第2話 赤いメイドと白いメイド
私達の船は最新式で足が速く、2日前にウラジオストックを出航したばかりなのに、もう、ニイガタ港に入港していた。
燃料さえあれば、世界中どこにでも行けると、ドゥドニクおじさんが自慢していただけある。船内工場長を務めているエカチェリーナおばさんも、この船の船内工場は自動化されて楽だと喜んでいた。
お母さんも船の厨房を預かる、司厨長として乗船している。
お父さんもユーリーも、甲板で忙しく作業をしている。
全長140メートル、1万3千トンもある大きな船だから接舷作業も大変だ。
だけど、私はまだ船の食堂で、朝食を味わっていた。
去年、進水したばかりのこの船にとって、コレが処女航海になる。
当然だけど木製の椅子やテーブルは新品で、共同食堂よりも綺麗だ。
船の鋼板の上に張られた木の壁板も、まだ汚れていない。
この船には、同じコルホーズの
党の指導方針に従い、船内には保育園と幼稚園もあるし、映画館やスポーツジムに図書室まである。
本当ならソビエトの理想を具現化した理想郷になるはずだった、ソビエト最後の船。
小さい子供を連れて来た
この船に乗っていれば、白いパンをお腹いっぱい食べられるからだ。
最新式の厨房は綺麗で設備がいいけど、私は働かなくて良いと言われた。
労働を免除されたのは、すぐに居なくなるからだ。
私は同志が暮らす
『蟹工船』なんて日本語の名前になってしまったけど、私の心の中ではナルコンプロド・ブリュハノフ号のままだった。
目の前にはお母さんが座って、朝食を食べている私をじっと見ている。
お母さんが焼いてくれたパンが美味しい。
日本から届いた人参、タマネギ、キャベツが沢山入ったスープが美味しい。
紅茶に砂糖がたっぷり入ってる。
コレが人間らしい食事を食べさせて貰える、最後になる。
お母さんが私のために作ってくれた朝食が美味しくて、涙が出そうになってきた。
「明日からは、
お母さんは困った顔で私をたしなめた。
「イリーナは
私は小さく、うなずいた。
そうだ、これからは
私が食べ終わったのを見て、お母さんはテーブルの上に赤い布でくるんだ物を出した。
「必要な物があったらコレで買いなさい」
布の中を確かめてみたら、帯で縛られたルーブル紙幣の札束だった。
「こんなに、いいの?」
「日本は物が安くて豊富だから、お金があれば何でも買えるはずよ」
私が小さい頃からお母さんが節約して貯金していた事は知っている。
100ルーブル紙幣が200枚もある。
突然に紙幣が新しくなって古いのは使えなくなると言われ、みんな大騒ぎして交換したばかりの綺麗な新紙幣だった。
お母さんもお父さんがやったコトを解った上で、私に精一杯のコトをしてくれる。
2万ルーブルもの大金はウチの全財産だよね……
船から下りると、皆が手を止めて私を見送ってくれた。
高い船首の上で接舷用のロープを操っているユーリーが手を止めて、私をじっと見下ろしている。
ドゥドニクおじさんは、日本の湾港職員から受領する物資を確認している手を止めて、私を見守っている。赤毛の通訳の女だけ、そっぽを向いていた。
よく晴れたニイガタの湾港は温かい、船の外気温計は8時になったら6度をさしていた。
誰も、冬の外套を着ていない。
周囲を見回しても雪は日陰に少し残っているだけだった。
もう、日本は春なんだ。
『春はあけぼの』私が大好きな日本語だ。
ロシア語に訳せば
全く違う言葉なのに同じ事を、同じ意味に出来る。
