田舎・夏の恐怖
魔不可
夏の恐怖
田舎で、自然豊かな家。
理想的って思う人もいるかも知れない。
確かに星はきれいに見える。
空気もきれい。
近所の仲もいい。
―――けれど、夏の夜は、恐ろしい。
蒸し暑い夜、窓を開けて過ごす。
湿気もあるので、もわっとした空気が流れてくる。
窓を閉め切るよりはまだマシだろう。
でも網戸に、奴はいる。
一,二,三,四,五,六
今日は六匹。
小さくて茶色い蛾がくっついている。
それも、それぞれの窓に、六匹ずつ。
まあでも、家の外にいるから平気だ。
好奇心からスマホのライトを当ててみると、焦ったようにトコトコと上に移動する。
かわいいな、なんても思っちゃって、網戸越しに指でペイって弾いてみた。
うわあああって逃げる様子を観察をしてみたり、網戸の隙間から伸びてくる足をそっと触ってみたりしたこともある。
毎回鱗粉を撒き散らし、不快な羽音を立て、飛んでいった。
気持ち悪いなーって思っても、ついペイってやってしまう。
縦すべり出し窓。
我が家は縦すべり出し窓だ。
わからない人はぜひ調べてほしい。
―――窓を閉めるときが一番の恐怖だ。
網戸に着いた蛾は弾いてすぐに遠くに飛んでいくが、外にむき出しになっている窓からはなかなかしぶとい。
全然いなくならないのだ。
むしろ、じっと私を見つめているようだ。
窓をバンバン叩く。
羽が小さく震えるが、そこを動こうとしない。
根気強く何回か繰り返して家の窓をすべて閉める。
しばらくして、今日は満月だっけ?とか思って、カーテンにくるまって外を見てみる。
雲で月が隠れて見えないや。
カーテンでくるくるして楽しいなーなんて思ってたら、どこからやってきたのか、あの蛾がカーテンにくっついていた。
急いで
それで終わりじゃない。
今日も小説を書くかーと思ってリビングでパソコンをカタカタしていたら、目の前を黒い何かが通り過ぎた。
蛾だ。
小さく悲鳴を上げて急いで救世主を呼ぶ。
でも、奴はどこかに身を隠してしまった。
その瞬間、部屋のどこかにいるかもしれないという恐怖から、足がすくんだ。
トイレに行くの、水を飲むのも怖かった。
その存在を確認する前から、奴は何処かで息を潜めていた。
でも「いないもの」だと思っていたから、普通に過ごせていた。
でも、存在を確認してからは恐ろしくて恐ろしくて。
当たり前かもしれないけど、そういう心理状態?が不思議だな、って思った。
朝。
寝室に一匹。壁にくっついていた。
玄関に三匹。もう息絶えてた。
リビングのカーテンに一匹。もしかしたら昨日逃した奴かも知れない、、、。
私の勉強部屋に二匹。
ちなみに、常に私の家ではダンゴムシとワラジムシ、アリと共生してる。
そこに、新メンバー、蛾が加わった!と思ったら気が楽なのか、、、。
いや、虫は外に出てくれ。
そう思って、昨日洗い忘れたコップを持ち上げたら、カランと音がした。
コップの底には、わずかに羽を震わせた奴がいた。
「
田舎・夏の恐怖 魔不可 @216mafuka
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