1-3
《え?》
私は絶句した。その言葉のいったいどこが誘拐と結びつくのだ?
《それだけ?》
《ああ、それだけだ。もう少し聞いていれば、潜伏先とか共犯者のこととかわかったかもしれないのに、残念だ。僕もその時は誘拐に関わる話だとは気づかなかったので、彼らの後を追うこともしなかった。まったく
《ちょ、ちょっと待ってくれ》
私は話についていけなくなり、愛染を止めた。
《どうして君は、「8キロは重すぎる」だっけ、そんな言葉で誘拐事件が起きているなんて思ったんだ? ちょっと飛躍のしすぎじゃないか? 私には理解できない――》
愛染が口を閉じたのを感じて、私は残りの言葉を飲み込んだ。
その沈黙があまりに重いので、とりあえず謝った方がいいかもと思ったところで、愛染が低い声でぼそりと言った。
《やはり、そこから説明しないとダメか。君ならそこまで言わなくてもわかってくれるかと思ったが……》
《いや、私はともかく、そんな説明では警察は動かないよ》
私はあたふたとして言った。
《その言葉が誘拐事件が起こっていることを示すものだと、はっきり説明しないと》
《仕方ない》
愛染は低い声で言った。
《事は緊急を要するんだ。時間が経てば経つほど掠(さら)われた子どもの命が危うくなる。だから、一度しか話さないよ。途中で余計な口をはさまないで、よく聞いてくれ》
《わかった》
私は彼女の真剣さに驚きながらそう返事をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます