もなかったかのように通常運転で返してきた。
「あー、そうなんですね」
この隣に立っている男は、最近この工場に転勤してきたラル=ゴーレンという。ゴーレンという厳つい姓の割には、やせ細った男だ。そしてどこにでもいるような顔と黒髪で、容姿は普通としか言いようがない。
だが、私は奴が気になって仕方がない。気がつけば、奴の挙動を目で追っていた。
「そうだ。マルスさん、今夜空いてます?」
「えっ、あっ、あ、あ、あ、空いているが……」
なんだコイツ、大胆なところがあるではないか。まあ、私としても夕食に誘われるぐらいなら行ってやらなくもない。
そう思って私が期待した、次の言葉がこれだ。
「よかった、夜勤変わってもらえませんか?」
「えっ、あっ、なんだと……もうしょうがないやつだな。いいぞ」
「やったあ! よろしくお願いします」
ちょっとだけがっかりしてしまったではないか。まあ、ほんの少しだけだ。
なんかコイツにいいように使われている気もするが――まあいいだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます