女房と畳は——

五來 小真

女房と畳は——

「お父さんは、お母さんに惚れてるの?」

 息子がそんなことを聞いてきた。

「バカ言っちゃいけねぇ。女房と畳は新しいものに限るって言ってな。新しい方が良いに決まってるだろ」

 猪口に入れたお酒をあおる。

「でもボク知ってるよ。今の畳は、い草の香りがしないんだ」

「その分、新しいやつは高耐久力でバリエーションもある」

「ええ!? ボクあの匂い好きなんだけどな。昔の畳はもたないの?」

「いや、メンテナンスをきっちりしてやれば長持ちする」

「じゃあちょっと手間がかかるだけ?」

「——そうだな」

 もっとも、その手間がどんどん大きくなっていく気がするのだが——。


 <了>

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

女房と畳は—— 五來 小真 @doug-bobson

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