本作は、貞操観念逆転=恋愛(ラブコメ)系だと思って入ると、良い意味で認識を改めさせられる。主軸は恋愛ではなく、『その刑事は、世界の前提に抗えるか』という問いを軸に、捜査とサスペンスで読ませてくる作品だと感じた。
序盤は捜査ものとしての手触りが強く、事件の積み上げで読者を連れていく。その上で、男女比や社会規範といった世界の前提が単なる装飾ではなく、"事件と人物の選択に具体的な制約として噛み込む"。結果として、警察サスペンスとして面白く読み進めながら、ジェンダーSF(ディストピア)的な視点へ段階的に更新されていく構造が、本作の独自性だと思う。
途中で評価を固定すると損をしやすいタイプなので、未読の方は完走を勧めたい。
特に終盤は、事件の推進力に加えて、主人公の『自分は何者か』という部分に踏み込む問いが強まり、作品のトーンが一段シリアスになる。単なる設定の妙ではなく、読後にテーマが残るところが印象的だった。
ここからの回収と着地を楽しみにしています。