第15話 胡桃色のラニアン
「胡桃色のラニアン」
そろそろ、日の暮れとともに、風の冷たさを感じる頃だ。
三本松の駐車場に、一台の大型バイク。
そのそばに、犬がいる。
毛並みのフサフサとした、少し温かみとやさしさを含んだ胡桃色。
ポメラニアンのようだ。
丸い目、ほほえんでいるような表情。
しかし、一つ所で体を揺らして、おぼつかない様子で立っている。
バイクの後ろにヒモでつながれているようだ。
人が来た、ライダーらしい。
ここより先へ行くのか、防寒着を重ねる。
そして、胡桃色のラニアンを持ち上げて、目の粗い網の袋に入れる。
胡桃色のラニアンとライダーは、向かい合っている。
両手で胡桃色のラニアンの顔をはさむようにして、何やら話しかけている。
胡桃色のラニアンは、ほほえんでいる。
袋の中、更に奥に押し込んで、袋の上ぶたを、ファスナーを、ぐるり閉めた。
黒色の粗目の網目からは、しっかり胡桃色の体が見える。
ライダーはリュック状の袋を遠心力にまかせて、空に振り上げた。
あっという間に背負う。
胡桃色のラニアンは横に体が振られ、斜めになったが、狭い袋の中、どうにか踏ん張って、立っている。 細い足が見える。
幾度となく袋の底を定まる所を探るように、足踏みする。
晴れ渡る空のいずこへ網目から
見えるものともに空飛ぶように
これから何処へ行くのか、
何だろう、
私は、
祈る思いで、
いる。
点描 戯画実(ぎがみ) @ichijiku-neko
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