八月一日の約束
音翔
クラスメイトの穂澄くん
約束だけは守るアホ。
クラスの中心で、稲穂のような色をした髪の毛の男子。
教室の端の方で、根暗にやってる僕にも優しい、太陽の様な高校生。
クラスメイトの
内容は、ゲームの話、小説の話、幼馴染みの
「ほっちゃん。待たせてごめんね。帰ろう」
「あ、すみよし!帰ろ帰ろ!」
『ほずみ』だから『ほっちゃん』。
清善くんだけに許されている、特別な呼び方。
以前、クラスの女子が「ほっちゃん」と声を掛けた時は、完全に無視を決め込んでいた。
普段の優しい穂澄くんからは考えられない反応だったため、それ以降は皆、試す事すらしなくなった。
清善くんが、穂澄くんの帰り支度、荷物を鞄に詰めている。
いつも通り世話を焼かれている穂澄くんは、後ろから、清善くんに抱きついた。
清善くんは、穏やかで、爽やかで。物腰が柔らかい。
太陽の様な穂澄くんに対して、月のような美しさがある人だ。
穂澄くんに微笑む姿は、正直、男の僕でも見惚れる。
帰り支度を終えた2人は、クラスメイトに手を振りながら教室を後にした。
穂澄くんと清善くんの間には、不思議な力があった。
清善くんが「約束だよ」と文末に付けると、どんな内容でも、穂澄くんは叶えられる。
嘘なんかじゃない。
アホの穂澄くん。勉強が出来ない彼は、万年、定期テストでは赤点をとっていた。
だが、唯一、清善くんが「赤点をとらないでね。約束だよ」と言った回だけ、赤点を一教科もとらなかった。
結果だけ見れば、穂澄くんが勉強を頑張ったのだと思えるが、そうじゃない。
穂澄くんの解答用紙を見たクラスの女子から、選択問題が全問正解だったと聞いた。記述問題は白紙。試験内容の3割ほどを占める選択問題のみで、赤点を回避したのだ。
僕には、人知を超越した不思議な力が働いている様にしか思えなかった。
それだけじゃない。
中学の体育祭では「徒競走で1位をとって来てね。約束だよ」と言われた穂澄くん。
最後のコーナーまでは2位だったが、1位を独走していた生徒がゴール前で躓き、穂澄くんがゴールテープを切った。
普段オカルトを信じない僕でも、不思議な力の存在だけは、確信を持っている。
約束だけは守るアホ。
彼がどれだけ勉強が出来なくて、漢字が苦手で、理解力に乏しい人間でも。
清善くんとの約束だけは、信じられる。
それが、髙橋穂澄という人間だ。
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