やっぱり、日本も春は素晴らしい季節なんだ。
「イリーナ!」
そんな事を考えていると、後ろから呼びかけられた。
ユーリーのお母さん、エカチェリーナおばさんが慌てて走ってきた。
若い頃から大切にしている一着しか無い綺麗なドレスを着て、化粧を厚塗りして、荒れた手を白い絹の手袋で隠している。
駆け寄ってきたエカチェリーナおばさんは私を慰めてくれた。
「アレクセイを締め上げて事情は聞いたわよ、もう少し若かったら私が行ったのに」
お母さんより若いと言っても、40歳になったエカチェリーナおばさんは無理だよ。
エカチェリーナおばさんは周囲を見回した。
「
「イリーナ、入国審査の出口に迎えが待っているから、早く行きなさい」
お父さんも最後の見送りに来てくれた。
「イリーナ一人じゃ心配よ」
エカチェリーナおばさんが口を挟んだ。
「私も行くわ」
「工場長が居なくなったら製品を作れません」
お父さんが止めてくれた。
「えっ、じゃあ、おばさんの格好って!」
エカチェリーナおばさんは私の代わりに大資本家の慰みモノになろうとして、綺麗な格好で出てきてくれたんだ……
エカチェリーナおばさんは必死で私にお願いしてきた。
「ねえイリーナ、何でもするから、大資本家に会ったら私も呼んでちょうだい」
ちらりと船に目を向けると、船首にいるユーリーの姿が見えた。
良く分からないけど、怪訝そうにこっちを見ているみたい。
わかってるよ、エカチェリーナおばさんを慰みモノになんて出来ないよ……
これ以上、
お父さんは最後に、一言だけ言ってくれた。
「私達のことは何も心配いらないから、自分のことだけ考えなさい」
私は別れの言葉を返せずに、無言で入国審査の建物に入った。
懐にしまったウチの全財産が重かった。
入国審査でパスポートとお父さんから貰った書類を出した。
入国審査の役人が私の荷物を開けて中身を調べると、
私の荷物を調べていた役人はお母さんがくれた札束を見て、後ろの机に座っている役人に声をかけた。
「オイ、これ見ろよ」
机に座っている役人は何かの書類の紙を出した。
「新紙幣のルーブルだな、多額の現金を持ち込むなら輸入申告書がいるな」
私は青くなった、まさか、取られる……
一番偉そうな役人が聞き慣れない日本語を喋った。
「ルーブルなって、
私の荷物を調べている役人も意味がわからない言葉を返した。
「
日本語の方言みたいで何を言っているのか解らないけど、役人は何もせずにお母さんがくれた札束を返してくれた。
日本人の役人は特に何も言わず、事務的に処理をして私を通してくれた。
入国審査の建物から出ると、目の前は駐車場に車が何十台も止まっていた。
「あなたがイリーナね」
声をかけてきた、迎えの人を見て驚いた。
私よりも少し背が高い、長い金髪に青い目をして、黒い学校服に白い
高校生の年齢には見えないけど、何で白い
彼女は私に向かって日本語で意味不明なこと言った。
「メイド服を用意してたの」
日本語の勉強は頑張ったつもりだったけど、メイド服って日本語の意味が解らなかった。コレは一番きれいな卒業式で着た学校の制服なんだけどな。
彼女は私に向かって自己紹介を始めた。
「私の名前はターニャ・スタルキンよ」
「
「悪いけど私は祖父の代から70年以上も日本に住んでるから、ロシア語は解らないの」
ロシア人だと思ってロシア語で挨拶したら、日本語で注意された。
「見た目はロシア人だけど、中身は日本人だから、日本語でお願いね」
あれ、ロシア人にしては名前が変だよね?
