第3話 レジスタンス

「というわけで、どうにか連れ帰ってきた」


 俺が麻袋に詰めたフェリシアを置くと、皆驚いた。


「人工衛星を操れるうえに、審問官の立場も利用できるのだからな。やはりお前がレジスタンスのリーダーに相応しいわけだ」


 異世界の商人、トキヤが呆れたように呟いた。そこはもっと感心すべきところだろう。


「およそレディに対する扱いとは思えませんわ。もっと丁重に扱いなさい。フェリシアどのが怯えてしまいます」


 姫騎士セレスティアが窘めてきた。


「他の審問官の目もある。そう丁重には運べなかったんだよ」


「で、どうする? 大聖女の依代ってことは、どっかの大貴族が聖女に献上したってことだろ?」


 スライムのルリアが指摘する。


 確かに、異端を捕まえたと称して少女を監禁し、大聖女が命を永らえさせるための依り代として献上するのは、大貴族の常套手段だ。この宗教国家【レイグラント】でのし上がるための権謀術数の一つ。いわば賄賂のようなものだ。


「あの……次は何をすれば……」


 フェリシアは怯えて縮こまっている。どんな扱いを受けてきたのだろうか?


「セレスティア。世話は任せた。俺は子どもの扱いは苦手だ」


「はいはい、分かりましたわ。ほら、怖くないですよ? 第六皇女たる私の顔はご存知でしょう? 安心してください」


「すみません。皇位継承権のない皇族の方の顔はさっぱり……」


「フフッ、言われてやんの! さすがは落ちこぼれ皇女!」


 ルリアが馬鹿にすると、セレスティアは表情を強張らせたが、どうにか笑顔をキープしつつ、フェリシアを部屋へ案内した。


「で、どうする? ゼスト。大司教フィロストルギオスを天上式で焼き殺したはいいが、手の内が割れるのは時間の問題だぞ?」


 トキヤが問うてくる。


「そのときこそ、お前の商品の出番だ。何度も同じ手を使い続けるつもりはない」


「分かった。だが、大聖女側が勝てば、俺はそっちに就くからな。お前たちに協力するのは条件付きだ」


「分かっている。お前に正義感は期待していない」


 トキヤはいかにも商人といった感じでドライな奴だ。

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