第6話 背後に潜む者

「王の御前です。ひざまずきなさい」


 アリシアは冷たく言い放つと、オークの頭をガシッとつかみ、そのまま地面に叩きつける。

 ただそれだけの行為でオークの頭部は粉々に砕け、体はピクリとも動かなくなる。


 今アリシアが倒したのが最後のオークだ。

 十体ほどのオークがこの村にいたが、骨の騎士ボーンナイトの頑張りもあり、ものの数分で片付けることができた。


 俺は骨の騎士ボーンナイトをねぎらい土に還した後、唯一生き残っているハイオークに目を向ける。


「ば、ばかナ……俺のムテキの軍団が……」


 積み重なった仲間の死体を見て、ハイオークは茫然自失となっている。

 たかだか十体程度のオークの群れで無敵の軍団は自画自賛が過ぎると思うが……まあこの森付近なら敵はいないか。

 強いモンスターは瘴気溜まりである深淵穴アビスに自ら近づくような愚行はしない。なのでこの森に強いモンスターは少ないのだ。


「さて、じゃあ話してもらおうか。お前はなんでこの村を襲った?」

「そ、それハ……」

「どうやらまだ調教おしおきが足りないようだな」


 俺が右手にバチチ! と電撃を発生させると、あの痛みを思い出したのかハイオークはガタガタと震え上がる。どうやら余程トラウマになっているらしい。


「わ、わがっタ! 言ウ! 言うカらやめてクレ!」

「いい心がけだ。時間がもったいないから早くしろ。そうしたら助けてやる」


 そう急かすとハイオークは「わ、分かっタ」と言って、なぜこの村を襲ったのかを話し始める。


「に、人間に頼まれたンダ。食料や武器と引き換えに村を襲えッテ。俺は言われた通りにヤッタだけダ!」

「人間に……? きな臭くなってきたな」


 どうやらこの村に悪意を持っている人間がいるみたいだ。

 しかもオークに襲わせるなんて手の込んだ真似をして……どういうつもりだ?


「もっと詳しく話せ」

「あ、あア。村は滅ぼさず、適当に暴れろと言わレタ。女は適当にさらってイイが、少しは残せとも言われタ」

「他には」

「これで全部ダ! 後はなにも知らナイ!」


 ハイオークは慌てたように言う。

 嘘をつけるほど賢いようには見えない。本当にこれ以上は知らないだろう。


「最後に。誰がお前たちにその取引を持ちかけた? 嘘をつくなよ」

「それハ……知らナイ。ほ、本当ナンダ! 鎧を着た奴らってコトしか分からナイ! あいつらに言われて村ヲ襲ったら本当にイイモノをくれたカラ、やってたダケなんダ!」


 鎧を着た奴ら……か。

 それだけじゃあまり手がかりにならないが、これ以上痛めつけても情報は出てこないだろう。こいつはもう用済みだ。


「ご苦労だったな。もういいぞ」

「本当カ!? じゃあもう行って……」

「ああ。もう楽になれ・・・・


 俺は短剣を手に持ち、ハイオークの首を切り裂く。

 一瞬にして鮮血が飛び散り、大量の血が流れ落ちる。ハイオークがなにが起きたのか理解した頃には既に手遅れであった。


「な、ンデ……!」

「死霊術師にとって死は救済だ。素直に喋ってくれた礼に痛覚は切っておいた。安らかに逝くんだな」


 俺の言葉を聞いたハイオークは「そん、ナ……」と言い残しその場に倒れる。

 悪いが生かしても得はない。なら死んでもらう他はない。


 もし生き残ってしまったら俺のような・・・・・復讐鬼が生まれてしまうかもしれない。憎しみが人をどれだけ強くしてしまうかは俺が一番知っている。


 それに死体は色々な利用方法がある。死霊術師である俺にとっては宝の山だ。

 有効活用させてもらおう。


「お見事でございますクロウ様。見事な手際でございました」

「お前もご苦労だったなアリシア。おかげで楽に終わった」

「もったいなきお言葉、ありがとうございます」


 さて、オークたちは無事処理できたことだし、村人の様子を確認するとしよう。

 それが終わったら外の世界の情報を手に入れて、今回の遠征の目標は達成だ。頑張るとしよう。

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