私は聞き違いだと思って日本語で聞き返した。
「お名前はスタルキナさんですよね?」
ターニャは意味不明な事を言い返した。
「スタルキンであってるわよ」
私は嫌な可能性に気付いて叫んだ。
「男性なんですか!」
ターニャは怒鳴り返してきた。
「どうして、この格好見て男だと思うの!」
「だって、どうして、スタルキナじゃないのですか、
ターニャはめんどくさそうに答えた。
「父称は一応、フェドロヴナよ、日本人には父称なんて無いし、名字が性別で変わったりしないの」
私は日本語学校で習った事を思い出した。
「私もイリーナ・イシュコフにしないとダメですか?」
「貴女は外人だから関係ないわ、私は日本人なの」
「解りました、
私は納得して、姿勢を正すと右手を挙げて
「同志でも共産主義者でもないわよ!」
私は礼儀を尽くしたつもりだったのに、ターニャは怒りだした。
私が返事に困っていると、ターニャはめんどくさそうに言った。
「変なのつけないでターニャとだけ呼んで」
ターニャは私の服装をジロジロみると、また意味不明な事を言った。
「メイド服はタダで貰えるんだけど、茶色っぽいそれって自分で用意したの、ちょっとスカート短すぎない?」
私は日本語の意味がわからず聞き返した。
「あの、さっきからメイド服とはなんですか?」
「私たちが着ているコノ服の事よ」
ターニャは自分の長いスカートをつまんだ。
私は日本の学校制度の話を思い出して、日本語に翻訳して答えた。
「これは日本でいう中学校の制服です、白い
ターニャは「あっ」て顔をした。
「ソビエトだとソレが学校の制服なんだ、ゴメン、日本だと
卒業式の晴れ着が、資本主義者の間では、身分が低い人間専用の服ってこと? そう決めつけられていたことに私は怒りを感じた。
ソビエトの学生服は革命で手に入れた自由と平等の象徴なのに、日本じゃ奴隷が着る服なんだ。
私達の誇りは奴隷の服にされた。
私が不満そうな顔をしていると、タ―ニャは自己紹介を始めた。
「こう見えても、ご先祖様はロシア軍の将軍でね、貴族だったわ」
それは自慢話のようだった。私より年上で、二十歳ぐらいなのかな? それもあるし背も高いから、私はすごい見下されている感じがする。
「ロマノフ王家の遠い親戚だから、共産党に殺されそうになって日本へ逃げてきたの、実家は名古屋で機械メーカーをやってる、私は筆頭株主である、御屋形様のところでメイド奉公してるんだけど、あなたのお父さんの会社も同じなわけよね」
ターニャに感じていた違和感の正体がわかった。
ターニャは
ソビエトならこんな女、
私が黙っていると、ターニャは会話を諦めたみたい。
「こっちよ」と駐車場に止まっている白い車に案内した。
なんか、平べったくて窮屈そうな車だ。ドアも二枚しかない。
ハンドルが右側についているから日本車なんだろうな。
「後ろに荷物を入れていいから」
そう指図しつつ、ターニャが左側のドアを開けてシートを前に倒した、後ろに狭い空間があるから、そこに私の荷物を入れた。
下着と日用品に冬の外套なんか、着替えが少しだから入った。
ウラジオストックで見た日本車は広かったのに、天井も、車高も低くて狭いのは安物なんだろうな。
車に乗ると、左右で座席が違う。運転席だけシートベルトが四本あって両側に変な出っ張りが出ている。この車って、廃車をつぎはぎしたのかな?
でも、白い車体は顔が写るほど綺麗に磨かれて、傷一つ無かったけど、すごい大切にしているのかな?
ターニャは運転席に座ると指図してきた。
「シートベルトを締めなさい」
言われた通りにシートベルトをした。ターニャのは両肩の所からもベルトが出ているけど何コレ?
車が走り出しても私はおとなしく黙っていたけど、ターニャは運転しながら話しかけてきた。
「埼玉まで4時間ぐらいかかるわよ。私は16歳でメイド奉公に来て、4年になるからなんでも聞いてちょうだい、メイドはいいわよ、高校に通いながら働いて、家賃光熱費、全部無料で月給30万円もらえる仕事なんて他にないからね、この車も三年半かけて貯めたお給料で買ったの」
「この車はターニャのなんですか?」
私は驚いて声を上げた。
私が反応するとターニャは自慢話を始めた。
「そう、去年の12月に発売された、最新モデルのアンフィニRX―7。現金一括払いで440万、税金とか保険もいれると500万いったわ。さらに、チューニングに200万ぶっこんでる」
私は自慢話に負けて、羨ましくなった。
「日本はそれが普通なんですか?」
「普通だったら無理よ」
ターニャはちょっと謙遜した。
「節約して貯めた三年半分の貯金、全部だもの。大学の同級生は親に保証人になってもらって、ローン組んでるけどね、コレを19歳で、現金一括払いで買える仕事はメイドしか無いわよ」
私は日本とソビエトの格差に言葉が出なかった。
ソビエトじゃお金を貯めて、順番待ちして、30歳までに買えたら良い方なのに。
月給30万円、500万円って何ルーブルなんだろう?
16歳から働いて3年と半年で貯められるなら大した金額じゃないはずだし、この車が2人分の座席しかなくて窮屈なのは安い車だからだよね。
それでも日本じゃ3年半貯めたら買えると思うと、羨ましかった。
「もう三月になるから、学校が始まるまで時間が無いけど、日本語の読み書きは大丈夫?」ターニャは私の身上調査を始めた。
見下されるわけには行かない、私は自信ありげに答えた。
「半年あれば大丈夫です」
ターニャは困惑した顔をした。
「半年って、もう一ヶ月しかないわよ?」
「えっ」
「だって4月から入学式だもの」
「そんな。こっちではそうなんですか?」
私は日本の事を勘違いしていた、ソビエトの入学式は9月1日の知恵の日だけど。
日本は4月に入学式をやるんだ。
「ひらがなだけではなく、漢字も書けます。ちゃんと
私は必死になって、難読日本語が読めることを訴えた。
「じゃあ、英語は大丈夫?」
「英語?」
私は意味が解らず聞き返した。
「イギリスとかアメリカの言葉ですか?」
「日本の学校は英語の授業があるから、英語も読み書きできないと困るわよ」
ターニャが宣告した衝撃の事実に私は真っ青になった、英語なんて習ったことが無い。
「アルファベットを
ターニャは英語が出来ないことを察したのか、初歩的な質問をしてきた。
「えっと、
私は日本語じゃなくて、英語で挫折しそうになった。
「初歩から教えてあげるからね」
ターニャは優しく言ってくれた。
私は
私が落ち込んで小さくなっていると、ターニャは勝手に話しかけてきた。
「言っとくけど、私はロマノフ朝の末裔を名乗ってるけど、ロマノフ王家に義理も忠誠もないし、ロシアを王政復古させる気も無いから」
ターニャが変なことを言い出したのが理解出来なかった。
「どうしてコントリヴォリューツィオネールカになったのですか」
「ゴメン、ロシア語は解らないから日本語でお願い」
「日本人は白人の貴族を意味も解らずに、ありがたがるから、いろいろと便利なの」
貴族なんて滅ぼすべき、プロレタリアートの敵は気に入らないけど、返事だけはした。
「便利なんですか……」
ターニャは少し困った顔をしていた。
「祖国が無い私が自分を強く見せるための、方便でしかないから、金髪で青い目の白人が日本語を喋るだけで、日本人は喜ぶから、要領よくやれば大丈夫よ。うちゃー
ターニャが最後に言った言葉が聞き取れなかった、日本語みたいだけど変な言葉だった。
彼女に悪気はなさそうだけど、好きで
私と同じ
ターニャが運転する車は
資本主義の国に来たのは生まれて初めてだけど、
私の座席の前には何かの機械が付いているけど、どこかで見たような気がした。
そんな事を考えていた男の人の声が聞こえてきた。
『上信越、藤岡JCまでネズミ取り無し、飛ばせるぜ』
船についている無線機に似ている、コレは小型の無線機なんだ。
『こちら豆腐店、進路クリーン』
また無線機から声がした。
その瞬間、横に**豆腐店と書かれた車がすごい速さで追い抜いて行った。
早すぎて文字が読み取れなかった。
ターニャは無線機のマイクを取ると叫んだ。
「こちらロマノフ、豆腐店に抜かれた、ぶっちぎる」
ターニャは変速機を動かして、車を急加速させた。
私たちがのっている車はすごい速さで加速して、あっというまに、追い抜いて行った車を抜き返した。
この車のエンジンがずっと変な音をしていた。爆発しそう!
「この車壊れませんか!」
ターニャは平然と信じられない数字を断言した。
「大丈夫、まだ時速二百キロしか出してないわよ」
あれ、時速二百キロって、ソビエトも日本も単位系は同じだよね?
私が急加速に驚いていると、無線機から声がした。
『白いRX―7に抜かれた、なんだありゃ』
ターニャは興奮した声で叫んだ。
「フハハハハ、それは私の車だ、思い知ったか」
無線機から別の男の人の声がした。
『お姫様の新車かよ』
「ひれふせ愚民ども!」
ターニャは怖い目つきで無線機に向かって叫んだ。
無線機からさっきの人と違う声がした。
『すげえ、姫様、新車見せてください』
「月末の集会で見せてやる」
ターニャは興奮した声で、無線で不特定多数の相手と楽しそうに話をしていた。
前を走っている車に追突しそうと思った瞬間、車が横にすべって追い抜いた。
私は横方向に飛び出しそうになったけど、座席の変な出っ張りに抑えられて潰れそうになった。この出っ張りって、その為のモノだったの?
隣を見ると四本のシートベルトで、変な出っ張りの間にしっかりと、体を固定されたターニャは平気そうにしていた。変な座席とシートベルトはこのための物だったの?
私は生まれて初めて時速200kmで走る乗り物に乗って、目を回した……
しばらく走ると、急に減速した、高速道路から降りて一般道に出たんだ。もう少しで吐きそうだったけど、辛うじて耐えた。
車は周囲に建物が少ない田舎道を進んでいく。
高速道路はソビエトも変わらなかったけど、市街地から離れても道路が平らに舗装されているのは資本の力なのかな、でこぼこ道で揺らされたら吐くところだった。
しばらく走ると、高い塀で囲われた場所に到着した。
4時間ぐらいと言ってたけど、2時間ちょっとで着いたみたいで、まだお昼前みたいだった。
日本車は高性能だって聞いていたけど、こんなに速いのは初めて見た。
車が大きな鉄の門の前に来ると、周囲に誰もいないのに頑丈そうな門が開いた。
車が中に入ると天井の高い屋内駐車場があって、他にも車が止まっている。
車から降りた私は、
車庫の奥から、メイド服を着た年配の女性が出てきた。
見た目は日本人みたいで、60代ぐらいかな?
白髪交じりの老婆に見えるけど、背筋がしっかり伸びて、威圧感があって強そう。
彼女はターニャに向かってキツく叱った。
「お早いお帰りですね、またスピード違反しましたね」
「今日は見つかってないから、大丈夫です」
必死に言い訳をしたターニャだけど、キツく老婆の目がつり上がった。
「新年早々に免停食らって、御屋形様に泣きついたのを、お忘れですか!」
ターニャは小さくなっていった。
「オヤカタサマ」というのが私を買った大資本家の名前らしい。
彼女は私に向き直ると優しく尋ねてきた。
「イリーナですね、私はメイド長を務めさせていただいている、
私は返事をしようとしたけど、
今朝、お母さんがお腹いっぱい食べさせてくれた料理を吐いてしまった。
コンクリートの床に手をついて吐いて、胃の中が空っぽになると、少しだけ落ち着いて来た。
私が顔を上げると、メイド長はターニャに向かってキツく言いつけた。
「運転する時は同乗者の事を考えなさい」
ターニャは肩をすくめて建物の奥へ逃げていった。
私がフラフラと立ち上がると、メイド長が水の入ったコップとバケツを持ってきてくれた。
口をすすいで落ち着きを取り戻すと、最も汎用性の高い日本語をひねり出した。
「すみません……」
メイド長の美壽々は顔を上げた私に向かって、優しい笑顔で掃除用具を差し出した。
言葉は無くても、私が何をすべきか理解した。
私の初仕事は、自分が吐いた
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